認知症の人の世界を知ろう
こちらの言うことがなかなか伝わらない。
自分の方が正しいことを言っているのに、わかってもらえない。
自分は悪くないのに、なぜか悪者になってしまう。
なぜわかってくれないのか?
病気だといえども理解に苦しむ・・・
認知症の方と接していると、こんな状況に直面することがあると思います。
では、こんな時はどうしたらいいのでしょうか?
ついつい相手を責めてしまいがちですが、どうにか冷静になり、相手が今何を思っているのか考えてみることから始めてみませんか?
相手の世界を全て理解することは難しいかもしれません。
それでも、想像することはできます。
その世界にいて相手は何を思っているのか?
そのためには相手の世界を否定せずに、そのままを受け止めてさしあげましょう。
相手の世界に付き合ってみると、少し見えてくるものがあるかもしれません。
認知症の人の世界に付き合って大丈夫??
よく誤解されることとして、相手の世界に付き合って話を合わせてしまったら、認知症の症状が重くなってしまうのではないかということです。
正しいことを伝え、現実の世界をきちんと認識してもらわないと、どんどんおかしな方向へ進んでしまうのではないかと心配されている方が多くいらっしゃいます。
これ、誤解なんですね。
認知症が進むのではないかという恐怖感から必死に正そうとするのですが、逆に相手の世界を否定して現実を突きつければ突きつける程、相手は混乱してしまいます。
では、そもそもなぜ自分の世界を作ってしまうのでしょうか??
認知症の人が自分の世界を作る理由
一つは、認知症の中核となる症状で、記憶力の低下があり、体験したことを記憶していないので、体験していないことになっている=事実とは違う世界をもっている、
実際にはご飯を食べたのに、「食べていない!」と言い張る状況ですね。
もう一つは現実逃避です。
現実が受け入れられなくて、今の現実の中では生きていたくない。
自分の人生で一番良かった時代に帰っていく状況。
または、自分の殻に閉じこもってしまって独自の世界を作り出している状況があります。
この場合の『現実』というのは、ネガティブなものとして捉えられています。
もしかすると
・物忘れがひどくなっていく自分
・年をとっていく自分
・誰からも相手にされなくなっていく自分
そういった現実を憂えているのかもしれません。
認知症の人の世界に寄り添うとは?
例えば年老いた自分の親が人形に話しかけて、まるで本物の子供をあやしているような光景を目にすると、それは異様な光景のように目に映るかもしれません。
そしてそんな時、「それは人形でしょ!」と現実をつきつけてしまいがちです。
認知症の方は、誰かに否定されたり注意されたり、怒られたりすることがとても苦痛です。
(認知症の人だけでなく、誰だって嫌ですよね・・・)
「この世界には自分のことを理解してくれる人は一人もいない」と思い、ますます自分の世界に閉じこもってしまいます。
そんな時は「かわいい子ね~」と穏やかな笑顔で言ってあげると、相手も「そうでしょ~♪」と嬉しい気持ちになります。
相手の世界を認め、寄り添うことで「この世界にも自分のことをわかってくれる人がいる」という安心感につながり、少しずつ現実の世界に戻ってきてくださいます。
娘の顔がわからなかった人がわかるようになったり、自分の状況を理解されるようになることもあります。
認知症の人の世界を肯定すると、認知症が重くなるのでは?というのは誤解で、否定するほど認知症は悪化していきます。
ポイントは否定したり注意したりせずに、認め、肯定し、自分も付き合うということです。