認知症の主な症状は物忘れです。
「認知症」と聞くと、まったく何もわからなくなってしまう重度な症状を想像される方も多いかもしれません。
実際、認知症の方はどれくらいのことをわかっていらっしゃるのでしょうか?
認知症には自覚症状がある
ゆっくりと進行する認知症の場合、初めは自覚症状があります。
「最近物忘れがひどくなった。私もとうとうボケてきた。」
なんて、笑い話をしていますが、内心だんだん不安な気持ちが大きくなってきます。
最近おかしい。
忘れっぽい。
私どうしちゃったんだろう・・・
不安になって、ご自分で受診される方もいらっしゃいます。
そして、認知症が深まってくると、益々状況の判断ができなくなったり、今自分がいる場所がわからなくなったり、目の前にいる人が誰なのがかわからなくなっていきます。
『わからなくなる』ということは、どういうことなのでしょうか?
想像してみましょう。
あなたは朝目覚めると、見慣れない部屋にいる。
家に帰ろうと思って外に出てみても、やはり見慣れない街並みが広がっている。
歩いても歩いても、見知らぬ世界。
人に尋ねてみても、相手の言っていることがよくわからない。
自分が一生懸命話をしようとしても、白い目で見られる。
ここがどこだかわからない。
家に帰りたいのに帰れない。
この世界に自分の味方になってくれる人はいるんだろうか?
元いた世界とは違う世界で、自分はこの先どうやって生きていけばいいんだろうか?
突然異世界に行ってしまったらそんなことを考えるのではないでしょうか?
私たちは時系列に沿って、前後のつじつまを合わせられるから、状況の判断ができるのです。
状況の判断ができるから、安心していられるのです。
でも認知症の人は、『過去と照らし合わせて今の状況を判断する』ことがとても難しいです。
状況は理解できない。
だけど、何かがおかしいのはわかる。
認知症の人は、わかっている
自分に物忘れがあることを。
理解できないことが多くなってきたことを。
周りの人の自分を見る目が何か変なことを。
身近な人に迷惑をかけてしまっていることを。
そして、まるで以前とは違う異世界で生きていかなければならないことを。
常に恐怖や不安と闘っていかなければならないことを。
たくさんのことをわかっているんです。
そして、葛藤しているんです。
それを周りにいる私たちが知っていてあげることが必要なんじゃないかなと思います。
認知症の人が困っていたら、優しい言葉かけをしてあげたいですね。