過食はなぜ起こる??
食べ物でないものを食べる認知症の人への接し方という記事でもお伝えした通り、過食や拒食は欲求不満を感じている時に起こりやすいものです。
特に食に関する症状は、寂しさの感情が大きいと言われています。
今までは食べる量が普通の量だったのに、何かのきっかけで異常なほどにご飯を食べるようになったという場合も、やはり『寂しさ』が原因の一つであると考えられます。
例として、家での生活から施設入居になった方などは、入居後にとてもよくごはんを食べられるようになる場合があります。
ご家族は「ここの食事はおいしいんでしょうね~。」と言う反面、どんどん太っていくご本人を見て心配されます。
自宅での生活でも、親しい方が亡くなられた後などに、認知症の方はさみしくて過食になり、食べても食べても満たされないということもあります。
また一見、生活環境には何の変化も見られないという場合でも、認知症の進行や心の変化で、現状への捉え方や見方が変わってくると、孤独感や寂しさ、不安などを感じやすくなります。
介護者も、食べ過ぎることを異常だと感じれば心配になり、食べ過ぎをなんとか止めようとします。
でもなかなか上手くはいきません。
介護者の「これ以上は食べさせたくない」という思いと、本人の「食べたい」という思いがぶつかり合い、お互いにストレスを感じてしまいます。
ストレスを感じると、イライラが強くなって興奮状態になってしまうかもしれません。
ごはんを食べ過ぎる認知症の人への接し方
「おかわり。」と言われたら、空の鍋やお釜を見せて、「ごめんなさいね。もうごはんがないから、おかわりができないんです。」ということを伝え、目で見て納得してもらったり、それでも納得ができないときは、何か軽く食べられるものを食べてもらっていいと思います。(気になるようであれば、カロリーや糖分の少ないものを用意しておきましょう。)
「食べすぎよ!」とか「もう食べちゃダメ!」と怒るのではなく、「食べたいときは食べさせてあげればいい」という気持ちに余裕のある状態でいましょう。
怒ったり否定したり抑制したりするのは、認知症の方にとっては逆効果なのです。
また、介護者にとっても「なんとか食べるのをストップさせなければ!!」と、「~してはいけない」「~でなければいけない」といった気持ちを持ち続け、それと闘っていくことは、大変なストレスになります。
今はたくさんごはんを食べても、いつか食べなくなる時がきます。
そして、今度は逆にごはんを食べてくれなくて困る時がきます。
お年寄りは風邪を引いただけでも体重がぐっと減ることがあるので、少し太っているくらいの方が、体力的にはいいと個人的には思っています。
もちろんお医者様との相談は必要ですが・・・。
太り過ぎで病気になるほどでない限り、食べさせてあげてもいいのではないかなと思います。
ただそこで何も策をとらないと、どんどん加速して本当に糖尿病などの病気になってしまう可能性もあるので、食べたいものを食べていただきつつ、どうすれば食べなくてもいいくらいに心が満足してもらえるか?を考えていかなければなりません。
過食はどのくらい続く?
過食はずっとは続きません。
でも、何も対処しなければ、もしかすると長く続くかもしれません。
過食を改善しようと試みても、症状が落ち着くまでには個人差があります。
すぐに元の食事量に戻る場合もありますし、しばらく時間がかかる場合もあります。
過食の方に対してのアプローチ
一見、問題はごはんを食べるか食べないかという、食事のときのやりとりのように思えますが、実は解決する方法は食事の時以外にあるのです。
冒頭でもお伝えしたように、過食は寂しさが原因で起こることが多いです。
ですから、食事の時以外の時間で、いかに心が通い合うような人との触れ合いがあるか、寂しさを軽減できるか、ということに取り組んでいく必要があるのです。
寂しさが軽減されれば、それが原因で起こる過食は改善します。
(もともと大食いの方であれば話は別ですが・・・。)
寂しさの原因となるような環境の変化がなかったか、人間関係での変化がなかったか、また服用している薬の変化(副作用の影響)がなかったかなどを確認し、その方の心身のバランスが整うようなケアをしましょう。
寂しさの原因として、人間関係だけでなく、老いていくことや自分が人から必要とされていないのではないかと感じることもあります。
自分で今の自分を認める、受け入れるということはなかなか難しいことですが、人から認めてもらえると、自分はこのままでいいのだと思えたりします。
今の自分でも、十分愛される存在なんだと思えたりします。
はっきりと理解や認識はできていなくても、無意識の内で感じ取ったり、心が穏やかになったりします。
ケアのポイントは、食べ過ぎることを怒ったり、食べることを必要以上に抑制したりしないこと。
そして、人と触れ合えるような機会を増やし、優しい言葉をかけたり、スキンシップを増やすことで、ご本人が『自分はこのままでいていい』と感じられる瞬間を多くもてるようにすることです。
日頃の関わりの中で心地よい時間を一緒に過ごしていけるといいですね。