苦手な申し送りがうまくなる方法【伝達内容のまとめ方】

申し送りの目的・意味とは?

介護の入居施設では、夜勤者から日勤者へ、日勤者から夜勤者へと情報を伝えていくことが毎日行われています。
職員が交代で勤務をしている職場では、「申し送り」という形で情報の共有を行います。

申し送りの意味として、職員間での情報の伝達・共有や、業務の引継ぎをスムーズに行うといった役割があります。

申し送りが苦手な人は何が苦手なのか?

介護職員さんのなかには、申し送りが苦手だという人もいます。

申し送りの何が苦手かというと・・・
・要点をまとめて話すのが苦手
・簡潔に伝えられない
・人前で話すことが苦手
・伝えたことに対して先輩から質問されたり指摘されたりして緊張する
・受けた質問に対して正確に答えられない

先輩たちの前で報告をしたり話をしたりするのは、とても緊張しますよね。
自分の伝えたいことがうまく相手に伝わっているのかどうか自信がなかったり、先輩から「わかりにくい」などと言われると、ますます自信を無くしてしまいます。

先輩も理解しようとして、詳しく聞くために質問をしたりするのですが、それがまたプレッシャーとなり、申し送りをするのが憂鬱になってしまうこともあります。

 

苦手なことのなかには、話し手としてではなく、聞き手として苦手なこともあります。
・聞いたことが理解できない(話されていることの意味がわからない、専門用語がわからない)

介護の現場でも、医療の専門用語はよく出てきます。
わからない言葉があるときにはそのままにせずに、先輩に聞いたり、調べるようにしましょう。
わからないことをそのままにしておくと、やらなければならないことができなかったり、ミスにつながってしまったりします。

・聞いたことをまた他の職員(夜勤者など)に伝えることが苦手

申し送りをする人の役割として、自分が経験していないことでも、他の職員から聞いたことをまた別の職員へと伝えていかなければならないこともあります。
聞いたことをうまくまとめるなどの力も必要となってきます。

申し送りが上手にできるポイントは?

重要な出来事であれば伝える必要があるのですが、話がまとまらず、エピソードをダラダラと伝えてしまうと、聞く側としても、結局何が重要なことなのかがわからない場合があります。

申し送りは限られた時間で的確に情報を伝える必要がありますので、本当に大切な情報、伝えなければならない情報を整理する必要があります。

大切なことを伝えるときには、何を伝えるのか、情報を整理することと、どう伝えるか、伝え方を意識することが大切です。

情報の整理

・ご利用者の名前
・体の状態(熱・便秘・痛み・かゆみなど)
・心の状態
・日勤帯に対しての指示や注意点
・処置
・薬の変更(始まる薬や終わる薬、頓服薬など)

など、必要な項目を作って分けて考えてみると整理できます。

誰が・いつ・どこで・何を・どのように・したかを意識すると文章がまとまりやすいです。

それではひとつずつ見ていきましょう。

ご利用者の名前

これはあたり前のことですが、誰のことを言っているのかはっきりさせるために、初めにご利用者の名前を伝えます。
「〇〇さんですが・・・」という言い始めでもいいですし、「〇〇さんです。」と一旦名前を言い終えてから、様子の説明に入ってもいいです。

体の状態

介護施設では医療的な処置は少ないので、発熱や便秘の状況の報告、体の痛みやかゆみなどの報告、また、それに対して自分がどのような対応をしたのか、それを行った結果、ご利用者がどうなったのかを伝えます。

伝える内容は
・ご利用者の状態
・それに対して自分が行ったこと
・その結果

例)発熱
「20時に38度の発熱があり、3点クーリングを行いましたが、下がらなかったため、22時に先生(主治医)に連絡し、解熱剤(具体的な薬の名前)を服用。0時には37度台、6時には36度まで解熱しています。」

