今回は、認知症が深まり会話が難しくなった方と接するときのポイントをお話いたします。
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認知症の方にどのように接していいのかわからないという方も多くいらっしゃいますが、病気の特性を知り特別な配慮をすれば、もっと接しやすくなります。
それでは、いくつか接し方のポイントをあげてみたいと思います。
認知症の方への接し方のポイント
接するときの自分の表情に気を付ける
認知症の方は、鏡に映った自分を他人だと思うことがあります。
鏡に映った相手が(本当は自分なんですが)険しい顔をしていると、それを見て憤慨され、鏡に向かって怒鳴られることがあります。
逆に鏡に映った相手が笑顔であればさらにニコニコされるということがあります。
たとえ険しい表情をされていたとしても、こちらが笑顔で穏やかに「こんにちは!」というと、ニコッとされる場合があります。
無表情や険しい表情は、相手を怖がらせることになるかもしれません。
穏やかな気持ちだったのが一瞬にして不安やイライラに変わってしまうかもしれません。
自分の表情が相手にとってどのような影響を与えてしまうかを考え、穏やかな表情で接していきましょう。
相手と同じ動作をする
人は自分と同じしぐさや動作をする人に親近感を覚えます。
例えば「ありがとう。」と言うときに手を合わせる人がいたとしたら、こちらも手を合わせて「ありがとう。」という。
相手がお茶を飲むタイミングでこちらも飲んでみる。
これは、相手との波長を合わせるということにもつながります。
相手のことを理解したいと思うとき、バラバラの動きをするよりも、相手のペースに合わせていくことでより一体感が生まれたり、相手の内面に近づくことができます。
動作を真似してみるのですが、なんでもかんでも真似していいというものではありません。
明らかに物まねしているように見えたり、相手に不快感を与えてしまっては、距離が縮まるどころか嫌われてしまうので気を付けましょう。
相手が言った言葉をもう一度繰り返す
認知症の方との会話の中で気を付けたいのは、話をするテンポや声のトーンです。
話をするテンポが速すぎると高齢者は話についていけないことがあります。
声のトーンが高くても話を聞き取ることができなかったり、耳障りになってしまい、気持ちが不安定になってしまうこともあります。
例えば「私は肉がすきなのよ。」と言われたら、すぐに「何の肉が好きですか?」と質問するのではなく、「お肉が好きなんですね。」と相手の言ったことを確認する。
「私困っているのよ。」と言われれば、すぐに「何が?」と聞くのではなく、「困ってるんですか?」繰り返してみる。
相手の言ったことをもう一度繰り返すことは、『受け止めましたよ』という意思表示の表れでもあります。
無意識ではありますが、相手は言葉を受け止められたと同時に、想いも受け止めてもらえたと感じることができるようです。
ただこれも気を付けなければいけないのは、適度に行うということです。
毎回相手の言うことを繰り返していては、「なんなの?私の真似ばっかりして!」となりますし、相手が怒っているときにこちらも同じ言葉を繰り返しても、聞きづらい嫌な言葉の掛け合いになってしまいますので、そういったときはこちらからは明るく穏やかな言葉をかけてあげるようにしましょう。
ジェスチャーで伝える
認知症の方にはついつい指示のような言葉かけが多くなってしまいます。
「こうしてください、ああしてください。。。」
また耳の遠い方に対して大きな声で伝えなければならないときなど、一回で理解されればいいのですが、繰り返し言わなければならない場合、伝えるほうも労力を伴いますし、それを周りで聞いている方も何度も同じことを聞かなくてはならなくなるので、あまりいい気分はしません。
「どうしたらいい?」と聞かれたとき、周りに他の方もいらっしゃるときなどは、ひそひそ声とともにジェスチャーで伝えると、「オッケー!わかった!」とジェスチャーで返されることもあり、これもまた親密度が増します。
二人だけの秘密のやりとりみたいで喜ばれます。
アイコンタクトをとる
目は口ほどにものをいうとありますが、目を合わせてニッコリ笑ったり、お互いにうなずきあったりするのも心地よいコミュニケーションです。
不安な気持ちが強くて、そばに誰かがいないと不安で不安でしょうがないという方が、遠くから目を合わせて笑ったりうなずき合ったりすることで、そばに人がいなくても落ち着かれたということがあります。
人とつながっているという安心感を得られたのではないかと思います。
同じ空間にいても、孤立している状況は大いにあります。
いるのにいないものとして過ごしている状況は孤独感を生みます。
目と目を合わせるコンタクトというのは、お互いの存在を確認し合うことでもあるので、心が通じ合えたり絆が深まったりして、結果気持ちが安定することにつながります。
相手に触れるスキンシップ
背中をさすったり、手を握ったりするスキンシップは人の存在を感じ、温もりや心地よさで安心感を覚えます。
これは気のせいではなく、実際にさすったりマッサージをしたりすると、脳内ではオキシトシンというホルモンが分泌されるんです。
このオキシトシンというホルモンは「幸せホルモン」とか「愛情ホルモン」などと呼ばれていて、分泌されることで幸福感を感じます。
幸せホルモンは血中を通って全身を巡るので、心身の力が適度に抜けて安心感をもたらし、リラックス効果によりストレスを低下させることができます。
ただ、触れるのは誰でもいいというわけではなくて、こういったことはやはり好きな人からされたいものですよね?
性別問わず、一緒にいて居心地のいい、心を許した人からされたいものだと思います。
相手から心を許してもらえるように、スキンシップの前にまずは信頼関係を築いていきましょう。