私たちは日々、体験したことや五感で感じたこと、学習したことなどをどのように記憶しているのでしょうか?
認知症になるとなぜ物忘れが増えていくのでしょうか?
今回は記憶のしくみについてお伝えしたいと思います。
記憶のしくみ
新しい情報は脳の海馬というところに記憶され、その後大脳皮質というところに送り込まれます。
私たちが日々体験する日常的な出来事や覚えようと意識した情報は、海馬で整理されます。
そして、短期記憶として記憶のファイルに書き込まれます。
その後、長期記憶の保管場所である大脳皮質というところに送り込まれ、記憶のファイルは長期保管の引きだしにしまわれます。
大脳皮質に送り込まれる(記憶の引き出しに入る)と、ふとしたことで思い出すことができるのですが、大脳皮質に送り込まれる前の段階の海馬がうまく機能していなければ、情報を記憶の引き出しに入れることができないのです。
健康な方の脳であれば、必要な情報を脳の中に取り込み(記憶し)、引き出しに入れることができます。
そして、思い出したいときには引き出しから情報を取り出すことができます。
しかし、アルツハイマー型認知症の場合は、海馬に損傷を受けるので、新しい情報が記憶されないということなんですね。
昔のことはよく覚えているのに、最近のことや、ついさっきの出来事すらも覚えていないというのは、記憶のファイルに書き込まれていない、もしくは、長期保管の引き出しに記憶ファイルが入らないということが原因です。
体験したことを記憶していないので、実際には体験していいても、脳の中では体験していないことになっています。
老化による物忘れと認知症による物忘れの違いでもお伝えしているように、頭の中の引き出しに入っている情報を取り出すことができたり、ヒントがあれば思い出せたりするのは、単なる物忘れなのですが、そもそも引き出しに情報が入っていないため、情報(出来事の記憶)がごっそりと抜け落ちている状態が認知症による物忘れなのです。
そもそも情報が記憶されていないかったり、記憶されたものがごっそり抜けおちてしまっているので、部分的にでも思い出すことはできないのです。
海馬は再生する!?
海馬は、認知症になって初めて障害を受けると思われがちですが、実はストレスや不安、うつや生活習慣病(肥満、糖尿病、食事の不摂生)などでも萎縮します。
また、海馬の神経細胞は加齢と共に毎年約1~2%減少するといわれており、これは誰にでも起こる、ごく普通のことなのですが、実は海馬を鍛えることで海馬の減少を食い止め、さらには海馬の神経細胞を増加することが可能なのです。
またそれには年齢制限などはなく、生涯再生が可能だといわれています。
どのようなことが海馬を鍛えることになるのかというと・・・
ストレスのない生活(心身の健康)
ストレスの多い社会なので、ストレスをゼロにすることは難しいかもしれませんが、生活習慣を整え、栄養のある食事やしっかりと睡眠をとること、また適度な運動をすることが大切です。
アロマテラピー
心のケアにはアロマテラピーもとても有効で、アロマには精油(エッセンシャルオイル)独自のもつ様々な作用で、心身のバランスを整える効果もありますし、香りを通してリラックスをしたり、嗅覚を刺激することで、嗅神経を再生することが可能です。
認知症と嗅覚の関係についてはこちらの記事をお読みください。
呼吸法
大きなストレスを抱えている人は、呼吸が浅くなる傾向がありますが、脳が酸欠になることも、海馬を萎縮させる原因になるんですね。
だから、腹式呼吸の呼吸法などを行うことにより、脳や体の抹消にまで酸素を送り届けることができ、自律神経のバランスを整えることができます。
深呼吸で脳に酸素を送り届け、海馬の萎縮を予防するだけでなく、自律神経のバランスを整えることで心身の不調の軽減にもつながり、悪循環を断ち切ることができます。
有酸素運動
有酸素運動のなかでも特に散歩は効果的です。
外に出かけることで人との触れ合いがあり、空気を肌で感じたり、花や木々の移り変わりや匂いから季節を感じることができます。
深い呼吸と筋肉への刺激もあり、心と体にとって、とてもいい効果があります。
新しいことの体験
今までにやったことのないことをやってみる、行ったことのない場所へ行ってみるというのは、とてもいい刺激になります。
『慣れ』というのは安心感を生み、この『慣れ』があるからこそストレスを軽減できるということが言えます。
ただ、この『慣れ』は脳を衰えさせてしまうという一面もあります。
慣れ親しんだことは頭で考えなくてもできてしまうからです。
新たな体験により新たな発見や刺激があると、脳はこれまでとは異なった新しい神経ネットワークを作ろうとします。
あまりストレスにならないような、心がワクワクするような楽しいことをやってみるといいと思います。
脳トレ
脳を活性化するためには、『認知⇒判断⇒行動』することが必要になります。
仕事をしている人であれば、そういった状況はいくらでもあると思いますが、仕事を引退した方にとっては、毎日テレビを見て過ごす・・・という生活を送っている方も多いのではないでしょうか。
テレビを見て過ごすというのは受動的で、情報を一方的に受け取るだけなので、自ら判断して行動するということがありません。
結果、自分の頭で考えなくなり、脳の衰えにつながってしまいます。
頭を使うような、何か生産性のある作業をしたり、ゲームをしたりすることが、脳の活性化につながります。
現在様々な脳トレの本やゲームなどが出ています。
数学や漢字、パズルなどを使ったようなものもが人気なのですが、できれば、一人で行うものよりも将棋や碁、麻雀やオセロのような、対戦相手がいるものの方がおすすめです。
人と触れ合うことで、ゲーム以外でも会話や人間関係を通して、気持ちの満足感や喜怒哀楽といった感情の変化が得られるからです。
【番外編】プラズマローゲン
プラズマローゲンとは、もともと人間や他の動物の体内に存在している物質で、神経細胞の衰え(酸化)から保護する役割があったり、修復する役割があるといわれています。
2015年に認知症の予防や改善に役立つとテレビで紹介されてから、試されているかも多いようです。
サプリメントとして、ホタテ貝から抽出したものや、鶏肉から抽出したものなどがあります。
であれば、サプリメントでなく、これらの食材を摂取すればいいのでは?と考えがちですが、この食材をいくら食べたとしても、体内でうまく吸収できなかったり、利用できなかったりするといわれています。
特殊抽出の方法でプラズマローゲンのみを取り出し、それを摂取することで体内でうまく吸収・利用されるようになるのだそうです。
テレビでも多く報道されていますので、気になる方は試してみるといいかもしれませんね。