認知症が深まってくると、単語が正確に出てこなかったり、人との会話がかみ合わなくなったりして、話をすることが億劫になってしまいがちです。
そして徐々に口数が減り、無口になってしまう方も多くいらっしゃいます。
気分的なもので発語が減る方もいれば、脳の前頭葉や側頭葉にある言語中枢に障害を受けて言葉が話せなくなったり、言葉が理解できなくなってしまう方もいます。
ごはんを食べない認知症の人への接し方という記事の中で、ごはんを食べるための筋肉とおしゃべりするための筋肉は同じであるというお話をしました。
話すという行為と食べるという行為は密接に関係しているんですね。
口数が少なくなってきた認知症の人への接し方
たくさん話をしてもらえるように、たくさん話しかければいいのでは?と考えがちですが、実はたくさん話しかけることでストレスを感じてしまう方もいらっしゃいます。
こちらから話しかけてみてお話してくださればいいのですが、何か質問をしたとしても、「さぁ?私にはよくわからないんです。」とか「もう忘れました。」と返されることも多いと思います。
そうすると、そこからなかなか話が進まないこともありますよね。
また、人と話すことが億劫に感じている人であれば、自分が質問に答えられないということでストレスを感じてしまうかもしれません。
しつこく話しかけると、「もう!わからんよ!」とイライラされてしまうこともあります。
そこで、どうすれば声を出してもらえるかというと、一番の方法は歌をうたうことです。
なかには歌が苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、子供の頃に習ったような馴染み深い歌であれば、他の人が歌っているとついついつられて口ずさんでくださることもあります。
歌の歌詞を見ながらだと、さらに自信をもって歌うことができますし、全部は歌えなくてもサビの部分だけでも声を出して歌ってくださることもあります。
また、人が歌っているのを聞いているだけでも、楽しい気分になったり表情が明るくなったりすることがあり、その結果、歌会の後には笑顔や口数が増える場合もあります。
相手の「感情が動く」ということを意識して接すると、表情が変わったり言葉を発したりされることが多いように思います。
もう一つは、こちらが言う言葉や音を真似してもらうという方法もあります。
「私の真似をしてください」と伝えて、後について言ってもらう方法もありますが、それができない方には、真正面から向き合い、ゆっくり大きな口を開けて「お‐は‐よ‐うー」と言うと、同じように口を開けて音を真似してくださることがあります。
食べるためのトレーニングに嚥下体操がありますが、これは話をするためのトレーニングとしても効果があります。
認知症の症状により単語を忘れていってしまうことは、残念ながらその進行を止めることはできません。
ごはんを食べる機能や話をする機能もいつかは衰えていきます。
私は個人的に、あまり機能訓練等を重要視して行う方ではなく、上記のことは日常の中でお年寄りの方々と向き合いながら自然にやっていたことです。
これは機能訓練だ~と気合を入れてやっているのではなく、後々考えてみるとこの行動は機能訓練になっていたなと感じる程度です。
機能訓練を意識してやってみるのもいいですし、特に意識せずとも何かやってみると、あとから結果がついてくることもあると思います。
普段何気なくやっていることでも、深く掘り下げて考えてみるとしっかりとした根拠があることなのかもしれませんね。