『人の話を聴く』という行為は、日常的に誰もが行っています。
普段何気なく行っている行為ですが、実は「話を聴くための技術」というものがあるのです。
仕事として相談業務を行っている人は『相談援助技術』として、相談場面でのコミュニケーションのとり方・聴く・話すといったことを学びます。
「聴く技術を高める」ということは、仕事として相談業務を行っている人に関わらず、どんな人にも役立ちます。
職場での後輩育成や、家庭や友人関係などのプライベートなど幅広く活用できるのです。
「話を聴く」というのは技術です。
つまり、普段あまり人の話を聴くことができない、または人との対話に苦手意識をもっているという方でも、コツさえつかめば、相手に気持ち良く話をしてもらうことができたり、なかなか本心を話してもらえない方からも話を聴きだすことが可能になります。
良い人間関係を築くことにも役立つでしょう。
今回から4回に渡って『聴く技術』についてお話していきたいと思います。
その悩み事、誰に相談する?
皆さんは何か悩み事があると、どのような人に相談するでしょうか?
親や上司、先生や友人、専門家など、それぞれ自分のことを良く知ってくれていたり、頼れる存在であったり、自分よりも知識のある人だったり・・・そういった人を選ぶのではないかと思います。
大抵は信頼できる相手ですよね?
相談される側としては、家族や友人関係であれば、良く知った間柄のため、すでに信頼関係ができた相手と話をすることが多いのですが、専門職の場合は、相談援助の場面で初対面の人と一から信頼関係を築いていく必要があります。
また、職場の同僚や後輩と話をする場合も、その方の一面しか知らないうちに深刻な悩みの相談を受けるということもあります。
介護の現場でも、ご利用者とお話をするときには、信頼関係を築くということを大切にしています。
相手との信頼関係はどうやったら築けるのでしょうか?
それは、自分自身の相手に対する姿勢が大きく影響しています。
相手は誰かに頼りたいという気持ちでいることが多く、時に不安や悲しみや怒りの感情を抱きながら話をしてこられることが多いです。
自分自身をこのまま受け入れてほしいという感情が働きます。
だから話を聴く場合、話を聴くとともに、そういった相手の感情や、その人自身を受け入れる(受容する)という姿勢が必要になってきます。
信頼関係が築ければ、話しにくいこともお話してくださるようになります。
話しやすい人ってどんな人?
大抵は無意識のうちに頼れる人を自分で選んで相談していると思いますが、それには「相談しやすい・相談しにくい」という判断基準があります。
一度話をしてみて、相手の態度次第では、「もうこの人には二度と相談するのはやめよう」と感じることもあるかもしれません。
こんな人には相談したくないという人はどんな人でしょうか?
話しにくい雰囲気とは
話を聴いているようで聞いていない人(傾聴しない)
・目を合わせない
・たびたび時計を見る
・ため息をつく
・あくびをする
・そわそわと落ち着かない(机をトントンと叩いたり、足を揺らすなど)
・背もたれにすがって、ポケットに手を入れたり、腕を組む
・無表情で感情がわからない
・不自然な作り笑いで取り繕っている
相談する側(話をする側)がこういった落ち着かない雰囲気でいることは多々あります。
それは、自分の話をすることに躊躇していたり、不安や恐怖などで、精神的に穏やかでない場合が多いからです。
しかし、相談される側(話を聴く側)は真摯な態度で、しっかりと相手の話や相手の存在そのものを受け入れる必要があります。
腕を組んだり脚を組んだりするのは、防衛的な姿勢であり、相手を拒んだり受け入れないというメッセージが込められた態度といえます。
逆に、相手を受け入れる姿勢は、オープン・ポジション(開いた姿勢)といい、相手の方に少しだけ体を傾けると、相手に興味をもっている、あなたを受け入れています、壁をつくっていませんよ、というメッセージを届けることができます。
メッセージは言葉だけでなく、表情や態度でも伝えることができるのです。
また、相手の話に対して、相槌を打ったり、受け答えをするときにも注意が必要です
話しにくい態度は、求めていない答え(意見)を押し付けてくる人
・「はいはいはい、うんうんうん・・・」など相槌をうちすぎたり、適当な受け答えをする
・上から目線でものを言う
・しったかぶりで意見を言う
・勝手に推測したり決めつけてものを言う
・何か言うとすぐに「いやいや、あなた、それはね~」と反論してくる(受容がない)
こういったように、話を聴いてもらえていない、自分の話を受け入れてもらえていないと感じると、相談する気もうせてきますよね。
聴き上手な人の雰囲気とは??
専門職でなくても、「なぜかわからないけれど、よく人から相談される」という人には、共通点があります
・嫌な顔をせずに、優しい態度で接してくれる
・おおらかな、余裕のある雰囲気をもっている
・親身になって話を聴いてくれる
・どんな話でも真剣に聴いてくれる
・意見を無理に押し付けない
相手の話に耳を傾けたり(傾聴)、受け入れたり(受容)している人なのではないかと思います。
元々聴き上手な人もいれば、そうでない人もいます。
人の話を聴くよりも、自分がしゃべる方が好きだとか、話を聴いているとついついアドバイスしてしまいたくなるとか、それぞれの性分があると思いますが、『聴く』というのは技術なので、コツさえつかめば性格に左右されずに、誰でも聴き上手になることができます。