例)便秘
「本日排便-3日目ですので、下剤(下剤の名前を具体的に言う)の服用をお願いします。」

心の状態

体の状態の変化だけを伝えればいいというものではなく、ご利用者の心の状態を伝えていくことも必要です。

例えば、夜間帯の申し送りでは何も報告がなかった方が、日中「帰ります!」と突然施設を飛び出したという事例。
介護記録をよく読んでみると、その前の日の晩から「家に帰りたい。」と言われていたということがわかったということがありました。

夜間帯の様子の申し送りを受けていれば、もしかすると、ご本人が飛び出したいほどの気持ちになるまでに何かケアができたかもしれません。

自分が得た情報をもとに、他の職員さんがケアしてくれることもたくさんありますので、どんどん情報の発信をしていきましょう。

心の状態も体の状態と同じように
・ご利用者の状態
・それに対して自分が行ったこと
・その結果  を伝えます。

例)
「21時に『家に帰りたい』と言われていたんですが、自室でじっくりお話を聴くと、30分程で気持ちが落ち着き『今日はここに泊まる』と言われ、22時前には入眠されています。その後起きてこられることなく、良眠です。」

日勤帯に対しての指示や注意点

上記の便秘の場合など、日勤帯もしくは、今夜の夜勤者に下剤の服薬を忘れずに行ってもらうために、「今日これこれをしてください。」と伝えたり、「今日これこれの予定なのでお願いします。」と伝えます。

また、夜間の状態から、日勤帯への注意点などもあれば伝えます。
例えば「昨夜はあまり休まれていないので、眠気が強い場合は休んでいただいてください。」とか、「転倒に気を付けてください。」とか、「水分をしっかりと摂っていただくようにしてください。」などです。

申し送りの伝え方【言葉の表現方法】

あいまいな伝え方だと、相手にうまく伝わらないことがあります。
どうすればあいまいな伝え方にならずにすむかというと、ポイントは言葉の選び方にあります。

具体的に伝える・言葉の変換

「〇〇さんは昨夜不穏でした」
聞いた人は、「〇〇さんが昨夜落ち着きがなかった」ということはなんとなくわかると思うのですが、具体的にどんな様子だったのかはわかりません。

その場にいなかった人にも様子がわかるように具体的に伝えます。

「不穏」という言葉をもっと具体的にしていくと、「表情が険しい」「イライラしている」「言葉を荒げられる」「落ち着きなく歩かれる」などとなるかもしれません。

また、「熱がありました」という場合も、聞いた人はどれくらい熱があったのかがわかりません。
高熱だったのか、微熱だったのかでも、今日受診をする必要があるのかどうか判断しかねます。

「38度の熱がありました」と伝えると、高熱であることがわかります。

「痛みを訴えられました」
⇒「顔をしかめられるくらいひどく痛がっておられました」「10のうち3くらいの痛さだと言われていました」

「排便がありました」
⇒「バナナ一本分の普通便がありました」「両手いっぱい分の下痢便がありました」

数値化できるものは数値で伝えたり、様子や度合い、量などを例えなどを使って表現するとより分かりやすく、共通の認識で他者と情報共有ができます。

他のスタッフに何かお願いする場合・指示を出す場合

何か指示を出す場合にも、「様子を見てください」と伝えても、具体的に何をすればいいのか、様子を見るという観察の視点がわからなければ、結局何もせずに一日終わってしまうこともあります。

これは新人さんにはなかなか難しいかもしれませんが、先輩職員さんは、新人さんにもわかるように、「様子を見る」ということの内容を具体的に伝えるようにしましょう。

例えば、何か薬が変わった人に対して、副作用が表れやすい場合
「表情や行動、言動に変化がないかどうか、眠気や足元のふつきがないかどうか、見てください。変化があれば、詳しく記録に残してください。」と伝える。

