【介護施設】夜寝られないご利用者に対しての睡眠薬使用の是非

介護の仕事で夜勤をする時に、夜寝られないご利用者がおられ、施設内を歩き回ったり、歩くことができないのにベッドから降りようとされる場合があります。

そのご利用者が転倒のリスクが高い方だと、ずっと付きっきりでいなければならないので、夜勤者にとっては心労になります。

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そこで提案として挙がるのが、睡眠薬を服用してもらってはどうかということ。

職員によっては、反対意見と賛成意見とに分かれるところだと思います。

睡眠薬使用に関しての賛成派と反対派の意見

<睡眠薬賛成派の意見>
・本人が寝られなくてつらそう
・夜は寝てもらうのが普通なんじゃないか?
・生活のリズムが作りたい
・夜勤が大変だから寝てほしい(見守りしきれない)

<睡眠薬反対派の意見>
・薬に対していいイメージがない(夜間トイレにも起きられないほど爆睡する、日中もなんだかぼーっとしている、生活の質が低下する)
・薬を使わなくても関わりで寝てもらうことができる、簡単に薬に頼りたくない
・介護者の都合で強制的に眠らせるようなことをしていいのか?

などなど、それぞれ様々な思いがあります。

睡眠薬を服用するとどうなる??

睡眠薬を服用すると、どのような経過がみられるのでしょうか。

<睡眠薬を使った場合のパターン予測>
パターン1.薬が合って、夜ぐっすり眠ることができ、生活リズムができる ←これが理想的
パターン2.足元がふらふらして、転倒のリスクがさらに高まる ←転倒事故が起こる事例も
パターン3.服用しても薬が効かない⇒眠れないことに困り、強い薬に変わる ←薬が効かなかったり効きすぎたり、丁度いい感じにはならない
パターン4.薬が効き過ぎて、日中もウトウトする⇒食事もままならないほど ←行動力が低下し、生活の質も下がってしまう(最悪のパターン)

薬が合えばいいのですが、合わない場合はご本人の体や生活に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。

また、一時的に薬が合ったとしても、次第に薬が効かなくなり、どんどん強い薬に変わっていき、その結果、結局は生活の質が低下して寿命を縮めてしまうこともあります。

寿命を縮めるというのは、大げさなことでもなんでもなく、高齢者にとってはごはんを食べる量が減ったり、体を動かそうとする意欲、感情を表に出そうとする意欲が低下したりすることは、寝たきりのきっかけになってしまうからです。

 

こういった薬を服用した場合の経過を予測できる方は薬の服用に関して慎重になりますし、薬に頼りたくない、ケアで何とかしたいという熱い思いを持っている職員さんもまた、薬ではなく、関わりでなんとか眠れるようにしたいと考えます。

でも、気持ちに余裕のない職員さんや、責任感の強い職員さんは、寝ていただけないご利用者への対応をしながら、他のご利用者の介助をするということにストレスを感じます。
ご利用者が転倒するのではないか、自分の見守りの仕方で、転倒させてしまうのではないかと不安や恐怖感にかられます。

そして、上司やご家族から「転倒させないように」と言われれば、気持ちの行き場を失い、「もう自分にはこの仕事は無理だ・・・」と感じるようになります。

職員さんの育て方次第では、前途有望な若い芽をバッサリ摘んでしまうことになります。

睡眠薬は使うべきではない!?

睡眠薬の使用に関しての結論を先に言うと、私の意見は、『薬を飲んでも飲まなくてもどちらでもいい』です。

薬を使用せずに寝ていただけるのであれば、それに越したことはありません。
自分たちの関わり方次第で、ご利用者の心身の状態が向上していくというのは、介護の醍醐味でもあります。

でも、絶対に薬を使ってはダメ、とも思わないのです。

実際に薬を服用することで、夜間よく眠れ、さらに日常生活に支障のないご利用者もいますし、介護職員にとっても負担が少なく夜勤をすることができます。

薬を使わずに寝ていただける支援をいろいろと実践してみても、改善が見られないのであれば、薬の使用を検討してみてもいいのでは?と思います。

ただ、服用するのであれば、それはもしかするとご利用者の生活の質を揺るがす危険性のあるものであることを理解した上で、ご家族や病院の先生とよく相談し、様子を注意深く観察して慎重に使用していくことが必要です。

このことについて、詳しくは下記で述べますね。

特定の職員はなぜか寝てもらえる!?

