介護における自立支援ってどういう意味?

介護の仕事を目指す人や介護の勉強をしている人であれば、「自立支援にの考えに基づいた介護」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。

この『自立支援』ってどういうことなのでしょうか?

介護でいう「自立支援」ってどういう意味があるのですか?

介護施設等の理念にもよく出てくる自立支援。

文字を見る限りでは自立を支援すると読み取れますよね?

介護が必要になった方にとっての自立ってなんなのでしょう?

できないことが自分でできるようになることでしょうか?
全て自分でできることなのでしょうか?

それでは、重度の介護が必要になった人の自立って?
年月が経つにつれてどんどん介護が必要になって、他者のサポートが必要になっても、自立支援という言葉は使われます。

介護現場で使われる自立支援とは、「ご本人が生きたい生き方を介護者が支援すること」なのではないかと考えています。

障害を負っていて体が動かせなくても、意思の決定権がある。
認知症のために判断や理解することができなくても、その方の「好き・嫌い」「快・不快」の感覚を尊重して、気持ちに沿った支援ができる。

介護が必要になった方々は、何もできないわけではありません。

何かを自分で決められたり、選ぶことができたり、好き・嫌いをちょっとした表情で発信できたり、言葉や行動や表情で、介護者に絶えず発信し続けています。

そのサインに介護者が気づくかどうかです。

ご本人の気持ちに沿った支援というのは、ご本人の気持ちを知っていることが大前提となります。

「もう話せないから、気持ちを知ることはできない」という言葉をよく耳にしますが、言葉以外のサインからも相手の気持ちを察することはできるはずです。

ちょっとした介護の場面でも、これは心地よさそうだなとか、これは嫌そうだなとか、相手の反応から察して介護方法を変えることもできるはずです。

そういった言葉以外でのコミュニケーションや介護方法の創意工夫などが、「ご本人の生きたい生き方」を支援することにつながるのではないかと思います。

介護者の一瞬一瞬の関わりが、ご本人にとってのその日の過ごし方となり、日々の過ごし方がその方にとっての人生となります。
生きたい生き方を支えるためには、今この時、この瞬間の関わり方を大事にしていなかければならないと思います。

介護者の先回り

介護者はご本人ができるのにも関わらず、最初から最後まで全部をやってしまうことがあります。

すべてを誰かがやってしまうと、すぐに何もできなくなってしまいます。
何もしなくていいというのは確かに楽なのですが、物足りなさを感じることがあります。

子供であれば、親が何でもしてくれるのは当たり前だと思うかもしれません。
親や周りの大人たちが世話をしてくれるのは、とても楽なことだと感じるかもしれません。

でも、介護者が接する高齢者は今まで家族のために働いてきたお父さんかもしれませんし、家族のために世話をやいてくれたお母さんかもしれません。
何でも自分で自分のことはやってきた、一人暮らしを続けてきた方かもしれません。

一度役割を担った経験の方が、もう何もしなくてもいいとなると、なんだか役割不足というか、寂しさを感じてしまいます。

体が不自由だったり認知症だったりで、人のサポートを必要としている方たちも、できることはたさくんあります。

ご本人ができることや、やりたいと感じていることは、他人が奪ってはいけないと思っています。
介護者は良かれと思ってやっていることでも、ご本人から大切なものを奪う環境を作り上げてしまっているのかもしれないと思います。

もちろん、自分でできることでも人に手伝ってもらうことが嬉しいと感じる人もいます。

私は介護場面で「待つ」ということを心がけていました。
そうすると、できることやできないことがより一層見えてきたり、本当に手助けを求めている時や相手の気持ちががわかるようになりました。

自立支援という名の放置支援

自分でできることはやってもらおう!本人が自分でできた!と思えるような支援の仕方をしよう!というのは、とてもいい関わり方だと思います。

でも、中には「自分でできるんだから、私たちは手伝うべきではない。自分でさせなければいけない。そうでなければ自立支援にはならない。」と思っている人も多いのです。

介護は人と人との関わりで成り立っているものです。
信頼関係が何よりも大切です。

ご利用者から「あの人はなんで手を貸してくれないのかしら?冷たい人ね。」と思われていたとしたら、その方との信頼関係は築けるでしょうか?
介護者は指導員ではありません。サポーターです。
「ご本人の生きたい生き方」を実現するためには、肩を組み足並みを揃えて歩む二人三脚のような関係性が必要です。

自立支援と不親切は違うと思っていて、その違いを説明するのは少し難しいのですが、相手の気持ちがどういう状態にあるのか?というところにポイントがあるのではなかと思います。
自分でやろうとしていることを、介護者であるこちらが阻んでいないかどうか?
本当は人に頼りたいと思っているのに、その気持ちを見て無ぬ振りして、手を貸さないでいないかどうか?

介護の目的は、悪いところを治すとか、動かない手を動くようにするとか、自分で何でもできるようにするということではありません。
人のサポートを得ながらでも、自分らしく生きていくことにあります。

人に頼ってもいいということなんです。
介護者は、ご本人ががんばりたいときはがんばらせてあげればいいし、頼りたいときには頼らせてあげればいいと思うのです。

そのバランスがあるからこそ、困ったときには頼れる人がいるという安心感が生まれるし、生活が安定するのではないかなと思います。

自立と依存のバランス、とても大切です。

人の性格によっても違うし、頑張り屋さんの人がいたり、甘えんぼさんの人がいたり。
日によって、また時間によっても、自分でできるときとそうでないときがあります。

そのときの状況や人の性格に応じて、自分が相手から何を求められているのかを考えて判断していく必要があるのではないでしょうか。



  
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