認知症の人に何かお願い事をしたり、納得してもらうために説明をする場合、話を聞いてもらいやすい人と、全く聞く耳をもってもらえない人がいます。
両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
認知症の方に話を聞き入れてもらえる人ってどんな人?
話を聞いてもらいやすい人というのは、単純に相手から好かれているかどうか、信頼されているかどうかにあります。
どんなに認知症ケアについて勉強をして来た人でも、かなわない相手がいます。
それは、本人と長年付き合って来た人。
ただの付き合いではありません。
信頼関係が築けている人たちです。
例えば介護職員では、他の介護施設で10年認知症ケアの経験があっても、新しく入った職場では新人です。
認知症のお年寄りさんたちにとっては、どんなに知識や技術がある職員でも単なる『新入り』。
『新入り』の言うことなんて、聞いてはもらえません。
認知症ケアの知識や技術を駆使したとしても、付き合いの長い職員さんにはかなわないこともあります。
だから、認知症ケアの経験の上にあぐらをかかず、一からご利用者と信頼関係を築いていく必要があるのです。
繰り返し言うようですが、大事なのはどれだけ相手から信頼されているかです。
「この人は私のことを良く知ってくれている。この人がこう言うんなら間違いないんだろう。」
「はいはい。あんたに言われちゃ仕方ないね。」
こんな具合に言葉を聞き入れて下さるのです。
好きな相手であればあるほど、よく聞いてくださいます。
家族であれば、日頃どんなにお世話をしていても、悔しいけれど
嫁よりも娘。
娘よりも孫。
そんな傾向にあります。
可愛くてしょうがない相手。
そんな相手からお願いされたら、聞き入れてしまう心理は想像がつくと思います。
認知症の人に話を聞き入れてもらえないときにすること
何かお願いをしたり説明したりするときに、聞き入れてもらえないときには
伝える人を変えてみましょう。
もし自分が言ってみてもダメだったら、人を変えてみる。
他の職員さんに代わってもらってもいいし、場合によってはご家族にお願いしてもいいと思います。
それが、ご本人のためにもなるからです。
不安で不安でしょうがないときに、見ず知らずの者が言うよりも、ご家族からの言葉の方が安心できたりするからです。
その人にとって、一番信頼できて安心できる相手に話をしてもらう。
大切に思っている相手に言ってもらうと、すんなり聞き入れてもらえることがあります。
介護施設では、利用を始めたばかりの方にはご家族にも事情を説明して、当分の間ご協力いただくといいと思います。
でもその間に、職員はご利用者と一刻も早く信頼関係が築けるように、関わっていく必要があります。
伝える人が代わることの効果
例えば一人の職員が認知症のあるご利用者と話をしていた場合、話が長くなるほど説明から説得へと変わってきてしまいます。
どうにか説得しようと、あの手この手で言いくるめようとしてしまいます。
そうすると、ご利用者はその職員に対して敵対心をもってしまうことがあります。
イライラが募って、いい結果は招きません。
そんな時に別の職員が変わって応対してみると、不思議なことにコロッと態度が変わることがあります。
さっきまでの感情はなんだったのだろう??と思うほど、気持ちやその場の雰囲気が変わることがあります。
また、敵対心をもってしまった職員の愚痴を他の職員に言うことで、気持ちがスッキリして落ち着かれることもあります。
苦しい状況にいた自分を助けに来てくれたという気持ちになるのか、心を開いてくださり、初めに話をしていた職員も、次に代わった職員も同じことを伝えているはずなのに、なぜか聞き入れてくださいます。
理屈ではうまく説明できないような、心の変化があるのだと思います。
まとめ
・自分が話をしてみてもダメなら、他の人に代わって言ってもらう。
・日常の関わりを大切にし、信頼関係を築く。
いざというときに信頼関係があるかないかでは、ご本人の気持ちにも大きな差が出ます。