眠れないご利用者でも、なぜか特定の職員の時には寝て下さることがあります。

そういう場合にその職員が(特にリーダークラスに多いのですが)「関わり次第で寝てくれるんだから、みんなもしっかり関わろうよ。」と言ってしまうことがあります。

これは、他の職員(寝ていただけない職員)からすると、とても聞きずらいセリフです。

いやいや、みんな十分がんばっています。

みんなそれぞれの、ご利用者との関係性の中で精一杯関わっているんですね。

寝てもらえる職員さんと、そのご利用者の関係は特別です。
「あなたがいてくれるだけで安心できる」そういう関係性です。

もちろん職員の誰もがそういった関係性を築けるように関わっていくことは大切ですし、目指していければいいのですが、それには時間がかかります。

 

薬を使わずに、関わりや人の関係性で不眠を解消するのは素晴らしいことです。
実際私たちもそのようなケアを行ってきましたし、そういった関わりを通して、喜びや達成感、やりがいや介護の仕事のおもしろさも感じることができます。
それは実際可能です。

可能だとは思いますが、でも、それを介護経験も性格も違う他の職員に求めて、「みんなも今自分がやっているように接してほしい」と言うのはムリな話です。

行動を見てもらうことで、他の職員に目標にしてもらうことはできるかもしれませんが、それを「今してほしいと」強要することはできません。
みんなそれぞれ今の力で、精一杯の仕事の仕方をしているからです。

正しいことや理想を掲げすぎると、介護職員は疲れます。
かといって、適当にケアをすればいいというわけではありません。
理想を語るなというつもりもありません。
理想論がなければ、本当にケアが崩壊してしまうので・・・。

人として、何を大切にしていくのかというところは、しっかりと伝えていく必要があります。
目標を持ち続けた上で、一旦その実現は先延ばしにして、今の自分たちの力で、確実にできることをやっていけばいいのではないかと思います。

新人職員さんの夜勤あるある

ベテラン職員さんの夜勤の時には、みなさんぐっすり休まれて、なんの問題も感じていない。

でも、新人職員さんの夜勤の時には、なぜかいろんな方が起き出して、眠られず、ずっとバタバタと忙しい夜勤になる。

なぜか、行くところ行くところみんな失禁していて全更衣しなければならない・・・。

これは、介護施設での夜勤のあるあるです。

薬を飲んでもらったのに、なぜか新人さんの夜勤の時には寝てもらえない・・・ということもあります。

結局、向き合って関わらざるを得なくなっているんですよね。

成長のために、いろんな経験をさせていただいている。
こういった経験はは新人さんの試練なのかもしれませんね。

先輩職員さんの多くは同じような経験をしています。

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中堅やベテラン職員さんも悩んでいたら??

特定の職員であれば個別にフォローすることができるのですが、中堅職員もベテラン職員も、携わる職員のほとんどが悩んで苦しんでいる場合には、介護現場の力というものを見極めなければならないのではないかと思います。

みんなが倒れてしまう前に、今の自分たちの力でできるケアはこれくらいだと現実を見極めて、力に合ったケアをしていけばいいのではないでしょうか。

ただその時に、ご家族にご本人(ご利用者)や介護職員の現状をしっかりと説明することと、了承を得ることが必要です。
またリーダーや介護主任は、介護現場の実力によって、目指す介護の理想像を見失うのではなく、持ち続けることが大切です。

今は、こういった対応をしているけれど、ゆくゆくはこんな介護をしていく、という目標を持ち続けて、後輩が育つのを待つ。
指導をしていくことで、後輩も先輩も一緒に成長していきます。

睡眠薬の使用の仕方

それで、睡眠薬に関してはどうすればいいのかというと、初めは頓服として処方してもらったらどうかと思います。

薬を使わなくても寝てもらえる職員さんや、寝ていただくための関わりが十分にできる(余裕のある)職員さんは、薬を使わなくてもいいし、どんなにがんばっても寝ていただけない、薬を服用してもらってでも、寝てもらえることで、安心して夜勤が行えるという職員さんには、使用を許可すればいいのではないでしょうか。

