介護施設での夜寝られない認知症の人への接し方【不眠改善】

介護の仕事で夜勤をしていると、ご利用者の中には眠れない方もおられ、お相手をすることがあります。

認知症でも症状が浅い方であれば、夜だという認識があるので、ベッドの中で横になって過ごしたり、自室でテレビを観て過ごされたりするのですが、症状の深い方の場合には、部屋から出て歩き回ったり、他者のお部屋へ行ってみたり、突然ごはんが食べたいなどという方もいらっしゃいます。

また、その方が転倒の危険性が高い方であると、職員はずっと付きっ切りでいなければならないので、他の方のケアになかなか入れないということもあります。

ご利用者が眠られない場合の介護職員の行動

ご利用者が眠られない場合、選択肢は二つあります。
一つは、夜寝てもらうように支援する

もう一つは、眠れないのであれば無理に寝なくてもいい。その人の今の状態をそのまま受け入れ、起きているその人に付き合うという支援

 

夜眠れなくて、自室でテレビを観て過ごされる方に対しては、ご本人がそれでいいと考えている場合、無理に寝ていただこうと支援することは稀だと思います。
ご本人が眠れないことを気にされ、眠りたいと要望されて初めて、対応策を考えるのではないでしょうか。

この場合、夜の過ごし方は人それぞれだと、受け入れることができると思います。

 

しかし、認知症の深い方に対しては、起きていることで、自分を含め、他者に影響が出たり迷惑がかかる行為をされる場合は、正直寝てほしいと思ってしまいます。

介護職員の本音としては、夜間ぐっすり寝てもらった方が断然仕事をするのにもラクなので、「お願いだから寝てちょうだい」と思っています。

介護職員の中には、そのままのその人の状況を受け入れ、眠れないその人に付き合うという介護職員と、「自分は付き合いきれない、夜勤がつらい!」という職員もいます。

ご利用者に寝ていただく支援方法をご紹介する前に、まずは眠れないご利用者との付き合い方についてお話したいと思います。

眠れないご利用者との付き合い方

眠れないからといって、すぐに睡眠薬を使わずに、眠ることができないその人をそのまま受け入れ、お付き合いするというケアを行っている介護職員さん、または施設も多いと思います。

今からご紹介する方法は、あくまで私の経験上の一例です。
眠られない方がいらっしゃると、私はいつもこの方法でお付き合いしていたのですが、施設の建物の構造や規模も異なりますし、ご利用者の性格や認知症の症状等も異なりますので、参考になるかどうかはわかりませんが、ご紹介させていただきます。

 

通常夜勤中は、スタッフルームやリビング等を拠点にして、そこで記録を書いたり、事務仕事をしたりすると思います。
でも、眠られないご利用者がいる場合、そして、その方が転倒のリスクが高い等で見守りが必要な場合は、その方のお部屋にお邪魔して、その部屋を拠点に動くようにします。

その方のお部屋から他利用者の介助や見守りに出かけ、またその方のお部屋に帰ってきます。
記録や事務仕事等もその方のお部屋で行います。

一緒にテレビを観たりお菓子を食べたりして過ごすこともあるのですが、お互いの存在に慣れてくると、同じ部屋にいるのにも関わらず、別々の行動をしていても全くお互いの存在が気にならなくなります。

見守りをしなければならない!と、気を張っているととても疲れるのですが、同じ空間にいても相手の存在を特に気にしなくなったり(いい意味で)、自分の仕事の合間に横目でちらっと見守りをする程度だと、特に疲れを感じなくなります。

相手に対してこうしてほしいだとか、相手をコントロールしようとする気持ちが強ければ強いほど、それがうまくいかなくて疲れてしまいます。
「寝てほしいのに寝てくれない」というフラストレーションが溜まっていきます。

でも、いい意味で相手の存在や行動が気にならなくなると、自分が影響されることも少なくなってきます。

相手の行動を気にしない、見て見ぬふりをする(よほど危険なことがあれば声をかけたり、行動を修正したりしますが)、そういった見守りの仕方をすると、お互いに自由さを感じます。

ただ、同じ空間にいる、ということが大切なような気がしています。

一人部屋で起きている、ゴソゴソしているその方を、外で扉の隙間から見守る、ではなく、同じ部屋の中にいて、お互いに別々なことをしていたとしても、空間や時間を共有しているということが、何か意味があるのではないかと思います。

