介護職員に必要な自己覚知って何?自己覚知の方法は?

自己覚知とは何か?

社会福祉や介護福祉などを勉強すると、『自己覚知』という言葉がでてきます。

自己覚知とは、『自分自身を知る。自分のことを自分で自覚する。』ということです。

自分の価値観、思い癖、ある状況下で何を思い、どのような行動をする傾向にあるのか、そういったことを知っていると、何か問題が起こったときに自分自身を修正しやすくなります。

なぜ自己覚知が必要なのか?

自己覚知は、特に対人援助職に就く人に必要といわれているのですが、それ以外の仕事でも、また家庭でも学校でも日常的にとても役に立ちます。

人と触れ合うということは、様々な価値観に触れるということです。

人の数だけ価値観があると言っても過言ではありません。

物事に対する見方や考え方は、似たような感じ方はあるにせよ全く同じではなく、人それぞれ違います。

人はそれぞれ、自分の価値観を通して物事(世界)を見ています。

そしてほとんどの人は、自分の考えが一番正しいと思っています。

対人援助の場合、援助者は、自分自身の価値観、感覚を通して他者を援助することになります。

援助者が偏った価値観を持っている、視野が狭いという場合は、援助の方法も偏ってしまったり、相手の価値観を受け入れられず、十分な受容や援助ができないということもあります。

介護の現場で自己覚知はどんなときに役立つ?

ご利用者と接するとき

〇〇さんの行動が、なんだか受け入れられない、理解できない、腹立たしく感じてしまう、もっとこうしてほしいのに・・・

人を見てモヤモヤしたりイライラしてしまう場合は、自分がどのような価値観をもっているのかについて考えてみましょう。
その人のどんな行動が受け入れられないのか?を考えることで、自分がある出来事に対して「~してはいけない」という禁止事項を持っている、また「~しなければいけない」という義務感や責任感のようなものを持っているということに気づきます。

自分の考えに当てはまらない人に対して、イライラしてしまうということがわかります。

自分の価値観を変えるというよりも、「自分はこのような価値観をもっている」ということに気づくこと、そして、相手は自分とは違う価値観を持っているということに気づき、それを認めることで、心が少し楽になります。

自分の心に少し余裕ができることによって許容範囲が広がり、冷静に丁寧に接することができるようになります。

他職員と話し合うとき

〇〇さんの考え方に納得できない
自分はこうしたいのに、わかってもらえない

話し合いにより、相手の価値観と自分の価値観の違いを知ることができます。
ただ違うということでイライラするばかりでなく、相手が何を大切に思っているかということを知るように心がけましょう。
また、自分が大切に思っていることを、どのように相手に伝えればいいのか、伝え方も考えることができます。
振り返ってみると、自分の主張ばかりで、相手のことを受け入れていなかったなどの気づきがあります。

普段の業務をしているとき

忙しくなるとイライラしてしまい、他職員やご利用者への言葉が強い言い方になってしまう
表情や行動にイライラが表れてしまう

一つのことに集中すると周りが見えなくなってしまう

難しいことはついつい人任せにしてしまうところがある

自覚をせずに無意識のうちにしてしまっている場合は、他者との関係が悪化していくなど、新たな問題を生みだしてしまうこともあります。

自分にはこういうところがある、ということを自覚すると、人への声のかけ方が変わってきたり、気をつけようと意識できたりして、問題の解決の仕方が変わってきます。

自己覚知は、何か問題にぶちあたり、行き詰ってしまったとき、自分の意にそぐわないことが起こったときなどにとても役に立ちます。

ついつい、
「あの人は~だから」
「あの人が~するから」
「あの人のせいで~こうなった」

といったように、「他人に問題があり、そのせいで自分がつらい思いをしている」という考え方をしてしまいがちです。

これは他人と接するときにはどんな状況でも、誰もが感じることだと思います。

そんなときには、少し立ち止まって冷静に考え、広い視野で見直してみる。
そうすることで気持ちが落ち着いてきたり、感情任せにしない考え方ができるようになります。

自分と他人は違う価値観をもった人間です。
それでも、共通点は驚くほどたくさんあります。
考え方(思考)レベルでみると多くの違いを感じるかもしれませんが、自分がどんなことをされたら嬉しいか、傷つくか、そういった感情レベルで見ると、相手と自分は共通点がたくさんある。
人間(動物も?)みんな同じなのではないかと思えます。

自分がどういう考え方をすれば相手のことが受け入れられるのか、そして、自分がどのような行動をすれば、相手が自分を受け入れてくれるのか、答えは自分の中にあります。

そして、それをするためには、まずは自分を知るという作業が必要なのです。

自分がどんな人間なのか、どんな価値観が自分を苦しめているのか、またどんな価値観があるからうまくいっているのか、いいことも悪いことも、なぜそれが起こっているのかを分析してみると、様々な気づきが得られます。

自己覚知のやり方とは?

