認知症の方は、同じ話を何度も繰り返しされる場合があります。
聞く方としては、ついさっき聞いたことなのにまた同じ話を聞かなければならない、どんな反応をしていいのかわからないということがあると思います。
また、何度も何度も同じ話をされ続けると、どうすればこの話は終わるのか?と思ってしまうこともあると思います。
さっき聞いた話をまたすぐにされる場合、どのような反応をすればいいのでしょうか?
何度も同じ話をされる時の対応
接し方その①
同じ話でも何度でも聴く。
とことん話につきあう。
その人が話したいだけ話させてあげる。
同じ話でも、こちらからの質問を混ぜると、今まで聞いたことのなかったような情報を聞き出せることもあります。
同じ話をされても、その都度こちらからの質問を変えたりすれば、もっと深い内容が聞けたり、話題が少しずつ変わったりすることもあります。
同じ話を聴いていると、なぜ同じ話を繰り返すのかがなんとなくわかってるくるときがあります。
これについての解説はあとで行いますね。
接し方その②
気分転換できるようなことを一緒にする。
一緒に手作業をしたり、家事をしたり、
一緒にお茶を飲んだりお菓子を食べたり、テレビを見たり。
そういった何かに集中できる時間や楽しいと思える時間を過ごすことで、落ち着かない気持ちが満たされることがあります。
接し方その③
話題を変えようとしてもすぐに同じ話に戻ってしまう場合は、「その話もう聞きましたよ~。」と軽い口調で言ってみる。
深刻な口調で言うと、相手も深刻に捉えてしまったり、バカにされていると腹を立ててしまったりするので、あくまで軽い口調で、優しくというのがポイントです。
同じ話を何度も繰り返しされると、イライラしてしまったりするかもしれませんが、「さっきも言ったじゃない!」とか「何度同じ話すれば気が済むの!」などと怒鳴ったりすると、余計に認知症の症状は悪化してしまいます。
すでに聞いた話であることを伝える場合は、嫌そうな顔をせずに、優しく軽く伝えること。
そうすると、「あ~、そうだったっけ?ごめんごめん。あはは」となることもあるかも!?
短時間のうちに何度も同じ話を繰り返され、別の話題に切り替えようとしてもうまくいかない場合は、すでにその話は聞いたことを伝えてみてもいいかもしれません。
ただ、「その話もう聴いたよ。」と言ってその場をすぐに立ち去ってしまうのか、その後も少しそばにいて、何か別の話をしてから立ち去るのかでは、相手の受ける印象は変わってきます。
記憶は忘れても感情は残るので、なるべく嫌な気持ちにさせないことがポイントです。
そして、もう一つ注意が必要なのは、ご自分のお話をされる場合はいいのですが、「あなたは〇〇ですか?」と質問を繰り返される場合もあります。
この時に、「さっきも言いましたよ?」と言ってしまうと、認知症の方としては、「私は聞いていない!わからないから聞いているのに!」と気を悪くされてしまいます。
自分が質問をされているときには、その都度何度も丁寧にお答えする必要があるかもしれません。
実は相手との関係性でも接し方は変わってくるのです。
仲良しの関係であれば、正直に「もうそれさっき聞いたよ~。」と言ってもOK(?)
そうすると、「そう~?あはは。」とすんなり受け入れられることもあります。
「その話もう聞いたよ~」と言っても、嫌味にとられなかったり、相手が嫌な思いをしないような関係性を築けたらいいですね。
すんなり受け入れられるというのは、相手があなたのことを信頼していたり、安心感をもっていたりする証拠です。
実は信頼関係が薄い人ほど「はいはい、わかったわかった。」なんて聞き流して真剣に聴こうとせず、一向に相手との関係性が上向かないなんてこともありますが、(特に介護施設なんかでよく見られる光景ですが)、おしゃべりできるチャンス!お近づきになれるチャンス!と思えたらいいですよね。
なぜ繰り返し同じ話をするのか?
