入居施設は365日24時間体制でご利用者のケアを行います。
ご利用されている方の中には、ずっと介護士さんが見ていてくれるから安心という方もいらっしゃるかもしれませんが、四六時中人の目の監視下にある状態を窮屈に感じている方もいらっしゃいます。
過剰すぎる!?介護職員の親切さ
介護施設では、職員が利用者に不必要に声掛けをしたり指示をしたりしているところを目にします。
認知症の方が立ち上がってどこかに行こうとすると「どこ行くの?」と声をかけられ、自室でタンスを開けたり閉めたりしていると「どうしたの?」と声をかけられます。
小規模で、職員の目が行き届きやすい施設ほど、このような光景が見られます。
介護者は何か手伝おうとして声をかけているのか、それとも声をかける癖がついてしまっているのか・・・。
介護職員がこういった声掛けを続けていると、しまいにはご利用者の方から「トイレへ行ってきます。」と報告をされるようになってしまいます。
共有スペースのリビングからトイレへ行く、または自室に帰るときに、職員に報告されるようになるのです。
見守りと監視の違いとは?
今や自分の家であるはずの生活の場で、職員に対して断りを入れなければ移動することができない。
とても不自然な光景のように思えます。
いつも職員の目を気にしなければならない。
ご利用者はまるで24時間監視をされているみたいで、気の休まるときがないように感じます。
こういったことを考えると、介護職の役割っていったいなんなのだろう??と思ってしまいます。
人の目があるから安心して暮らすことができる。←これは見守りがうまく機能している状態であると言えます。
でも、監視されているみたいで窮屈さを感じる。←これは見守りが行き過ぎている状態であると思います。
介護職員は自分たちがご利用者を監視しているとは思っていません。
困ったことがあればすぐに助けたいと思っています。
だからご利用者が何かやろうとすると「はいはい、わかりました!」と本人がやるよりも前に手伝ってしまいます。
自分たちがご利用者の意思や行動の邪魔をしているとは思っていません。
仕事だからしっかりと見守らなければいけないし、仕事だからご利用者を手伝わなければいけないと思っています。
その結果、先に口が出たり手が出たりしてしまいます。
それをしないと、仕事をしている気がしないからです。
ご利用者にも同僚にも、「見ていても何も手伝わない不親切な人」「気が利かない人」などと思われたくないからです。
でも・・・ご利用者は本当に声をかけてほしいのでしょうか?
自分がやろうとしていることを、先回りして他の人にやってもらいたいと思っているのでしょうか?
その思いは人それぞれ違います。
職員から声をかけてもらえて嬉しい人、すぐに手伝いに来てもらえて嬉しい人もいれば、自分でやりたいと思っている人もいます。
いちいち何でも聞かないでほしいと思っている人、困った時だけ手伝ってほしいと思っている人もいるのです。
適切な見守りの仕方とは?
声をかけるのを少し我慢して、相手の行動を見守ってみる。
そうすると、ただトイレに行くだけだったとか、自室に帰って一枚羽織るものを持ってくるだけだったとか、こちらがわざわざ本人に「どうしたのか?何をするのか?」と確認する必要がないことがわかります。
手伝う必要はなく、ご本人が自分の意思で行動され、問題も自分で解決されるということもわかるようになります。
相手がどういう気持ちなのか、その時の状況やご本人の性格から察する。
そして、声をかけてほしいタイミングや手伝ってほしいと感じるタイミングで、職員が登場すればいいのではないかなと思います。
職員として接すると、相手が何を望んでいるのかを考えないうちに行動してしまうことが多いようです。
時には見て見ぬふりをするということも必要なのではないでしょうか。
24時間、しっかり見ています!というよりも、『見ていないようでいて、ちゃんと見ている』というさりげなさ。
そして、困った時には必ず助けてもらえるという安心感。
これが、窮屈さを感じさせない、安心につながる見守りの仕方なのではないかなと思います。
ご本人に不自由がないようになんでもお手伝いすることが介護なのではなく、ご本人が自分でできるように見守ったり支援すること、ご本人の意思を尊重し、想いが実現できるように支援するというところに、介護職員としての役割があるのではないかと思います。