介護施設でのご利用者同士のトラブルはどうやって解決するか?

介護施設は様々な方がご利用されます。

特に入居施設では他人と生活を共にすることになります。
今まで一人暮らしをしていた方からすると、他人と四六時中一緒に生活しなければならないというだけで、相当なストレスを感じられることもあるようです。

大人数が利用する大きい施設であれば、『いろんな人がいる』ということが当たり前の感覚になるので、ある意味、それぞれの個性が他人にまぎれて目立たず、『人は人、自分は自分』という世界を作りやすいのですが、グループホームなどの小さな集団では、それぞれの個性が目立ち、人に目が行きやすい分、他人の行動が気になりやすいということがいえます。

気の合わない人がいるという世界

私たちでも経験があると思いますが、学校や職場に苦手な人がいると思っただけで、行くのが憂鬱になってしまうことってありますよね。
考えたくないのに、その人のことを考えて憂鬱になったり苛立ったり、落ち込んだりしてしまうことがあります。

しかし、私たちの場合は、たとえ学校や職場でそのような状況にあったとしても、そこから抜け出せば、ホッとできる環境があります。
要は家に帰れば、苦手な人と顔を合わせることもなく、他人に左右されない、本来の自分の生活を送ることができるということです。

しかし、介護施設に入居している方々は、四六時中他人の存在を気にしなければなりません。

寂しがりやで、「人と一緒に暮らせることが嬉しい!」という方もなかにはいらっしゃいますが、大抵の方はストレスを感じています。

ましてや、苦手な人がいる場合はそこから逃げることもできずに、365日顔を合わせなければならず、それは憂鬱や苛立ちといった大きなストレスとなります。

 

認知症に対する見方

比較的心も体もお元気なご利用者は、認知症の深い方を見てショックを受けられたり、嫌悪感を抱かれたりされることも少なくありません。

ご利用者同士でも、「あの人は頭がおかしい」などと陰でお話をされているのを聞くこともあります。

認知症の深い方は、状況を理解したり判断したりすることが難しくなるため、失敗してしまうことも多かったり、時に思いもよらない行動をされることがあります。

それを見た他利用者は「なんであんなことをするのか!人の迷惑も考えないのか!」と怒りに変わってしまうこともあります。

「もうあの人のことは受け入れらない。なんとかしてくれ!ノイローゼになりそうだ!」とスタッフに訴えられることも少なくありません。

そして、ご利用者同士でも激しい口論になったり、時に攻撃的な行動に発展したりすることもあります。

このような場合、どうすればいいのでしょうか?

介護施設でご利用者が他者に不満をもったときの対応

けんかをしている人たちの、体格や性格によっても判断は変わりますが、例えば小さいおばあちゃん同士が、お互いに言い合いをしている場合、そしてその人たちの性格上、人を叩いたりする傾向がない場合は、特に介入をせずに見守ります。

お互いどんなことを言い合っているのかな~なんて、耳を澄ましながら見守ることが多いです。

『けんか』というのも、生活における一つの大切な場面として微笑ましいと感じる場合は、私たちは介入しません(私たちの場合はです)。

しかし、気性の荒いご利用者や大柄な男性ご利用者が怒りを感じている場合、時に暴力に発展する場合もあり(事前情報でご家族に対して暴力を振るわれていたなどの情報がある場合)、お互いを守るために、スタッフがそばに駆け寄って介入します。

「ご利用者が誰かに暴力をふるわれる」ということから守るのはもちろんですが、暴力をふるう方も守らなければなりません。
ご利用者が暴力をふるったという事実があると、集団生活ができないということで施設にいられなくなってしまったり、『精神的に問題あり』とされて、精神病院行きになってしまうこともあるからです。

 

具体的にどのように介入するかというと、大抵食堂で集まる時間帯にけんかになることが多いので、以下のようなことに気を付けます。
・食事の際の席の配置に配慮する
・表情や言動を注意深く観察して、不満が溜まる前に、職員が隣に座ってお話をして気分転換をする
・不満がたまって、相手に向かっていこうとされる場合は、一人の職員がその方をなだめるとともに、もう一人の職員が相手のご利用者のところへ行き、場所を移るなど避難していただく
・その後、お互いの怒りや不満に対して、気持ちが落ち着くまでしっかりとお話を聴く

ただ、これはその場しのぎでしかないので、根本的な解決策とはいえません。

 

