【福祉の仕事】実践に活かすバイスティックの7原則

バイスティックの7原則とは?

1957年に、バイスティックという人がソーシャルワーカーの基本的態度を7つの原則として提唱しました。

現在はソーシャルワーカーだけでなく、対人援助を行うあらゆる職業の方に必要なスキルであると考えられ、幅広く学ばれています。

 

しかし、理論を学んでもイマイチ実践に活かしきれない、具体的にどのようなことを意味しているのか、解釈の仕方があいまいだったり、理論と実践を結びつけるのが難しいという場合もあります。

ここでは、バイスティックの7原則とともに、介護現場で活かせるポイントなども一緒に確認していきます。

バイスティックの7原則と解説

1.個別化の原則

個人の生きてきた環境、価値観、時代背景、性別、年齢など、ご利用者(クライエント)は一人ひとり違います。
それなのにも関わらず、例えば介護施設のケアプランを見てみると、ほとんど内容が同じで、名前を隠して見てみると、他の方にでも誰にでも当てはまるようなケアプランが多く見受けられることがあります。
個人のニーズを明らかにし、個別のケアプランを立てて実践していく必要があります。

また、介護の経験が長くなってくると、似たようなケース(事例・症状)に出会うこともあります。
でも先ほどもお伝えしたように、症状は似ていても、個人の背景は異なります。
今支援をしようとしている人は、以前出会った人とは全く別の人なのです。

個人を意識せずに、病気や症状でカテゴライズしてしまったり、先入観をもったり、決めつけをしてしまったりすると、大切なことを見落としてしまうことになりかねません。
そうすると、その方に合った支援をするということは難しくなってきます。

経験してきたことは判断するときの材料にはなりますが、決めつけやカテゴライズには気を付けるようにしましょう。

 

介護現場での振り返りポイント ご利用者のことをどれだけ知っているか?(アセスメント)

一人一人のニーズが明らかになっているか?(その人らしい、個性の見えるケアプランの立案)

そのニーズにどれだけ応えられているか?(ケアプランの実践)

 

2.自己決定の原則

援助をする人、される人といった考え方をしてしまうと、ある種の力関係が生まれてしまうことがあります。
援助をする人の言うことが正しいと思い込んでしまったり、なんでも援助者の言うとおりにしてしまったりするようになり、また援助者も必要以上にアドバイスや指示をしてしまうことがあります。

でも大切なのは、ご利用者自身が、自分がどうしたいのかを考えること。
そして、これからどうするのかを自分で決めることです。

援助者は、ご利用者が自分で決めることができるように支援をしていく必要があります。

介護の現場でも、ご利用者の考えではなく、介護者の意思で動かそうとしたり、指示に従ってもらうことが多々あります。
例えば、介護者がご利用者に「トイレに行きましょう!」とか、「お風呂に入りましょう!」とあらかじめご利用者の行動を決めてしまって、誘導しようとする場合です。

これは介護者の思う通りに、ご利用者に動いてもらうための声掛けの仕方です。
介護者が決めてから伝えるのではなく、ご利用者が決められるように提案(質問)したり、選択肢を持たせてあげるといいと思います。

そして援助者は、時には代弁者として、ご本人の意思を他者に伝える役目もあります。

介護が必要な方の中には、理解力や判断力が低下していて、自分では決められなくなってきている方もいらっしゃると思います。
ただ、言葉では伝えられなくても、表情や行動で意思を表されている場合もあります。
快・不快という感情はいつまでも残るので、そういった感情を表現されているということを見逃さないように、ご本人が今何を思っているのかを観察したり想像したりすることが大切です。

ご利用者の意思を代弁できるくらいの理解や信頼を得られるような支援ができるといいですね。

 

介護現場での振り返りポイント 介護者の一方的な考えで支援していないかどうか?

ご利用者が自分で判断して決められる機会を奪っていないかどうか?

ご利用者の意思・感情を無視して(見逃して)いないかどうか?

 

3.受容の原則

受容とは、その人のありのままの状態を受け止めるということです。
相手の言葉や行動を受けて、評価をしたり批判をしたりして対立するのではなく、言葉、行動、そしてその人の存在そのものを受け止めます。

例えば誰かが何か問題を起こしてしまったとしても、そういった行動を起こすに至った状況(背景)を理解する。
『問題を起こす人』という見方ではなく、『そのような状況にある人』という見方をして、環境面やご本人の精神状況などを総合的に見ながら支援をしていきます。

 

介護現場での振り返りポイント そのままのその人(ご利用者)を受け入れているかどうか?