部屋に私がいることで、その方も歩き回らずに座って過ごされます。
時々話しかけられたり、ボーっとしたり・・・。
そのうち、私の存在に飽きたのか、それとも人の存在に安心したのか、休まれるようになります。

眠れるための支援として、下記でも詳しくお伝えしますが、足浴をしたりホットミルクを飲んでいただいたり、心が落ち着くヒーリング音楽をかけたりもします。

 

また、ベッドに横になられたら、ベッドサイドに座って布団の上から体をさすったり、優しく背中をトントンとしたりすると、眠られることもあります。

そして入眠されたら、そっと部屋から出ていきます。
※ご本人が眠られるまで付き合うというのは、介護施設だからできることだと思います。在宅での家族介護などは、次の日に仕事だとか、予定があったりするので、介護者もしっかりと眠る必要があります。決して無理をしないようにしてください。

 

部屋はとても居心地のいい空間を作ります。
じゅうたんやソファー、またはダイニングテーブルなどを置いたり、テレビやラジオ、雑誌などを置いたり。
その方の思い出深い品々を自室に置きます。
もともと暮らされていた家から引っ越しという形で、そのまま家具を持ち込んでもいいと思います。

介護職員主導の部屋にその方がいるのではなく、その方の空間に介護職員がお邪魔させていただいているという感じです。

そうすると職員も、「人の家に来ているけど、なんだか居心地のいい空間」という感じで、その部屋にいるのが好きになります。
事務的で殺風景な部屋よりも、温かみのある家具やリラックスできる品々がある方が、断然居心地がいいです。
その方と一緒に過ごす空間や時間(夜勤)が好きになってきます。

※転倒リスクの高い方には、センサーを設置させていただき、早期発見にも努めます。

怖い夜勤を克服!夜勤が上手にできるコツ【事故防止と早期発見】

2018年3月21日

認知症の方の気持ちの判断

本人が眠りたくても寝れなくて、気持ちが落ち着かずにソワソワしてしまうのか、それともただ起きて過ごしていたいのか、意思を確認することができない場合は、どのように判断すればいいのでしょうか。

認知症の深い方に対しては、夜眠れないことがその方の生活全体にどのように影響しているのかをみて判断します。

例えば、夜眠ることができないために、昼間眠気が強くて、食事や水分摂取がままならない。
脱水症状を起こし夜間せん妄となって、さらに夜興奮して眠れないなどの悪循環になっていないか、眠れないことで、イライラが募っていないかなど、ご本人の様子を見ていきます。

逆に、介護者から見て睡眠が浅いとか短いと感じていたとしても、ご本人はケロッとしていたり、生活になんの支障もない場合は、それがその方の普通だと判断します。

 

また、寝ていただく方向で支援する場合、介護者の精神的な負担を考慮することも否めません。

経験によっては、力量や許容量も異なりますし、精神的に負担を感じる大きさも異なります。
ご利用者が寝てくれなくて、夜勤が大変でつらいと感じているスタッフは、睡眠薬の使用を希望したりもします。

睡眠薬の使用に関しては、介護職員の中でも意見が分かれるところだと思いますが、このことに関してはまた別の機会にお話ししたいと思います。

夜寝てもらうように支援する方法とは?

夜の演出をする

よく、昼間と変わらないテンションでご利用者に話しかける職員さんがいます。
そして、ご利用者が寝てくれないんです・・・。と悩んでいるのですが、

あなたのテンションが本人を覚醒させているんですよ。と思うのです。

夜を演出するとは、ご利用者に夜であることを意識してもらうことです。

・テレビの音量を昼間よりも小さくする
・話す時の声の大きさやトーンを下げる
・落ち着いた雰囲気を作る
・照明を少しずつ暗くする

昼間と同じような大きな声で話しかけたり、大笑いしたりして、どんちゃん騒ぎのようなことをしてしまうと、どんどん活性化され、目が冴えてしまいます。

まずは、自分の出す雰囲気や環境などを意識してみましょう。

足浴をする

<足浴の効果>
足を温めることで体全体の血流が良くなります。
そうすると、副交感神経が優位にはたらき、気持ちが落ち着いたり、誘眠効果がもたらされます。
香りのいい入浴剤や保湿剤などを使うと、一層気持ちよく足浴ができます。