体調不良の方がいる場合
「〇時間おきにバイタルを測ってください。改善しない場合は、主治医(または看護師)に連絡してください。」と伝える。

指示を受ける人も、ひとこと「様子を見てください」とだけ言われるよりも、ずっとわかりやすいですよね?
「様子を見てください」だけで、言わんとしていることが伝わるのは、ベテラン職員同士だけです。

具体的に何をすればいいのか指示を出すと、任された人もやりやすいですし、大切なことを見逃すことも減ってきます。

申し送りが伝言ゲームにならないようにするためのポイント

よく申し送りでは、「~とのことです。」とか、「~だそうです。」という伝え方をする場合があります。

これは、「人の意見を自分が代わりに伝えましたよ」という伝え方で、「自分の意見ではありません」というニュアンスにもとられます。

人が言った言葉などをそのまま伝える場合は、「~とのことです。」とか「~と言われていました。」と言うこともあるのですが、申し送りとして、他職員に何か行動を求めるような指示を出す場合や、情報共有の徹底をする場合、「~です。」とか、「~をお願いします。」というふうに、言い切る形にすることで、自分の意見として発信することができます。

おそらく、それに自信がないために、人の意見として「~とのことです。」とか「~だそうです。」と伝えてしまうのだと思うのですが、一人一人が情報発信者としての責任をもつことが大切です。

「~とのことです。」という場合、詳しく内容を聞こうとすると、「よくわかりません。ただ〇〇さんがそう言われていたので・・・」となることも多くあります。

『自分はよくわからないけれど、そう言われていたので、とりあえず伝えた』みたいなことです。
それが重なると、不確かな情報が回ってしまう危険性があり、単なるうわさ話のように、真実がはっきりとしないことがあります。

真実や根拠がはっきりしないので、情報を聞いた人がそれぞれの解釈で物事を進めてしまい、それであとから、「え?こういうことじゃなかったの??」となることも多々あります。

介護現場で大事なのは、他人事にしない、ということ。
根拠をはっきりとさせる、ということ。

起こる問題のほとんどは、無関心さだったり、他人事だと感じて真剣に考えない、自分ではない他の誰かの責任だと考えてしまうところにあります。

情報を伝える側にも受け取る側にも責任があるので、どちらかのせいにするのではなく、お互いに気を付けていきましょう。
聞いてわからないことがあれば、その場で質問し、自分が正しい情報を次の人に伝えられるようにしましょう。

申し送りノートの活用

口頭での申し送りが長くなってしまう場合には、特別重要なことだけ口頭で伝えて、あとはノートに書いて情報の共有をするなどの工夫もできます。

ノートの書き方として、一般的な業務(間接業務)に関することと、ご利用者のケア(直接業務)に関することと、これもまた情報をわけて見られるようにするとわかりやすいです。

ノートを分けたり、記入する場所を分けたりして、情報の整理をしていきましょう。

介護現場では、起こったことはチームとしての連帯責任

情報を正しく受け取っているのか、理解しているのか、それに基づいて行動できているのか、それは、個人の責任だけではなく、チームとして力を補って、高めていかなければならないことだと思います。

介護の仕事は、一人で行う場合を除いて、他職員や関係者との情報共有の上で成り立っているものです。

特に入居施設では、時間も日にちも交代で勤務をしているので、その日その日の勤務のメンバーが毎日変わります。

その中で情報を共有したり、共通の意識をもったり、それをもとに行動したりするというのは、大変なことです。

 

申し送りの情報の整理の仕方や伝え方は、苦手意識をもっている職員さんだけでなく、チーム全体で取り組んでいくと、伝え方や意識の持ち方の形が徐々に作れてきます。

それが習慣になることで、やりやすさが生まれますし、新しく入って来てくれた新人さんも、先輩に習って申し送りをすることで、だんだん上達していきます。

申し送りが苦手だという方は、まずは「この人の話し方上手だな」とか「わかりやすいな」という先輩のやり方を真似してみることから始めてみてはいかがでしょうか?

新人介護職員1日目の悩みと解説②【申し送りについて】

2017年10月24日



  
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