事業所や施設によって、ご利用者に対する介護職の接し方は様々です。
お客様として接している事業所はご利用者のことを「○○様」と呼んでいるし、友達感覚で接している事業所は下の名前やあだ名で呼んでいるところもあります。
どちらがいい、悪いとは言いません。
それぞれの考え方や相手との距離感、関係性があってのことだと思うので。
でも、明らかに介護者が失礼な態度をとっていることは残念ながら多々あります。
今回は入所施設で見られる、職員の不適切な態度について、自分自身の反省も踏まえて書いてみたいと思います。
無意識にうちにやってしまっている失礼な対応とは?
直接ご利用者に接するときには意識して気を付けているのですが、自分でも気が付かないうちに、無意識のうちにご利用者に対して失礼な態度をとってしまっていることがあります。
例えば、ご本人が目の前にいるのにも関わらず、職員同士でその人の話をする。
「今日どれくらいごはん食べた?」とか「薬もう飲んだ?」とか・・・。
「最近穏やかだよね。」とか、「夜寝てくれて助かるよ。」とか・・・。
仕事上の話を、まるでそこにご本人が存在していないかのように職員だけで話をしている。
職員同士の話に夢中になってしまい、周りのことが見えなくなってしまっているのですが、実はご本人に聞かれてしまっているのです。
本人は目の前にいても何も言わないし表情も変えないから、どうせ聞いていないだろうと思って話をしているのでしょうが、実はしっかりと聞いています。
そして自分のことを言われているというのは、なんとなくわかっている。
私たちも、自分の噂話を誰かがしていたとしたら気になりますよね?
例えば先輩同士の会話の中に、「〇〇さんが・・・」と自分の名前が出ているのが聞こえてきたら、何の話だろう??と気になると思います。
別に悪口ではなくても、陰で自分のことを言われるというのは、あまりいい気はしないですよね?
それでも仕事に夢中になってしまうと、ついつい仕事上の話を大声でしてしまいます。
ご利用者に関する話を平気でご利用者の前でしてしまいます。
本人が聞いていなくても、他のご利用者が聞いている場合もあります。
自分がされたら嫌なことを無意識のうちに相手にしてしまっているのです。
もしかすると毎日数えきれないくらいの失礼をはたらいてしまっているのかもしれません。
失礼な対応というのはまだまだあります。
<居室>
・ノックをせずに部屋にいきなり入る
・本人の留守中に断りも入れずに勝手に部屋に入る
・許可なくタンスやクローゼットを開けて洗濯物を収める
・本人の持ち物を雑に扱う
・本人の居室なのにも関わらず、介護者にとって都合のいいものを置いている(ビニール手袋やパッド類などを目に見えるところに置いている)
<食事>
・本人のペースに合っていない食事介助をする
・立ったまま食事介助をする
・声掛けもせずに無言でただただ介助をする
・スタッフ同士で話をしたりテレビを観たりして、本人の存在を無視した介助をする
・本人に断りも入れずに無言で下膳する
<排泄>
・トイレで介助中カギをかけない、ドアを全部閉めない(他者から見られる可能性がある)
・大きな声で他のスタッフに排便があったことを伝える
・「出てる」「出ていない」をいちいち言葉に出す
・匂いに配慮しない
・トイレに座れるのにも関わらずおむつをあてられている
・部屋でおむつ交換中にそのままの状態(ズボンを下げた状態)で忘れ物を取りに、その場を離れる
<入浴>
・羞恥心への配慮がない
・入浴が苦手な人への強引な介助
・物を洗うかのように体や髪を洗う
・本人のペースに合っていない介助
・入浴できるのにも関わらず、シャワー浴や清拭で終わらせる
<移動>
・声掛けをせずにいきなり介助をする(椅子を動かす、車椅子を動かす、体を動かす)
・荷物を運ぶかのように強引に移乗する
・移動するスピード
・車いす2台を同時に押す
・職員の都合で不必要に廊下で待たされる
<整容>
・服が汚れていても着替えない
・目やにがついていても拭かない
・髪に寝癖がついていてもとかない
・つめが伸びていても切らない
気が付いているのに、今は忙しいから後で、と結局やらずに見過ごす
これらは悪気がなくてもついついやってしまっていることだと思います。
一生懸命、毎日走り回るように忙しく介護をしている中で、人として大切にしなければいけないことへの配慮が欠けてしまっているのです。
この事実を知り、入居施設の現場を知らない方は驚かれるかもしれません。
介護現場を知っている方は、「あ~、あるある」と思われるかもしれませんし、もっと失礼な態度を想像することも可能かもしれません。
入居施設にお勤めの方で、心当たりのある方は多いのではないでしょうか?
なぜこのようなことが起こるのか?
それは、相手(ご利用者)が何も言わないからだと思うのです。
自分が失礼な態度をとった時に、相手からすぐに反応があったり注意を受ければ、自分の行動を改めることができるかもしれません。
でも、介護業界は自分の対応の仕方について、その場でお客様から直接注意を受けることはあまりありません。
先輩職員が後輩職員に注意をしたり、自分たちでスキルアップしていくしか成長できる方法がないのです。
失礼な態度をとっても、叱ってくれる人がなかなかいないのが現状です。
介護施設の中でも認知能力がしっかりした方や、自分の意思をはっきりと伝えられる方には敬語で丁寧に接するのにも関わらず、認知能力の低い方には幼児扱いする場面も見られます。
自分よりも弱い立場だと思ってしまうのでしょうか?
何も言わないから、失礼な態度をとってもいいと考えてしまうのでしょうか?
ここに、介護職とご利用者の上下関係(何かがおかしい!?介護職と利用者の関係)を発生させる原因があるのではないかと思います。
相手を人として見ているかどうか?
目上の人に接しているという自覚があるかどうかだと思います。
目の前にいる人は、誰かのお母さんであり、お父さんです。
妻であり、夫です。
誰かの姉妹であり、だれかの兄弟です。
誰かの親友でもあります。
その人を大切に想っている人たちが職員の失礼な態度を目のあたりにしたら、どう思うでしょうか?
とても悲しくやりきれない気持ちになるのではないでしょうか。
無意識のうちにしてしまっているのであれば、まずは意識することから始めてみましょう。
自分たちが日ごろどのようにご利用者に接してるのか、自分自身や同僚のふるまい、介助の仕方について振り返ってみませんか。