認知症の人にとってスキンシップが効果的な理由

認知症の人と接するときに、理論的に接する人は少ないと思います。
こんな効果があるからこうしよう!と、頭で考えたことではなく、なんとなく「この人にこうしてあげたいな」という、人を想う気持ちから行動に移すことが多いですよね。

本当はそれが一番大切。

だからあまり頭でっかちになるような知識は必要ないのかもしれません。

ですが、スキンシップの科学的な効果を知るともっと人に触れたい気持ちになるかもしれないので、今回はスキンシップについてのお話しようと思います。

そもそもスキンシップってなに??

スキンシップという言葉はよく使われます。
介護の現場でも「もっとスキンシップを増やしていこう!」と合言葉のように使われますが、新人さんなどは、実際どんなことをすればいいのかわからない方もいらっしゃいます。

スキンシップというのは、コミュニケーションの方法のひとつで、肌と肌の触れ合いを通して心を通わせ合ったり、お互いに親近感を深めていくことです。
具体的には、話をしている時などに体にそっと触れたり、なでたり、握手をしたり、抱きしめたり、相手の体に触れるコミュニケーションです。

介護の現場ではごく当たり前のように行っているスキンシップですが、実は治療を目的に行う医療の現場で、「タッチケア」として患者さんの体に触れるケアが導入され始めているのです。

スキンシップで得られる効果とは?

スキンシップを行うことで、さまざまな効果があります。

・安心感や親近感を得られる
・痛みの緩和
・血圧の安定(高血圧の改善)
・ストレスの軽減

体に触れて安心すると、副交感神経が優位に働いている状態になります。

副交感神経が優位に働くと、体の機能は以下のような反応を見せます。
・リラックスすることで血管が拡張して血流が良くなる
・    〃     血圧が下降する
・    〃     心拍数が減少する
・    〃     消化液の分泌が増加されて、食欲が出たり、消化運動が促される

安心感を感じるというのは、心だけでなく体にとってもいい影響をもたらすことになります。

スキンシップとホルモン分泌の関係

スキンシップを行うと、脳内からあるホルモンの分泌が促されます。

それは『オキシトシン』というホルモンです。

オキシトシンは幸せホルモンとか愛情ホルモンなどと呼ばれていて、心が安定し幸福感を感じることができるホルモンです。

オキシトシンが分泌することで、前述の効果を得ることができます。

 

性別問わず、心を許している人に触れたり触れられたりすると心が落ち着く。

好きな人に触れられると嬉しくて幸せな気持ちになる。

それは気のせいではなかったんですね。

その心地よさが精神的な癒しをもたらし、健康にも良い効果をもたらします。

 

認知症の方の中には、気持ちが穏やかで落ち着いているときは、認知症の症状が軽くなることがあります。

今日はいろんなことをすごく理解されている、自分でいろんなことができている、と思うことがあります。

強いストレスで起こるBPSD(周辺症状)だけでなく、中核症状(理解力や判断力)にも影響を及ぼしているのではないかと思うことが時々あります。

気になって調べてみると、オキシトシンには学習意欲や記憶力の向上にも一役買っているとの記述もあったので、もしかすると認知能力といったところにも影響を与えているのかもしれませんね。

触れられる方も触る方も幸せを感じる

スキンシップは触れられる側だけでなく、触れる方もオキシトシンが出て安心感や幸せを感じます。
ケアをしている人は、自分が相手を落ち着かせてあげていると思うかもしれませんが、実は自分自身も相手によって心地よさを感じさせていただいているのです。

また、心地よさまではいかなくても、自分の心が穏やかになることで、相手に対しての見方が変わってくることがあります。

例えば、興奮が強くて、すぐに怒ったり感情を表に出すようなご利用者がいたとします。
介護者は「正直、少し怖くて苦手だな・・・」と心の中で苦手意識をもっていたとしても、そのご利用者の背中をさすっているうちに、「この人もつらいんだよね~。」と相手を理解するような気持ちに変わってきたり、親近感が湧いてくることがあります。

触れられる方も触れる方もだんだん心が穏やかになっていき、コミュニケーションがとりやすくなります。

スキンシップは一方だけでなく、お互いにとっていい効果があるんですね。

自分で自分の体を触れることでもオキシトシンが出る

人との触れあいで分泌するオキシトシンですが、実は自分で自分の体に触れることでも分泌するのです。

恐怖感を感じた時は、自分の腕を抱きかかえるようなポーズをとったりしますよね?
これは防御態勢でもありますし、自分で自分に触れることで、無意識の内に恐怖感を和らげようとしているのです。

自分で自分に触れることで、安心する物質を脳内で分泌させているんですね。

恐怖感を感じたときだけでなく、普段のなにげない時に自分の二の腕をなでるだけでも気持ちがずいぶん落ち着きますし、ハンドマッサージやフットマッサージなど、セルフケアを行うことでも心や体がずいぶん癒されます。

ストレスを感じているときなどは、簡単に自分でできるセルフマッサージなどもおすすめです。

人との関わり以外でも得られるオキシトシン効果

必ずしも人間同士でなくても、ペットやぬいぐるみなど、自分の好きなものに触れるだけでもオキシトシンは分泌されます。

認知症の方の中には、ぬいぐるみや人形を自分の子供のように大切にだっこされている方がいらっしゃいます。

だっこしていると「落ち着く」という実感があるから、手放せないのでしょうね。

人に触れるときの注意点

スキンシップは相手の体に触れます。
いくらスキンシップがいい効果をもたらすからといっても、他人の体に触れていい場合とそうでない場合があります。

初対面の人にいきなり抱きついたらビックリされますよね?

同じように、介護現場でも適切な距離感が必要です。

それは相手との関係性によって変わってきます。

介護者だから相手の体に触れていい、仕事だから当然触れていい、というものではなく、相手から自分はどう思われているのか?
心を許してもらえているのか?ということが大切だと思います。

特に認知症の方は、何度も会っていたとしても忘れてしまう場合がありますので、久しぶりに会ったときなどは、まずは話をしながら相手の心の状態を見ていき、触れてもよさそうだと思ったらそっと腕に手をそえてみるなどするといいかもしれません。

触れ方の注意点

高齢者や認知症の方は、勢いよく肩や背中をポンと叩いたりすると、とても驚かれたり恐怖感を抱かれます。

相手に触れるときは、下からそっと手を添えるようにしましょう。

下からそっと腕に手を添える。また、下からそっと背中に手を添える。そして背中をなでる。

力は強すぎず、優しく触れましょう。

仲良くなってくると、手を差し伸べると握ってくださったり、ハグをしてくださることもあります。

相手との関係性や距離感に気をつけて、スキンシップを行うようにしましょう。



  
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