足浴のやり方
1.40℃前後のお湯を用意する
※足が冷えて冷たくなっている場合や、心臓への負担が懸念される場合には38℃くらいにしましょう。
2.10分~15分程度足をつける
※バスタオルなどで足を覆うと、保温効果があります。
湯が冷めやすい場合は足し湯をしますが、一旦バケツから足を外に出して足し湯をするなどし、やけどをしないように気を付けてください。
3.必要に応じてマッサージなどを行う
4.発汗などがある場合は、汗をしっかりと拭きとり、水分摂取を行う

お湯を準備するのが大変だという場合には、遠赤外線の足温器もおすすめです。

ホットミルクを飲んでいただく

寝付けない時にホットミルクを飲むと、寝つきが良くなります。
効果に個人差はありますが、私の経験では、あるご利用者の場合100%寝ていただけた例がありました。
でも、他の職員の時には100%ではなかったので、その方との関係性によるものなのかもしれませんが、飲むのと飲まないのとでは、その方の気持ちの落ち着き方が違ったように思います。

<温められた牛乳を飲む効果>
・体を温めることで、緩和しリラックスできる
・牛乳の成分「トリプトファン」が、体の中で「神経をリラックスさせる物質」や、「睡眠を促す物質」に変化する

ホットミルクの作り方
1.マグカップに牛乳を入れる
2.レンジで1分から1分半温める
※牛乳の量によって異なります。お好みの温かさになるまで調整してください。
また、お好みではちみつまたはお砂糖を適量入れてもおいしいです。

アロマ

リラックス効果のある香りや、誘眠効果のある香りを嗅ぐことで、寝つきをよくすることができます。
香りで眠れる環境を演出することができます。
ただ、認知症の高齢者には、危険のないように使用することが大切です。

例えば、アロマストーンなどは、大きさや種類によっては誤って口に入れたりすることもあります。
また、温めて使用するアロマランプや火を使うタイプのものも誤って触れる危険性があるので避けた方がいいでしょう。

おすすめは、ディフューザーです。
派手に色のつくものは気になって、眠れないということもあるかもしれませんので、木目調の物を選ぶといいかもしれませんね。
こちら↓は加湿器も兼ね備えたディフューザーです。

良い香りに包まれて、リラックスすることができます。

ヒーリングの音楽をかける

自室でヒーリングの音楽や、オルゴールの音楽を小さな音でかけます。
ご本人の好みに合ったものであれば、気持ちが落ち着いて呼吸が深く安定していくことがあります。
好みに合わないものは、ただ「うるさい。」となってしまうので、音楽をかけた時のご本人の表情や言葉などをよく観察してみましょう。

ユーチューブでも様々な音楽がアップされていますので、チェックしてみてください。

添い寝をする

部屋で一人になると、とても寂しいという方がいらっしゃいます。
寂しさは不安に変わり、心臓がドキドキしたり体が緊張してきたりします。

ベッドに横になった時には少し眠気があったのに、次第に心や体が緊張しだして目が覚醒して、起きてきてしまうということがあります。

眠りにつくまで、一緒に横になったり(スペースがあれば)、ベッドサイドで体をさすったりすると、安心して休まれることがあります。

日中の過ごし方を見直す

日中の活動が少なく、ウトウトして過ごすことが多いため、夜間は目が冴えてしまうということがあります。
いわゆる昼夜逆転の状態ですね。
昼間心と体が休息状態なわけなので、夜は目が冴えて眠れないというのは当然のことだと思います。

夜寝るかどうかだけを考えるのではなく、日中どんなふうに過ごしているのかを見直してみることも必要です。

せん妄の予防

眠れない原因として、夜間せん妄になっている場合もあります。
夜間せん妄については、下記の記事をご参考ください。

認知症によく似た症状が起こる【せん妄】って何?

2017年12月11日

水分摂取が難しい認知症の人への接し方

2017年12月14日
睡眠導入剤の使用

薬はうまく体に合えば、生活が安定することがあります。
ただ、薬が合わなかったり調整が難しい場合もあり、薬を飲んでも全く効かないだとか、逆に効きすぎて日中まで強い眠気が続くこともあります。
薬を服用した影響が生活にどのように影響するのか、十分に観察をしながら主治医の先生と相談をして慎重に使っていきましょう。



  
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