大きな声で秘密をばらす介護職員
高齢者には大きな声でゆっくりお話をすると聞こえやすい、ということもあり、介護職員の声は大きくなってしまう傾向にあります。
介護施設では、時に思いもよらないようなことが起こります。
特に認知症の方は、トイレではないところで排泄をしてしまったり、ズボンがすり落ちた状態で廊下を歩いてしまったり。。。
そんな光景を目にした時に、いちいち大声で指摘をする介護職員もいます。
「〇〇さん!そこはトイレじゃないですよ!」
「〇〇さん!ズボンが下がっていますよ!」
そんな大きな声で伝える内容は、廊下の反対側にいても聞こえてしまっている。
わざわざ他人の恥をさらす必要はどこにもない。
しかし、介護職員は日常茶飯事に他人の恥を周りのみんなに公表している。
おそらく、驚いた反動で大声を出してしまうのでしょうが、そこをグッとこらえる必要があるのではないかと思うのです。
ズボンがずり落ちているのを見たら、そっと傍に寄って、小声で(ご本人にだけ聞こえる声で)「ズボンあげてもいいですか?」と伝え、ズボンをあげるお手伝いをする。
トイレではない場所で排泄をしようとされているときは、間に合うようなら、そっと「こちらです。」とトイレへご案内する。
間に合わないようなら、他人から見られないように、バスタオルなどで覆ったりするなどの配慮する。
何事もなかったかのように、静かに事をすすめるのがカッコイイ。
介護職員の言動や行動は、ご利用者から本当によく見られています。
直接介助をしている、目の前にいるご利用者だけでなく、周りで見ているご利用者からもよく見られています。
どのような表情で、どのような言葉をかけ、どのような態度で接しているのかを見られているのです。
介護職員に必要なさりげなさ
ある食事会の時に、目の前に置かれたケーキの上に乗っている生クリームを手に取り、手を洗うしぐさをされた方がいました。
そして、それを見た新米の介護職員は、「わー!!〇〇さん!それは石鹸じゃないですよ~!」と声を張り上げてしまいました。
その結果、その人に注目が集まってしまいます。
他のご利用者は、クスクス笑ったり、あらあら、あんなことして・・・と苦笑いしながら見ています。
お笑い芸人ならば、人に注目されて、笑われることをおいしいと感じるかもしれません。
だけど、戦後を生き抜いてきた真面目なその人(男性)は、人に笑われることをおいしいなんて感じていない。
バカにされたと感じる。
幸いその方は自分が笑われていることには気が付いてはいませんでした。
別の職員がすばやく、そしてさりげなく、その方におしぼりを渡します。
おや!?と思う光景を目にしたら、それを声に出す必要はない。
みんなの前で注意したり、否定したりする必要もない。
その方のためにできることを、静かに素早くやる。
そのさりげなさが大切。
私たち介護職員の役割は、ご利用者の失敗を周りのみんなに露呈することではなく、何事もなかったかのようにさりげなくフォローすることなのではないでしょうか。
無意識の内に大きな声で言ってしまっていることもあります。
想定外のことが起こって驚いてしまい、「わー!〇〇さん!・・・」となってしまうこともあります。
言葉を発する前に、ちょっと我慢してみる。
驚いたことが起こったら、声には出さず、心の中で「おっと~!これは・・・!」とつぶやいてみる。
そして状況を冷静に見るようにする。
自分で判断できない場合は、先輩や同僚にそっと伝えに行きましょう。
この時も、けっして大声を張り上げないように気を付けます。
なるべく周りに知られないように、そっと対処するために。
ついつい余計な一言を言ってしまう介護職員の癖
介護職員にもいろいろな人がいます。
指導的な人、管理的な人、世話やきな人、などなど。
食事中に席を立つと、「まだ残っていますよ!」と子供に言うみたいに声をかける人。
空のお皿を見て、無意識のうちに「全部食べられましたね」という人。
体調不良などで、ごはんが食べられなかったのがようやく食べられるようになって、「良かったね!」という、喜びを共有するために声をかけるなど、意味があって言うのには問題ないと思いますが
そうではなく、無意識のうちに、癖で「全部食べてるね」とか、「これ残してるじゃない」とか、何か一言言って下膳をする人。
それ、言う必要ある??ということがたくさんあります。
ちょっと違うかもしれませんが、
私たちがレストランに行ったときに、ウエイトレスさんから「全部食べられましたね!」と言って片づけられたら、なんだか「ん?」と感じますよね?
ましてや、残したものを「これ残ってますよ」とか言われたら、「えぇ、そうですけど。だめですか?」となってしまうと思います。
介護が必要な方は、目が見えにくかったり、認識がしにくいということもあるので、そういった方には、声掛けが必要な場合もあるかもしれませんが、そうでない場合は、余計な一言は言わなくてもいいのでは??と思ったりします。
実際ごはんを残して、それを介護職員に指摘され、「ごめんなさい。おなかがいっぱいで・・・」と謝られる方もいらっしゃいます。
食べられるだけ食べたらいいのに。。。
謝る必要なんてないのに。。。
そういった違和感は、介護現場に長くいると忘れてしまうことが多いです。
自分がされたらあまり気持ち良くないことを、平気で人にしてしまったりします。
介護現場では、ご利用者と職員は、家族や友達のような親しい間柄になることが多いために、心配の一つの表現として、このようなことが起こるのかもしれません。
また、『介護が必要な人』という特別な、悪い意味での特別な見方をしているため、自分よりも下に見てしまって、このようなことが起こるのかもしれません。
サービスとして考えると、、、
一般的なサービスと比べてみると、かなり失礼なサービスをしてしまっている。。。のではないかなと思うのです。
しかもお金をいただいてまで。
黒子のようなサポート術とは?
黒子とは、歌舞伎や人形浄瑠璃で、役者や人形遣いを助けたり、小道具を役者に渡したり舞台から下げたりする係で、黒い頭巾をかぶっている、あの人たちです。
表立って目立つことはないけれど、陰で物事を処理する大切な役割の人たち。
口をつむぎ、存在感をなくし、ササササっと動いてサポートする。
あれ?いつの間に?というくらいに、周りが気づかないうちに、トラブルが解決していたり、いろんなことがスムーズにうまくいっている。
そんなサポートの仕方がカッコいいなと感じています。
ただ、いつもいつも黒子になる必要はないと思っています。
ご利用者と会話をするときには、楽しく笑い合いながら大声でも話したらいいと思います。
しかし、ここぞ!という時の手助けやサポートは、黒子になる。
そんなさりげないサポートの仕方を目指しています。