薬によっては、飲んだり飲まなかったりするのは良くない、ということもあると思いますので、主治医の先生に相談してみましょう。

先生に相談するときも、今のご本人の状態や目指す状態(あるいは、こうなってほしくないという状態)、またケアとして目指すところをしっかりと伝えることが必要です。

その上で、薬の種類を検討してもらったり、飲み方の注意点などを聞いておきましょう。

例えば、場合によっては半錠だけ飲んでもいいのかとか、飲む時間は毎日同じ時間がいいのかとか、何時までなら服用していいのかとか・・・。(何時まで頑張って関わってみるけれど、これ以上は寝てもらおうというタイムリミットを決めたりする)

薬なしで一旦眠られたけれど、2~3時間で起きてこられた場合に、そこから薬を服用していいのかどうかなど、状況に応じて薬の飲み方や量などを詳しく聞いておくと、介護職員としての行動の選択の幅が広がります。

選択の幅が広がった分だけ、いろんな関わりを試すことができるようになり、その結果、薬を使用しつつも、心地よく寝ていただけるような関わり方が見つかるようになるかもしれません。
またその様子や職員の関わり(がんばり)もご家族に報告することができます。

ただ夜ぐっすり寝てもらいたいという形で主治医の先生に相談すると、強めの薬が出たり、薬が効かなかった場合、すぐに強い薬に変わってしまうことがあります。

服用の仕方も、『20時に服用』とだけ決めると、そこから何の進展もなくなってしまいます。
他の方の介助をしているうちに20時になり、足浴もホットミルクも試さないまま薬を服用して、強制的にベッドへ誘導する形になります。

タイムリミットを設けて、22時まではがんばってみるとか、0時まではがんばってみるなどと、ご利用者と関わりをもつ時間を作ってみてはいかがでしょうか。

ひっきりなしにご利用者の介助が立て込んでいて、ゆっくり関わる時間をもつことができないという介護現場もあると思いますので、これはあくまで参考として聞いていただければと思います。

薬の効き目

薬の効き方は様々で、初日は効いたけれど2日目以降効かないだとか、飲み始めてから何日か経って効き目が出ることもありますし、弱い薬だと思っていてもかなり眠気が強く出てしまうこともあります。

薬の効き方には個人差があります。
特に高齢者は副作用が出やすいので、ご本人の様子をよく観察しながら、主治医の先生と連携をとってすすめていきましょう。

睡眠薬使用の検討はいつする?

ご利用者が寝られないことに対し、他職員から不満の声があがってはじめて、寝てもらうための支援を検討する場合があると思います。

でもこれでは遅すぎます。

最初が肝心です。

夜勤者からの報告で、「ご利用者が寝られない」と耳にした時点で、寝られない場合の薬を使わない関わり方を提案する。

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まだ不満に至っていない、気持ち的に頑張れる余裕のあるときに、寝てもらうためにどのような関わりができるかを提案して実行してみる。

複数の職員から、睡眠薬はどうかと意見が出た時に、「いや、もっとできることがあるはず」とその時初めて関わり方を提案しても、もう遅いです。

新たに関わりを増やしたり、頑張る気力はもう残っていません。

職員に疲れが出てから、「まだこんなことも、あんなこともできる。まだやってないんだから、やってみてから考えよう。」と提案したところで、もう頑張れる職員は少ないはずです。

職員の気力や体力がなくなってしまう前に、頑張れる余裕のあるうちに、早めに関わりを提案して実践してみましょう。

また、1ヵ月集中してやってみるなど、期間を決めておくといいです。

無制限にただ「頑張ってみよう」だと、いつまで続くんだろう・・・と先の見えない不安で、心が折れてしまうこともあるからです。

1ヵ月、一人4~5回の夜勤で、変化が見られなければ、その時点で職員の疲労度合いなどを確認してみます。

もう少し続けられそうであれば、続けてみてもいいですし、疲れの見える職員がいれば、その職員を個別にフォローしたり、全体的に疲労が強ければ、早めに睡眠薬の検討をして、主治医の先生に処方の相談をしてみてもいいと思います。