性格診断(エゴグラム)

質問に答えて性格を診断するという方法があります。

何がわかるのかというと、質問に答えることで、心の状態を5つの分類にわけ、どのカテゴリーに該当するものが多かったかで、自分の思考や行動傾向がわかるというものです。

ここで詳しく説明すると、実際行うときの楽しみがなくなってしまいますので、詳しいご説明は省かせていただきます。

『エゴグラム』と検索すると診断できるサイトがたくさんありますので、気になる方は診断してみてください。

一度診断すると、それが全てというわけではなく、年齢や状況によっても、自分の答えや結果は変わってきます。

また、診断結果に喜んだり落ち込んだりするよりも、自分にはこのような一面があるのだということを知り、それを日常生活にどう活かしていくのかが大切なので、あまり結果だけにこだわらず、活かし方に重点をおいていただければと思います。

グループワーク

研修などに行くと、よくグループワークが行われます。
グループワークとは、一つのテーマについて数人で話し合って意見を出し合い、まとめるというワークです。
とくに自己覚知を目的としたグループワークは、とてもおもしろいと感じます。

例えば・・・

100人で暮らしている星があります。近々隕石がぶつかり、星が滅びることになりました。
別の星へ避難する船があり、事前に15名が選出されています。
しかし、いざ乗り込むときに、実際はその船には10人しか乗ることができないということが発覚しました。

以下の15名の中から、他の星で生きる権利を与えられる10名を選び、船に乗る順番を決めてください。(くじ引き等ではなく、話し合って決めること)

1.OL   25歳 女 ヨガと料理が趣味
2.消防士  32歳 男 正義感が強い
3.主婦   28歳 女 妊娠5ヶ月
4.化学者  56歳 男 化学賞の受賞者
5.作家   68歳 男 覚せい剤使用で逮捕歴がある
6.医者   42歳 男 眼科医
7.アイドル 21歳 女 世界的人気アイドル
(以下省略)



15.

15人のうち、10名を優先順位をつけて選んでいきます。

人の命は平等なはずです。
選ぶことなんてできない。。。と思うかもしれません。
でも、自分が選ばなければならない立場になったとき、その選ぶ基準は、自分のもっている価値観です。
自分の価値観で判断し、決断をしています。

なぜその人を選んだのかを、グループのメンバーと話しているうちに、自分が何に価値を置いているのか、また、何を排除しても平気だ(しょうがない)と感じているのかに気づくことができます。

話し合いを通して深く考えると、無意識のうちに思っていたことや無意識のうちに判断していたことなどを表面化することができます。
自分の価値観を改めて知ってショックを受けることもあります。

この事例はどんな答えを導き出しても、何が正しくて、何が間違っているということはありません。
全てはそれぞれが自分の価値観に基づいて話をしていきます。

日常生活の中でも、自分は正しくて相手が間違っていると錯覚してしまうことが多々あると思うのですが、それは正しいとか間違っているとかの問題ではなく、価値観の違いによるものなのかもしれません。

話し合いにより、自分や相手の価値観に触れて、お互いが歩み寄っていけるといいですね。

グループワークはそういった機会を意図的に行う演習です。

自分の今日一日を振り返る機会を作る

今日は忙しかった割には落ち着いて仕事ができたなとか、イライラしてしまったなとか、
あの人のあの言葉に対してこう感じたとか、

印象深い出来事に対して、何を感じたかや、どのようにその出来事を捉えたか、何を考えたのかなどをノートに書き出してみて、視覚化することで客観的に自分のことが見えるようになります。

他人のことはとてもよく見えても、自分のことはなかなか見えないものです。
でも、映像や文章などで視覚化して客観的に見ることで、自分はこんなことを考えていたのかとか、こんな行動をしていたのかということが見えやすくなります。

そして、それを見て反省したり自己嫌悪になるよりも、『気づく・知る』ということが大切です。

ノートに書かれていることに対して、他人にアドバイスをするように客観的にベストな方法を考える。
「こんなことをしてしまった・・・こんなことを考えてしまった・・」という反省・自己嫌悪ではなく、「この場合はこうすればいいんじゃない?」とか、「こんなふうに考えてみたら気持ちが楽になるんじゃない?」とか、自分のことだけれども、他人にアドバイスをするように考えてみると、感情的にならず、冷静に問題解決の糸口が見つかるようになります。

まとめ

自己覚知とは、自分自身を知る作業。

人を援助するためには、その人のこと(価値観や人間性)を知る必要がある。
そして、自分自身の価値観や人間性、自分が他人に与える影響も知る必要がある。

自分と他人の価値観の違いや共通点を知った上で、幅広い視野をもちながら関わっていくことが大切。



  
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