介護の仕事が初めてだという新人職員さんの様子を観ていると、ご利用者とのコミュニケーションに苦戦している方を多く見かけます。
介護職員を長くやっていると、独特の高齢者に対しての話しかけ方というものが身についてきます。
つまり、相手が聞き取りやすいように少し大きめの声で、ゆっくり話をするという話し方。
高齢者とのコミュニケーションについて詳しくはこちら↓の記事をお読みください。
話しかけたのに、何も反応がない時、新人さんは困ったように先輩職員の顔を見ます。
なぜ話しかけても反応がないのでしょうか?
ご利用者にあなたの話が伝わらない理由
理由①あなたの言葉が聞き取れない
介護の仕事に慣れていない方は、友達に話をする感覚で、早口で話をしたり、ボソボソっと聞き取りにくい話し方をしてしまうことがあります。
せっかく話かけたのに、ご利用者から何の反応もなく、無視されたように感じ(聞こえなかっただけなのですが)、話しかけるのが億劫になってしまう方もいます。
ご利用者は無視したのではなく(なかにはあえて聞こえないふりをする方もいらっしゃいますが…)、あなたの声や言葉が聞き取れなかっただけなのです。
通常話しかけた時に、聞こえなかった場合は「え?何?」と聞き返してくださるのですが、相手の視界に入らずに、あなたが話しかけていることすらわからない場合は、「何?」と聞き返してくださることはほとんどありません。
理由②相手が理解していないことを確認していない
介護では何か動作をする前に声掛けをするのですが、相手が理解していないのにも関わらず、動作に移ろうとしても、体を動かそうとはされません。
これは、相手が非協力的なのではなく、あなたの声掛けを理解していないからなのです。
困っている職員さんに「相手に聞こえていないと思いますよ~」とか、「たぶん何を言われたのか理解されていないですよ~」とアドバイスをするのですが、新人職員さんの心境としては、「なんで無視するの??」「なんで動いてくれないの??」という気持ちでしょう。
介護では相手との意思疎通が必要不可欠です。
息を合わせて介助を行うことで、ご利用者の動きに合わせて介護者もサポートすることができ、必要以上に力を入れることがなくなります。
意思疎通なしでは一方的な介助になってしまいます。
たとえご自分で言葉が発せない方でも、目を見たり表情を見たり、体の動きなどを見たりして、苦痛かそうでないか、相手の状況を察することができます。
あなたの言葉をご利用者に伝えるためにすること
①相手の視界に入る
『私があなたに話しかけていますよ』ということをまずは目で理解してもらうために、相手の視界に入ります。
認知症の方や耳の遠くなった高齢者にとっては、姿を確認できないまま、声だけを聞き取って判別することは難しいため、『自分に話しかけられている』という認識があってから、声をかけた方が伝わりやすいです。
相手の視界に入り、相手と目線を合わせてから話しかけます。
たとえあたなの言葉が聞き取れなかったとしても、少しでも音が聞こえたり、口が動いているのを見れば、『あぁ、何かを話しかけられているな…』と思い、「え?何?」と聞き返してくださいます。
相手も『聞く』態勢が整ってくるので、より伝わりやすくなります。
②ゆっくり話しかける
耳が遠くなると、声を聞き取ることが難しくなったり、脳の障害によっては、言葉を理解することが難しくなる場合があります。
通常、家族や友人と話をする時よりも、ゆっくりのペースで話をするように心がけます。
場合によっては、一言一言でくぎったり、文章を短めにするのもコツです。
声の大きさは、相手の聞こえ具合に合わせて大きくする場合もありますが、必要以上に大きくしなくても十分伝わる場合もあります。
③自分の言ったことを相手が理解しているかどうか確認する
話しかければ聞こえるだろうとか、伝わっているだろうと思いがちで、意外にこの確認作業というものをしない人が多いように思います。
確認作業というのは、「聞こえました?」と聞いて確認するのではなく、相手のうなずきや、目や表情を見て確認するということです。
目を見て、表情を見てお話すると、うなずいたり、返事をしたりされます。
しかし、相手の視界に入っていなかったり、相手の表情をまともに見ずに話しかける場合、一方的に話をしてしまうことが多く、相手に自分の意思や考えが伝わったのかどうかがわかりにくくなります。
耳の遠い方は一言一言区切り、その都度相手のうなずきを見たり目を見たりして、自分の言葉が伝わっているのかどうか確認するといいと思います。
伝わらない例)
(早口でボソボソと)「今日一緒に散歩行きませんか?」
「・・・」(聞こえていない)
伝わる例)
(相手の目を見てゆっくりと)「今日ね『(うん)』一緒に『(うん)』お散歩に行きませんか?』
「うん、いいよ。行こう!」
コミュニケーションがとりにくい方の場合は身体の状態を知る
話しかけてみて、コミュニケーションが難しい時は、その方の体の状態に合わせて工夫が必要な場合があります。
まずは体の状態についてのアセスメント(情報収集)をすることから始めます。
例えば、耳が遠いとか、左右で聞こえやすい方がある(補聴器をつけている)とか、筆談の方が伝わりやすいとか、ジェスチャーを交えると伝わりやすいとかです。
その方にとって、どのような方法で伝えるのが一番いいのか、体の状態を知ることでわかることもたくさんあります。
慣れないうちは、先輩に相談したり、先輩が普段行っているコミュニケーションの方法をよく見て、真似をしてみることから始めてみましょう。