介護をする上で、『その人らしさを大切にする』ということをよく言われます。
介護施設の施設理念にもよく出てくる言葉ですし、私自身この言葉を結構良く使います。
では・・・
『その人らしさ』とはいったいなんでしょうか?
今日は私が新人職員だったころに介護の先輩に教わったことを、みなさんに紹介したいと思います。
その人らしさを支えるってどういうこと??
その人らしく生活する。
その人らしさを支える。
それでは、『その人らしさ』ってどうやって見つけるのでしょうか?
まず、『その人らしさ』を『その人』と『人らしさ』にわけて考えてみましょう。
『人らしさ』とは??
人らしさとは、人間らしさとも言い換えることができます。
では人間らしい生活とはどんな生活でしょうか?
介護が必要になった人は、本来の生活からかけ離れた生活を強いられることが少なくありません。
例えば本当は起きて座って食事がとれるのにも関わらず、ベッドサイドに食事を持ってこられてベッド上で食事をする・・・とか、
トイレで排泄ができるのにも関わらず、トイレに座るまでの介助が大変なためにおむつの中で排泄をする・・・とか、
お風呂に入るのが大変だからとシャワー浴ですませる、もしくは清拭ですませる・・・とか。。。
介護が必要になると、様々な理由から諦めなければならないことが増えてきます。
でも諦めなくていいも生活ができるように、周りにいる人たちがお手伝いできたらいいですよね?
排泄したものを処理するだけの後処理介護ではなく、どうすればトイレで排泄できるか?どうすればトイレに座ることができるか?
人間らしい生活とは何か?そしてそれを実現するためにはどのような知識、技術、人が必要なのか?
これらを考えていくことで、サポートする側ができること、やるべきことが見えてきます。
その人らしさの『その人』とは??
その人とは、〇〇さんという固有名詞が思い浮かぶ状態といえます。
介護の仕方(技術)は、教科書では誰にでも当てはまるような、一般的な方法が書かれています。
でも実際に介護をしてみると、人それぞれ支援の仕方が違うということがわかります。
それぞれのクセやこだわりがあるからです。
入浴を例にあげると、教科書ではお湯の温度は38℃~40℃が望ましいとありますよね?
でも実際は、お風呂のお湯は熱いのが好きな人、ぬるいのが好きな人、それぞれ好みがあります。
体を洗う順番、シャンプーや石鹸へのこだわり、服を着る順番、シャツはズボンの中へ入れるのか外へ出すのか・・・などなど人それぞれこだわりが違います。
そのこだわりを知らなければ、一辺倒な介護をしてしまうことになりますし、介護者主体の介護になってしまいます。
ともすれば、介護者にとって都合のいい介護をしてしまうとういう場合もあります。
その人(〇〇さん)を大切にしようと思ったら、まずは〇〇さんのクセやこだわり、今まで何を大切にしてきたのかを知る必要があります。
自分で何でもできていた頃は自分の思うようにしてこられました。
それは無意識のうちにされていたことだと思います。
でも、介護が必要になったとき自分の思うようにできない現実を知り、不自由さを感じます。
自分でできなくなっても、介護者が自分のクセやこだわりを知っていてくれて、それを自分の代わりにやってくれたら、ストレスや葛藤を抱えることも少ないかもしれませんし、諦めなくてもいい生活ができるかもしれません。
服を着る順番を介護者が決めるのではなく、本人の長年の習慣を大切にしたいですね。
それが「その人」を大切にするということなのではないかなと思います。
〇〇さんは何が好きで何が嫌いで、どのようなことを大切に想っているのか?どのようなこだわりがあるのか?
そしてどのようなケアが必要か?
本人から直接聞けなかったとしても、元気なころの本人を知る人に聞くこともできます。
また、介護は介護が必要になったときから始まるのではありません。
元気なときから一緒にいたはずなのに、介護が必要になったときに、実はその人のことを何も知らなかったということに気づくことがあると思います。
元気な時にその人がどんな生活をしているのか、生活動作のくせやこだわりを知ることから、関わりは始まっています。
好きな相手、興味をもって関わっている相手のことはよくわかると思います。
人に興味をもって接していくことが、いざというときの支えになってあげられる要なのではないかと思います。
『その人』と『人らしさ』を合わせて『その人らしさ』です。
介護者主体の介護ではなく、本人の想いや習慣を大切にした支援をすることが、その人らしさを支えるということなのではないでしょうか。