【認知症介護施設】ご利用者を応援する介護

『ご利用者を応援する』というと、例えば行きたいところへ行くとか、会いたい人に会うとか、ご利用者の夢を叶えるというような大きなことを想像してしまうかもしれませんが、実は日常の中に、応援できることはたくさんあるのです。

介護職員の普段の接し方によって、ただの管理になるのか、それとも応援(サポート)になるのかが大きく変わってきます。

 

例えばグループホームなどで、食後、お膳をキッチンに下げるという行為。
こういった日常の、ほんの些細な行為ひとつでも、介護職員の力量によって、全く異なる結果がもたらされるのです。

歩行が少し不安定な方が物を運ぶという行為を、止めてしまう職員は多いのではないでしょうか?

「落とすと危ないから、私が持って行っときますよ。」と、親切心で声をかけます。

そして、相手の返事も待たずに、お膳を受け取り(取り上げ)、「座っておいていいですよ。」と、相手がやろうとしていることを阻止ししてしまうことも。。。

このときの相手の気持ちを、どうすれば確認できるのでしょうか?

せっかく自分がやろうと思ったのに、取り上げられた・・・という気持ちになる人。
手伝ってもらえて助かった~という気持ちになる人。

職員の声のかけ方や表情によっても、相手の感じ方は変わってきます。
言葉では「ありがとう。」「ごめんね。」「お願いします。」などと言われるかもしれませんが、心の中で感じていることは、はかり知れません。

そもそも、「ありがとう。」や「ごめんね。」を一方的に言い続けなければならない環境に、いささか窮屈さを感じているかもしれません。

 

「自分が食べた後の食器くらい、自分で下げないと・・・」と言われる女性の方も多く、自分で食器を下げたい!という人は、歩行器を使ってでも、ゆっくりゆっくり歩きながら、食器を運ばれる方もいらっしゃいます。

歩行の不安定な方には、スタッフのサポートが必要ですが、それは、代わりに食器を下げてあげることではなく、ご本人が本当にやりたいこと(自分で食器を下げる)という行為を応援するために、歩行の見守りをしたり、安全に食器が下げられるように、何か工夫をすることなのではないかと思います。

 

特に認知症の方は、”今、この瞬間”感じていることがとても大切で、何かに対して強いこだわりをもっていることがあります。

お膳を下げようとするおばあちゃん、行先はキッチンではなく、スタッフルームの方へ歩いていきます。

その時、職員が「どこへ持って行くんですか?台所はそっちじゃないですよ。」と声をかけても、
おばあちゃんは、「いやいや、いいのよ。こっちなんだから。」と職員の言うことには耳をかしません。

職員とおばあちゃんのやりとりは、意思が通じ合わず、ちぐはぐなものになってしまいます。

認知症の方は、間違ったことをしているということを誰かに指摘されたくありません。
とっさに取り繕って、自分は間違っていないと主張されたのかもしれませんし、本当にスタッフルームをキッチンだと思っているのかもしれません。

その方の世界では、スタッフルームがキッチンなのです。
だから、スタッフルーム(キッチン)に食器を下げるのが正解なのです。

 

ご利用者が、食器をどこに持って行けばいいのかがわからなくて困っている様子の時は、「持ってきて下さってありがとうございます。ここからは私が代わりに(お膳を)運びましょうか?」と声をかけてみると、「いいの?そうしてくれると助かる。ありがとう!」と表情が明るく変わることがあります。

声をかけてみて、安心したような表情を見せられる場合はいいのですが、「いや、私が持って行きます!」と切羽詰まったような表情で答えられる時は、
「それじゃあ、お願いします。ありがとうございます。」と伝え、見守ります。

 

「危ないから。」とか「そっちじゃないから。」とスタッフがお膳(食器)を取り上げてしまうと、おばあちゃんの心の中に残るものは、なぜそんなことをするのか!?という職員に対しての不信感と、取り上げられたという喪失感です。

こういった接し方をしてしまうと、ご利用者を応援する介護どころか、不安な気持ち、悲しい気持ち、怒りの気持ちを助長させてしまうことになります。

 

年に数回行うイベント企画で楽しい思いをしていただくことも大切ですが、日常のほんの些細な出来事において、スタッフの接し方次第で、ご利用者を応援することは可能です。

日常の些細な接し方の積み重ねが、ご利用者にとっては、安心感になり、満足感になり、人や状況に対しての信頼になるのではないかと思います。

ご利用者を応援する介護のポイント

声をかけずに、ご利用者の行動を見守る
危険があれば、どうすれば安全に行うことができるかを考え、工夫したり、そばでサポートしたりする
危険がなければ、見て見ぬふりをする
(ご利用者が『誰かに見られている』という気持ちにならないように、隠れて見守るなど)
困っている様子であれば、何か手伝えることはないかと声をかける

黙ってご利用者の行動を見守った結果、例えば食器をスタッフルームに持って行かれたとしても、後でこっそり職員がキッチンに下げればいいだけの話です。
なんの問題もありませんよね?

むしろ、余計な声掛け(抑制や否定)をして、ご利用者をイラつかせ、その方の気持ちが怒りや不安に駆られることの方が問題なのではないかと思います。

ポイントは、ご利用者がやろうとしていることを邪魔しない。
ご本人の今の気持ちが満足するためには、介護者がどのような接し方をすればいいのかを考えて行動していくということです。

【認知症介護】待てばわかる、認知症の人の生活能力

2017年11月6日



  
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