毎日忙しくバタバタと過ぎてしまう。
ご利用者とゆっくり話をする時間がない。
ケアプランを実行しようと思っても時間がない。
そんな悩みを抱えている介護職員さんは多いのではないでしょうか?
もう少しスタッフの人数が多ければ・・・というのは、介護施設で働いている方であれば誰でも必ず考えることですよね。
介護施設の人員不足というのは、確かにあると思います。
万年人員不足に悩まされている施設もあるでしょうし、たとえ新しくスタッフが入ってきてくれたとしても、慣れるまではOJTなどでバタバタして、なかなか落ち着きません。
介護スタッフに疲れが溜まっていき、その結果、また辞めたくなってしまうという悪循環もあります。
スタッフをどのように定着させていくかというお話はまた別の機会にするとして、今回は限られた時間の中で、どのようにご利用者と関わっていくか、意識的な(精神面の)お話をしようと思います。
ハード面(人員調整など)が整わなくて疲労が溜まっていく場合は、無理する必要は全くなく、自身の体調と相談しながらやれることだけやり、体力を温存した方がいいのですが、今回はそういった状況ではない場合のお話です。
「時間がない」の裏に隠された真実とは?
日々自分たちが行っていることを振り返ってみると、必ずやらなければいけないことと、時間に余裕があればやろうと思っていることがあることに気づきます。
例えばご利用者の入浴介助や排泄介助、これは介護の仕事として必ずやらなければいけないことですよね?
でも、お散歩やご利用者とお話をしたり一緒にお茶を飲んだりすることなどは、時間があればやろうと思っていることだと思います。
むしろ、これらを大切な仕事だとは思っていない場合もあります。
本当はものすごく大事な時間なんですけどね。
以前興味深い出来事を経験したことがありました。
あるご利用者が、毎日散歩に出かけられていました。
私が働いていた入居施設は、ご利用者がスタッフに断りを入れる必要もなく、自分の好きな時に自由に外に出られるところだったので、スタッフはその方が出かける準備をする様子を見て、それに合わせて自分も外出の準備をし、一緒に出かけるようにしていました。
お一人で出られることもできたのですが、ご家族の意向によりいつも職員が付き添って出かけていました。
毎日毎日、雨が降っても風が吹いても・・・。
その方は散歩を日課としていたので、「今日は行くことができない。」と断ることができませんでした。
職員が行かれないのであれば、「一人で行く。」と、実際に職員が気が付かないうちに外へ出られ、急いで後を追いかけたこともありました。
しかし、その方は次第にご自分からは出られなくなり、今度は職員の方から「散歩に行こう!」と誘うようになりました。
そして散歩に出かけると、「あ~久しぶりに出たな~。」ととても喜ばれていました。
職員はその方がお散歩が大好きなことを知っていました。
でも、次第に職員の方から散歩に誘うことも少なくなっていきました。
理由はいろいろとあったのですが、その中には「忙しくて時間に余裕がない。」というものもありました。
毎日散歩に出かけていた時と出かけなくなった時と比べて、忙しさが大きく変わったかというと決してそういうわけではありません。
それでも「時間がない。」となるのです。
毎日散歩に行っていたときは、職員もそれを楽しんでいました。
職員にとっても気分転換になり、ゆったりとした時間を一緒に過ごしていました。
でも、こちらから誘わなければ行かなくてもいい状況になると、次第に散歩に誘う職員と誘わない職員がでてきました。
やらなければいけないことであればやる。
それは、一人で出ていく人を止めることができないから、どうしようもないからやる(散歩について行く)ということなのでしょうか?
やってもいいしやらなくてもいいという選択肢ができると、人間ラクな方を選ぶのかもしれません。
また、散歩に出かけることで、施設に残った職員に負担をかけたくないという職員主体の余計な(?)気遣いがあったのかもしれません。
「やってもやらなくてもどちらでもいい」ではなく、「やる必要のあること」としてとらえると実行しやすくなるのではないかと思います。
その方の生活の一部分を作り上げている日課として、お散歩はとても大切なことでした。
「時間がないからできない」ということの本当の理由は「時間がない」ではないのでは??と思った出来事でした。
場合によっては、物事に対する考え方ややり方を少し変えていけば、改善していく余地はあるのではないかと思います。
「できない」理由を並べるよりも、「どうすればできるか?」を考える
とはいえ、本当に時間がないということも実際にはあります。
私も大きな施設で働いていたときは、一日中(昼食の時間を除いて)座る時間もないどころか、常に余裕がなく小走りで仕事をしていたように思います。
ご利用者に頼みごとをされても「ちょっと待ってね」といい続けていた時期がありました。
体がいくつあっても足りないと思っていた時期がありました。
でも、その中でも毎日でなくてもいいから、上手に時間を作ってご利用者と一緒に過ごすことは可能だと思っています。
それは経験を積んだ今だからこそ言えることなのかもしれません。
ある程度仕事の内容ややり方に慣れたからこそ、余裕が出てきたことなのかもしれません。
ご利用者とゆっくりと関わりたいという思いは、介護の仕事をしている方であれば誰でも感じていることだと思います。
やりたいことができるようになるということは、自分の力量もあるのかもしれませんし、チームとしての他の職員との協力体制や人員を整備する必要性もあるのかもしれません。
ただ、「できない」と決めつけると、そこで終わってしまいます。
「どうすればできるのか?」を考えると、解決策が見い出せます。
0か100かではなく、1でも2でも、少しずつでも目標達成に近づいていけるといいですね。