リーダー・介護主任の役割

・リーダーは、夜寝られないご利用者の報告を受けたら、誘眠効果のある関わり方を早めに提案して、みんなに実践してもらう。
提案が遅くなると、後手後手に回ってしまい、関わりとして何も実践できないまま、睡眠薬の使用を検討しなければならなくなります。

・状況をみて、職員をフォローしたり、判断や決断を早めにすること。

・ご家族に随時状況説明を行うこと。

・睡眠薬を主治医の先生に処方してもらう場合には、介護として目指すところを伝え、薬の種類や量などを検討してもらう(看護師さんに伝えてもらう場合には、看護師さんとよく話し合いを行う)

・実際に睡眠薬を服用する場合は、ご利用者の様子をよく観察する

睡眠薬使用の際の観察のポイント

観察のポイント
<夜間の様子>
・何時に服用して、何時に入眠したか
・睡眠の深さ(いびきをかいて爆睡している、目を覚まさないなど)
・呼吸の状態
・目を覚ます回数
・体動
・体の脱力感や足元のふらつき、姿勢
・せん妄
・尿量

<日中の様子>
・何時に目覚めたか
・顔のむくみ
・表情
・眠気
・体の脱力感や足元のふらつき、姿勢
・食欲
・水分摂取量

薬を服用して、「やれやれ寝てくれた・・・」で終わるのではなく、しっかりと観察と考察をしていきましょう。

 

一度睡眠薬を服用すると、なかなかやめるタイミングというのが掴めなくなります。

ご本人の体や心の状態は日々変化しています。
以前は睡眠薬が必要だった方でも、睡眠薬を服用しなくても眠れるようになることは多々あります。

職員が睡眠薬の服用に慣れてしまうと、それが普通になってしまい(習慣になってしまい)、何の疑問ももたずにあたり前のこととして服薬介助をしてしまいます。
不必要な薬をいつまでも飲ませてしまっているという状況もあります。

特に睡眠薬や精神系の薬は介護者の都合で服用していることも多いので、ご本人の生活の様子を見ながら、状態によっては、看護師や主治医の先生と相談して、服用する薬の検討をしていくことが必要かもしれません(徐々に軽めのものに変えていくなど)。

ただ、長年服用している薬は、それでいい状態を保っている場合もあり、急に止めると、それがきっかけで調子が悪くなってしまい、かえって止めない方がいいこともあります。
主治医の先生によくよく相談して判断してもらいましょう。
介護者は注意深くご本人の様子の観察を行いましょう。

介護職員の葛藤

医療の現場では、簡単に薬が処方されます。
※決して医療に対して否定的なわけではありません。

でも高齢者の介護現場では、一つの薬を飲むかどうか(処方してもらうかどうか)でとても悩みます。
職員同士の意見が割れたり協議したり・・・。
「夜寝ないのであれば薬で寝てもらう」というような簡単なことではないのです。
悩むということは、それだけその人のことを考えているということですし、大切に想っているということなのではないでしょうか。

不眠や便秘症など、なるべく薬に頼らないように、自分たちの関わり方で解決しようと奮闘しています。

それでも、介護者の都合で服用していただいている薬も実際あると思います。

家族としては、仕事として介護をしているのだから、当然できてあたり前だと思うでしょう。
理想の介護を想像してしまうでしょう。

でも、残念ながら、介護職員にもできないことはたくさんあります。
特に夜勤中は、一人対複数人のケアになります。

介護施設によっては、介護のレベルが低いとか、高いとかあるでしょう。
力不足な面もあるかもしれませんが、それでもみんな、それぞれの力で精一杯がんばっています。

こうしてあげたい気持ちはある・・・でも自分もこれが限界・・・そんな葛藤を抱えていたり、思うようにいかなくて悩んでいたりすることもあります。

自分の力のなさに腹が立つこともあります。

そんな思いを抱えながらも、様々な経験を通して、日々成長させていただいています。

 

介護職員は、ご利用者のことを考えています。
一人の人間として、どう向き合っていけばいいのか、あれやこれや思い悩んでいます。

ご利用者にとっては、決して機械的な作業ではなく、自分のことを一生懸命考えてくれる人がいる、思い悩んでくれる人がいる、そういう人が存在しているということだけでも、幸せなことなのではないかなと思います。

それが、介護職員の存在なのではないかと思います。



  
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