何か無理難題を言われたり、問題を起こされたりしても、言葉や行動を否定したり拒んだりせずに、その行動の意味を理解しようと努めているかどうか?

 

4.非審判的態度

援助者の価値観や常識で、評価したり批判したりしない。援助者の方で善悪のジャッジをしない。
受容と似ていますが、この人は間違っているとかこの人はダメな人だといった評価をせずに、そのままのその人を受け入れ、その人を理解しようとする姿勢が大切です。

 

介護現場での振り返りポイント 自分(介護士)の価値観で相手を評価していないかどうか?

 

5.秘密保持の原則

最近では個人情報保護法があり、守秘義務については厳しくなっています。
また、「社会福祉士法及び介護福祉士法」においても、守秘義務について、違反すれば罰則規定が設けられています。

バイスティックがこの7原則を提唱したのは1957年ですので、このころからすでに守秘義務について語られているんですね。

ご利用者(クライエント)には、他人に知られたくないこともあります。
抱えている問題だけでなく、過去経験したことや自分の家族のことなど、また、支援やサービスを利用していること自体も、人には秘密にしている場合もあります。

 

介護現場での振り返りポイント
介護職員同士が集まると、ついついご利用者の話題が出ることがあります。
それが外出先(お店など)である場合は、意図的に情報を漏洩しているつもりはなくても、他人に聞かれる危険性のある場所で話をしているという時点で、知らず知らずの内に情報漏洩をしていることになります。
また、介護職員が家に帰って、家の人にご利用者(クライエント)のことを話すことも情報の漏洩になります。
気づかずにしてしまっていることも多いと思いますので、気を付けるようにしましょう。

介護現場では、利用時に個人情報についての同意書をもらうようになっています。
どのようなことが個人情報にあたるのか、また、外部に情報を提供してもいい場合(研修や広報活動、他事業所間での情報共有など)について、ご利用者やご家族に確認しておくようにしましょう。

 

6.意図的な感情表現の原則

人は生活のあらゆる場面で、感情をコントロールして、時に抑制して過ごしています。
援助を必要としている方のなかには、押さえつけている感情を吐き出すことで、問題が解決に向かうようになったり、自分自身の気持ちに気づくことができるようになります。

援助者はご利用者(クライエント)が感情を表せるように、意図的に接する必要があります。

どのようにすれば感情に働きかけられるかというと、かけてあげる言葉や、話を聞く態度(姿勢)、共感や受容といった、人と接する上でのスキルが必要になってきます。
肯定的な感情も否定的な感情も、喜怒哀楽を引き出すことで、ご利用者は自分の本心に気づくことができます。

 

介護現場での振り返りポイント ご利用者と真剣に誠実に向き合っているかどうか?

話を聞こうとする姿勢をもっているかどうか?

ご利用者の感情(気持ち)に気づいているかどうか?

 

7.統制された情緒関与の原則

援助者は自分の感情に気づいていることが大切です。
ご利用者(クライエント)のなかには様々な方がいらっしゃいます。
そういった方々と日々接していると、援助者も感情を揺さぶられることがたくさんあります。
そのなかで、ご利用者のことを肯定的に見ているのか、否定的に見ているのか、内心では批判しているのか、そういった感情に気づき、場合によっては感情をコントロールする必要もあります。

しかし感情をコントロールするといっても、機械的に関わる、作業的に関わるというのではなく、人として人間らしい関わりをすることで、ご利用者との関係が近くなることがあります。

専門家として、知識や技術をひけらかして理屈的に関わるというよりも、人として、情緒的な関わりをすることで、信頼関係を築くことができます。

 

介護現場での振り返りポイント ご利用者に対して作業的な関わりになっていないかどうか?

専門家として、必要以上に理屈的・管理的な関わりになっていないかどうか?

 

まとめ

バイスティックの7原則を一つ一つ確認し、普段どのようにご利用者に接しているのかを振り返ってみましょう。

自分の接し方を振り返ってみると、この部分はできているなとか、この部分はまだまだだなとか、いろんな気づきがあると思います。

まずは、ご利用者への接し方のスキルとして、こういった7つの原則があるということを知るということ、そして、やりやすいものから意識をしてやってみるということが大切だと思います。



  
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