【帰宅願望・徘徊】「帰ります」と家を出ていく認知症の人への接し方

認知症の方は、自分の家にいるのにも関わらず「帰ります。」と出ていこうとすることがあります。
「帰ります」と言ってくださるならまだいいのですが、黙って出て行かれることもあり、目が離せないという方も多いのではないでしょうか。
「帰りたい」という訴えがある時、どのように声をかけてあげればいいのでしょうか?

「家に帰る」と今にも飛び出そうとする時の接し方

接し方その①

「家へ帰ります」というご本人の気持ちを受け入れる。
よくやってしまうのは、「家はここでしょ!どこ行くの!?」と怒って止めてしまうこと。
現実には今暮らしている家以外の家なんてないのかもしれません。
出ていったところで、他に帰る場所なんてないのかもしれません。

でも、その人にとっては帰る場所(帰りたい場所)があるのです。
そして、帰らなければならない理由があるのです。
だから周りの人に帰ることを反対され、止められれば止められるほど、「帰りたい!帰りたい!」という思いはどんどん募っていきます。

外に出るのをやめさせたい、引き止めたいという気持ちはよくわかります。
でも実際引き止めたところで、ご本人が納得しなければ、結局外に飛び出してしまうということの繰り返しになってしまいます。

ですので、帰ることを受け入れる。
具体的には
「帰る!」
「いいよ~。家ってどこにあるの?」
「○○市の△△町」
「遠いね~。送っていこうか?」
などと声をかけて、帰ることに対して肯定的に接します。

会話の中で、その家には今誰がいるのか?家に帰って何をしなければならないのか?など、帰る理由を聞きます。
帰る理由を聞くことで、今の生活に何が足りていないのかがわかることもあるのです。

本人が『ここではないどこか』に求めているもの、今の生活に感じている不満を、今現在の生活の中で解消するにはどうすればいいのかを考えるきっかけになると思います。

ただ、本人の味方になろうとして話を聞いているのか、引き止めたくて時間を稼いでいるのかでは、ご本人に与える印象も変わってきますし、そういったことは不思議と伝わってしまいます。
場合によっては話をしようとしても余計にイライラされてしまうこともあります。

接し方その②

話を聴こうとしても、振り払って外へ飛び出そうとする場合
ついつい外へ出ないようにカギをかけてしまったりするのですが、これは逆効果で興奮が強くなったり、また別の症状が出てくることもあります。
場合によってはどうしてもカギをかけなければならないこともあるかもしれませんが、閉じ込められていると感じると、不安が強くなってしまいます。

外へ飛び出して行ったら、もう、ついて行くしかない。。。
これは体力のある元気な介護者でないと難しいかもしれませんが。。。

しかも、近づいたら「ついてくるな!」と言われることもあるので、そうなったら遠~くから見守りながら後をつけます。
まるで探偵みたいですね。

初めから一緒に歩いてくださる場合もあるのですが、興奮状態の時は大抵一緒に歩くのを嫌がり逃げ出そうとします。
どこかへ連れて行かれると思うからなんでしょうね。

歩いても歩いても帰りたい場所にたどり着けなかったり、道がわからなくて困った状況になります。
そんな様子を見かけたら、声をかけます。
「今からどこかへ行くんですか?」とか、「私もちょうどそこへ行くから送っていきますよ。」とか言いながら、一緒に歩いてみます。
気持ちの興奮がおさまっていたら、「疲れたでしょ?うちに寄って少し休んでいきませんか?」と言って、家に帰ります。

協力してくれる人がいれば、車で迎えに来てもらうのもいいと思います。
偶然を装って、たまたま通りかかったぐらいの方が精神的にも本人の負担が少ないと思います。
本人は、実は心の奥の方では迷惑をかけているということを感じているのです。

一緒に歩くということは大変なことではありますが、そういった行動を共にすると、不思議な連帯感が生まれます。
「歩いて疲れた」という共通の事実が生まれ、お互いに「大変な思いをした」という感情を共有することができます。
そうすると、家を飛び出していった本人から、「あんたも大変だったね。ついて来てくれてありがとう。」「迷惑かけちゃったね。ごめんね。」という言葉をかけてもらえることもあるのです。

本人が『自分のためにこの人(介護者)は親身になって考えてくれる』と感じることができると、少しずつ介護者の言葉に耳を傾けてくださるようになります。
初めは聞き入れてくださらなくて飛び出して行っていたのが、次からは「車で送りますよ。」という言葉を受け入れてドライブになったり、「今日はここへ泊まっていって。明日車があるから送っていきますね。」という言葉を受け入れて、一人で飛び出すことがなくなったりします。

ポイントは、認知症である相手の絶対的な味方でいることです。

あなたは認知症の人にとっての味方ですか?それとも敵ですか?

2017年10月19日

外へ飛び出すのを止めようとしたり、飛び出しても早く家へ連れ戻そうとすればするほど、認知症の人は「自分は誰からも理解されない、自分の味方はどこにもいない」という孤独感や焦燥感が強くなり、残念ながら症状は拡大していく傾向にあります。

介護者である自分の都合に相手を付き合わせるのではなく、認知症である相手に自分が付き合っていくというスタンスでいることが大切です。
「不安な時や困ったときは、絶対に助けるよ。」という気持ちでいると、相手の考えていることがわかるようになり、自然と相手が望むような行動ができるようになります。

接し方その③【番外編】

そうは言ってもどうしても引き止めたい場合もありますよね。
今はちょっと付き合えない。
今出て行かれたら困る。。。という時があると思います。

そんなときは、引き止め方(言葉の選び方)に気をつけながら、自分の気持ちを伝えます。

私がご利用者に「帰る!」と言われたときは、開口一番「帰っちゃうんですか?寂しい!」と言っていました。
相手が興奮状態の時には、言葉を聞き入れてもうらうことは難しいのですが、話ができる状態であれば、『あなたがいなくなると私がさみしい思いをする』ということを伝えます。
そうすると、少しずつ気持ちが穏やかになって、帰らなくてもいい状態になることもあります。