同じ話を繰り返すというのは、認知症の初期によくみられる状況です。
その場合は、記憶障害により単純に話したことを忘れて、すぐにまた同じことを質問したり話をしてしまったりします。
初期の段階では、ご本人も「あれ?これさっき聞いたっけ?」とうっすらと自覚がある場合もあるのですが、不安なので聞かずにはおれず、また同じ質問をするのです。
認知症の方の記憶についてはこちら↓の記事でわかりやすく説明していますので、ご参照ください。
そして、それとは少し別に認知症がもう少し深まった段階で、特定の話を繰り返し繰り返しされることがあります。
それはなにか強迫観念のような病的な繰り返し方のように目に映ると思います。
1分前にした話をまたするというような状況が続くことがあります。
ではなぜ何度も同じ話をしたくなるのかというと、それは、その話(の出来事)がその人にとって何度でも話したくなるくらい重要なことだからです。
思い出深い出来事だったり、今気になっていることだったり・・・
昔の話であれば、その方が何に執着しているのかがわかることがあります。
それは後悔だったり、ショックな出来事だったり、とても楽しい思い出だったり、忘れられない人のことだったり・・・。
話自体は昔の出来事かもしれませんが、その方が何に執着しているのかということから、今のその方に対する自分たちの接し方に活かしていけるヒントを得ることができるかもしれません。
また単純に、誰かに話したい!誰かに聞いてもらいたい!と思って話をしている場合もあります。
私たちも一大事件があると、みんなに言いたくなりますよね?
あれ?この人に話したっけ?と思いながらも、「この前こんなことがあって、あんなことがあってさ~。」と話をします。
そして、ある程度言って回ると満足しますよね?
そしたらもう話す必要がなくなります。
気が収まれば、もうその話題を口にすることはなくなるんです。
初対面の人にはネタとしてまた話してしまうかもしれませんが。。。
その人にとって、とっておきの大切な話(出来事)だと思えたら、なんだかぞんざいにはできないというか、聞いてあげたくなってしまいます。
不安な気持ちが強いときに、それを埋めようとして同じ話をされることもあります。
認知症の方は常に漠然とした不安を抱いています。
同じ話や考えで頭の中を埋め尽くすことで、不安を解消しようとしているのかもしれません。
ある人は、普段は全く同じ話を繰り返しされることはないのに、初対面の人に話しかけるときは「どこから来られたんですか?」と何度も質問され「私の出身はね・・・」とお話が始まり、それを何度も繰り返されることがあります。
いつもと違う人と出会ったり、違う出来事があったりして、少し緊張しているのかな?と思ったりします。
そういったいつもとは違う状況や精神面の時にも同じ話を繰り返されることがあります。
同じ話を繰り返しすることはずっとは続かない
いずれにしても、この同じ話を何度もするということはずっとは続きません。
ある程度心が満足されれば、もう話されなくなります。
この満足というのは、「話をしてスッキリした~」というのとはちょっと違っていて、もう少し奥が深いものです。
自分の話を聴いてくれる人がいるという安心感。
自分の気持ちが浄化されたような満足感。
抱えていた課題が解決されたような開放感。
そういった精神的なものが満たされていくと、繰り返し同じ話をするということは少なくなっていく傾向にあります。
気持ちが満たされているかどうか、こちらもチェックしてみましょう
①人間関係は良好か?孤独でないか?
②役割があって充実感を味わえているか?周りの人から必要とされ、感謝されているか?
③その人の人生で解決すべき課題がないかどうか?
役割や人間関係の良し悪しが、同じ話を何度もすることと何の関係があるのか??と思いがちですが、何かしら寂しさや不安を抱えていたり欲求不満になってくると、また同じ話を繰り返しされることがあります。
同じ話をされるときは、その方の精神面やその方をとりまく環境面がどのような状態になっているのかを考えてみるといいかもしれませんね。