仲をとりもつことよりも大切なこと

気の合わない人がいる。
しかし、『みんな仲良くしましょう!』というのも、不自然なことなのではないかとも思っています。

『けんかがないことがいいこと』
『まるくおさめることがいいこと』 だとは思っていません。

十人十色のこの世の中で、気の合わない人がいるのはあたり前のこと。

それを無理やり「他人を受け入れてください!みんな仲良くしましょう!」というのは、少し強引なことなのではないかと思うからです。

70、80歳の大人の人たちに求めることではないように思います。

他人の心の中はをコントロールすることはできないし、無理やりコントロールしてはいけないとも思っています。
コントロールしていいのは、自分の心の中だけ。

他人が何を思おうが、それはその人の自由です。

ただ、私たち介護職員はその人の心が穏やかになるための『心の調整』をお手伝いすることはできます。

嫌いな人は嫌いでいい。
無理やり人を受け入れろというのではなく、他人が気にならないくらいの心の余裕を持てるように、ストレス軽減をお手伝いすることはできるのではないかと思います。

 

仲を取り持つというよりも、それぞれの欲求を満たしてあげることが重要だと考えています。

自分の欲求が満たされていないときは、周りの人や状況に不満で一杯になります。

なにかうまくいかないことがあると、それを全て他人のせいにしてしまいがちです。

そして、不満や怒りは募る一方で、悪循環に陥ってしまいます。

しかし、自分が幸せな気持ちでいると、心に余裕が生まれ、他人のことが気にならなくなります。

実際、「もう、あの人のことが我慢できない!」と他者に不満を持っていた方に、好きな調理をしていただくと、とても表情が明るくなり、嫌いだと言っていたご利用者に対しても、「食べてね~」と明るく声をかけられるようになったということがありました。

それでも、その方曰く「嫌いな人」には変わりないそうです。
ただ、「もう、どうでも良くなった」と。

今でもその方は、寂しさや役割不足などを感じている時には、やはり「あの人が~!」と不満を口にされることもあります。

でもそれは、私たちの考えでは、その問題のある人(相手)をなんとかしようとか、その方に相手を受け入れてほしいとか、そういった発想にはならず、その方の心のバロメーターを知る、単なるきっかけとさせていただいています。

そのように言われるときには、何か満たされないものを感じておられるんだなと思い、お話を聴いたりすることで、その方が本当に望んでいることを知ることができます。

だから、問題のある人をなんとかしようとか(どちらが問題なのか、何が問題なのか、実際はわかりませんが・・・)、他人を受け入れてほしいと強引に望んだりするのではなく、ご本人が自分で心に折り合いをつけていくためのお手伝いができればいいのではないかなと思っています。

介護職員の接し方をよく見ているご利用者~利用者は職員の真似をする~

2019年1月25日

 

グループワークを活用する

気分転換の方法の一つに、グループワークという方法もあります。

例えば私たちも、職場で気の合わない人がいたとして、普段は、「もうあの人と一緒に仕事したくない」とか、「あの人とは価値観が違い過ぎる」などと思っていたとします。

それでも、「気は合わないけど、まぁ、必要なメンバーだ」と、ちょっとでも気が許せるような考え方になるときはどんな時でしょう?

どんな時に仲間意識が芽生えるでしょうか?

楽しい食事会や飲み会をした時の翌日は、なんとなく気持ちが和らいでいる。

また、共通の問題をチームで力を合わせて取り組んだり、その問題を解決したときは「みんながんばったよね。よくやったよ。みんながいたからできたこと。」などと、思えるのではないでしょうか。

いつも見ている仕事以外の意外な一面を見た時や、ちょっと頑張っている時、協力的な姿勢を見たときなどは、「けっこういいやつじゃん」とか「ちょっと見直した」とか、相手の存在を受け入れることができるのではないかと思います。

 

介護現場でも、レクリエーションなどによるグループワークで、ご利用者同士に親近感がわくことがあります。

ただこれも気を付けなければいけないのは、目的をはっきりさせて、その時の主役となる人を決めて計画的に行わなければ、失敗に終わった場合は、さらに不満や怒りが募り「もうあの人とは一緒にやりたくない!」ということにもなりかねません。

うまくやらないと、レクリエーションこそ、けんかのきっかけになってしまうこともあります。

グループワークにはいろいろなものがあります。
ゲームや歌、体操、工作、食事作りや食事会などなど。

人から受け入れられにくい人の、いいところをみんなに知ってもらうとか、その人の得意なことをやるとか、みんなが楽しく参加できるものにしたり、スタッフが雰囲気作りをしていくことなどが必要です。

目的や意図をしっかりと決めて、楽しい雰囲気で終わることができれば、達成感による心の充足を感じることができたり、メンバーの団結力が強くなったりして、人を認めたり受け入れたりする気持ちも芽生えてくることもあります。

またそのグループワークは、それぞれのケアプランに合わせて、個人の充足感を達成するためのものとして活用していくこともできます。

まとめ

お互いの関係性をどうにかするということを目的とするのではなく、それぞれの心に抱く不足感(寂しさや役割不足など)に対してのアプローチをしていくことで、心が徐々に満たされ、他人のことが気にならなくなったり、受け入れられるようになったりします。

その結果、関係性が悪化せずにすんだり、運が良ければ関係性が良くなることもあります。
そして、ご利用者同士のトラブルも起きにくくなっていきます。



  
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