「今帰れないから。」などと強引に引き止める場合、ご利用者からすると、なぜ自分が引き止められているのかがわかりません。
『今出て行かれたら、こっちが困る』という介護者の気持ちがなぜか伝わってしまいます。
迷惑行為をしているというレッテルを貼られたように感じてしまい、なんとも言えない居心地の悪さを感じてしまうのです。
だからより一層、こんなところには居られない!となってしまいます。

『あなたがいなくなると私がさみしい思いをする』というのは、その人の存在を必要としているということを伝えています。

認知症の人は自分が相手から必要とされていると感じることができると、自分はここに居ていい、ここに居る必要があると、少しずつ気持ちに変化が現れます。

それでも「帰る」と言われる場合でも、「あんたにはお世話になったけど、もう帰らないといけないのよ。本当にありがとうね。」と穏やかに言われます。
「本当に帰っちゃうんですね。残念。。。」と伝えると、「じゃ、元気でね。本当にありがとう。」と静か~に出て行かれます。

結局後からこっそり追いかけるのですが、強引に引き止める時と比べて、ホームに戻ってきたときの表情がまるで違います。
「ただいま~。」と晴れやかな表情で帰ってこられることが多く、気持ちの満足度が伺えます。

なぜ「家に帰る」と言うのか?

「家へ帰る」=「ここにはいたくない(居心地が悪い)」=「ここは自分のいるべき場所ではない(居場所がない)」となるのではないでしょうか。

「家に帰りたい」というのと同時に思うのは、「『あのころ』に帰りたい」という思いなのではないかと思います。

帰りたいと願う『あのころ』とは人生の中で自分が幸せを感じていた時期、楽しかった時期です。

お父さんやお母さんに愛されていた子供時代かもしれません。
元気にバリバリ働いていた青年時代かもしれません。
小さな子供たちを育てていた若かりし母親時代かもしれません。

ではなぜあの頃に帰りたいと思うのでしょうか??
それは、今の自分自身や、自分の周りで起こっていることを受け入れることができないからです。

誰からも必要とされていないと感じれば、必要とされていたあの頃に帰りたいと思うでしょう。
誰の役にも立てていないと感じれば、あの人の役に立っていたと感じるあの頃に帰りたいと思うでしょう。
誰からも愛されていないと感じれば、愛されて可愛がられていたあの頃に帰りたいと思うでしょう。
また自分が愛する人と一緒に暮らしていたあの頃に帰りたいと思うでしょう。

年をとって感じるむなしさやさみしさ、体や頭が思うように動かない苛立ち。
こんな自分では、誰の役にも立てないし誰からも愛されない。
そんな思いを抱えているのではないでしょうか?

周りの人たち(家族や友人介護職員)ができること

認知症の方が心の葛藤を抱えているときに周りの人ができることは、そのままのその人を愛してあげること。
今のままでいいんだよ。
いてくれるだけで私たちは嬉しいよ。
一緒にいられて幸せだよと言ってあげること。

そして、周りにいる人たちがご本人から頼りにされ、愛されること。
ご本人から「あなたがいてくれるのなら・・・」と思ってもらえたら、それは居心地の良さや安心感につながります。

また、その方が少しでも活躍できる場を作ってあげることも大切です。
生活に充実感や安心感が生まれれば、表情が変わってきて、言葉が変わってきて、行動が変わってきます。

介護施設での帰宅願望

介護施設にいて家に帰りたいというのは、ごく自然な感情だと思いませんか?
それを「帰宅願望あり」とまるで問題行動があるかのように言ってしまうことがあります。

自分の家にあるもの、自分の家にいる人、出入りする人たち全てに愛着があります。
箸ひとつ、茶椀ひとつ、家の匂いまでもが心をホッとさせる要素です。
「家がいい」というのはあたり前の感情。

でも、不本意ながらも施設で生活しなければならなくなったとしたら??
「本当は家がいいんだけど、でもまぁここ(施設)も悪くないし、ここにいてもいいかな」と思ってもらえるような居心地のよさを感じてもらえたらいいですよね?

どうすれば居心地の良さを感じてもらえるか??
・家にいた時と同じような生活習慣で過ごせる、またはそれ以上の楽しみがある。
・家にいた時と同じような家具やなじみの道具に囲まれて生活できる、またはそれ以上の心地よさを感じられる。
・家にいた時と同じような人間関係(家族・友人)が保てる、またはそれ以上の人間関係の幅が広がる。

以前の生活習慣を大切にする一方で、施設に入ったら施設のルールがあるのも事実です。
その新しいルールにどれだけ慣れることができるか。
新しい人間関係にどれだけ慣れることができるか。

新しい生活を始めるときには順応する必要があり、適応力が求められます。
それを本人にだけ求めるのではななく、居心地のよさを感じてもらえるように周りの人たちがサポートすることも必要だと思います。
「そりゃ~家がいいよね~」と口で言うだけで、何の取り組みもせずに諦めてしまわないこと。

家と環境設備が全く違う、だけど「あんたがいるからここも悪くない」と思ってもらえるような頼りにされる存在になれるといいですね。
物質的な環境が整わなくても、たったひとりの人間でも相手の心を変えることができます。

理想は「家に帰ってもいいし、ここ(施設)にいてもいいかな」と思ってもらえる状態になればいいですよね。

どんな症状にも共通している!?認知症の周辺症状(BPSD)へのケア

2017年11月2日



  
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