長年認知症の研究を続けてこられた鳥取大学医学部教授の浦上先生の研究により、アロマテラピーが認知症の予防や改善に期待がもてるということがテレビで放送され、話題を呼びました。
テレビで紹介されたのは2014年なのですが、それからじわじわと認知度が高まってきているように感じます。
芳香療法として、市販のブレンドオイルを購入される方も多いと思いますが、今回はそのブレンドオイルに使用されているローズマリー・カンファ―の注意点についてお話したいと思います。
【テレビで紹介されたアロマオイル】昼用アロマと夜用アロマの最も効果的な配合とは?
昼用アロマ(神経細胞を活性化する)
ローズマリー・カンファ― 2滴
レモン 1滴
2:1の割合でブレンドする
夜用アロマ(神経細胞を鎮静化する)
真性ラベンダー 2滴
オレンジ・スィート 1滴
2:1の割合でブレンドする
自分でブレンドするのが難しい方は、上記の配合でブレンドしてあるオイルが販売されていますので、そちらをお求めいただくと、すぐに使用することができます。
使用する時間は
昼用アロマ 午前中に2時間以上
夜用アロマ 就寝1時間前から2時間以上
テレビで放送された詳しい内容が気になる方は、こちら↓の記事をお読みください。
なぜローズマリー・カンファーに気をつけなければいけないのか?
アロマオイル(精油)はどんな種類のものでも使い方次第では、体にいい影響を及ぼすこともあれば、悪い影響を及ぼしてしまうこともあります。
注意事項や禁忌事項を守り、使用方法や使用する対象に気を付けなければならないのですが、特に認知症の予防・改善に役立つといわれている昼用アロマにブレンドされているローズマリー・カンファーには注意が必要です。
ローズマリーには3種類あり、そのなかでも浦上先生の研究で、記憶や判断力に関して最も効果が得られたのはローズマリー・カンファーでした。
ただ、ローズマリーカンファーの精油にはケトン類という成分が含まれており、このケトン類という成分には神経毒性や堕胎作用があります。
もちろん心身にいい影響をもたらす作用もいろいろとあるのですが、アロマテラピーの分野では使用を慎重にしています。
浦上先生は著書の中で、『医療の分野では神経毒性があるからこそ、神経刺激に効果がある』また『用量を間違えなければ薬になる』と言われていますが、正しく使うことが重要です。
アロマテラピーの分野では、神経系統の弱い方やてんかんを持っている方、妊娠中、授乳中の方、乳幼児への使用は禁忌となっています。
また、血圧上昇作用がありますので、高血圧の方も使用を避けた方がいいのですが、浦上先生の著書には、『高血圧の方は使用前にかかりつけ医の先生に相談することと、毎日血圧測定を行い、変化を見ながら使用するように』と記してありますので、これはもう、ドクターが行う治療の域ですよね。
話題になっているから使ってみようかなと、興味本位で使われる方も多いのではないかと思いますが、精油に関して正しい知識をもつことが大切です。
そして、それぞれの精油のもつ禁忌事項や注意事項を守り、自己責任のもとで安全に使用できるようになることが必要です。
自分(または家族)は使ってもいいものかどうか、不安な方はかかりつけ医の先生に必ず相談するようにしましょう。
ちなみに夜用のブレンドオイルには、特別な禁忌事項はないのですが、どんな精油でも正しい使い方をしなければ体に負担になることもありますので、使用上の注意点をしっかりと守ってください。
浦上先生の著書には、アロマオイルの使い方や注意点などが記されているとともに、認知症の研究からアロマテラピーにたどり着くまでの道のりや、認知症という病気について、また精油の効能や医療分野で役立つアロマテラピーなどについて記されています。
ローズマリーの成分
それでは、ローズマリーについて詳しく見ていきたいと思います。
ローズマリー
学名:Rosmarinus officinalis
科名:シソ科
抽出部位:花、茎、葉
抽出方法:水蒸気蒸留法
ローズマリーは同じ植物なのにも関わらず、成分の違った精油が取れるんです。
不思議ですね。
ローズマリーの精油には3種類ありますので、一つずつ特徴をみていきましょう。
精油は植物の育つ環境や刈り取り時期などによっても多少成分が変わってきます。
毎回同じ割合の成分というわけではないので、ここでは大まかな成分の割合を書いていきます。
ローズマリー・カンファ―
主な成分
モノテルペン炭化水素類 約30~45%
酸化物類 約15~30%
ケトン類 約15~25%
セスキテルペン炭化水素類
モノテルペンアルコール類
特徴や効能
香りを嗅ぐと鼻の奥や脳にツンとする刺激を感じる。
神経を刺激する作用がある。
筋肉弛緩を目的に、肩こりや筋肉痛などに役立つ。
胆汁の分泌や排出を促す作用や脂肪溶解、静脈のうっ血を除去する作用があるため、ダイエットにも使える精油。
筋肉弛緩作用
神経刺激作用
強壮作用
脂肪溶解作用
リラックス作用
胆汁分泌促進作用
胆汁排出促進作用
静脈うっ血除去作用 などがある。
ケトン類に神経毒性や堕胎作用があるため、妊娠中、授乳中の方、てんかん患者、乳幼児は使用しない。
ローズマリー・シネオール
主な成分
酸化物類 約35~55%
モノテルペン炭化水素類 約15~25%
ケトン類 約5~15%
セスキテルペン炭化水素類
モノテルペンアルコール類
特徴や効能
感染に強いため、風邪やインフルエンザの予防、また呼吸器系の症状の緩和にも使用される。
シネオールのスーッとする香りは、嗅ぐと頭がすっきりし、感情を落ち着かせたり集中力を高めることにも役立つ。
抗感染作用
抗ウィルス・抗菌・抗真菌作用
抗カタル作用
去痰作用
粘液溶解作用
免疫調整作用 などがある。
特になし。
※シネオールにもケトン類が含まれているが、少量であるため大きな影響はないとされている。
ローズマリー・ベルべノン
主な成分
モノテルペン炭化水素類 約30~50%
ケトン類 約15~30%
エステル類 約5~15%
モノテルペンアルコール類
酸化物類
特徴や効能
ミントのようなスーッとする香り。
肝臓の機能を整える作用がある。
傷跡を修復したり、皮膚の組織を再生したりする作用があるため、スキンケアにも適している。
また、神経やホルモンバランスを整える作用があるため、自律神経の調整にも役立つ。
肝臓刺激作用
肝臓解毒作用
肝臓排液促進作用
肝臓再生作用
瘢痕形成作用
皮膚組織再生作用
神経・内分泌線バランス維持作用
抗うつ作用
抗感染作用
抗カタル作用 などがある。
ケトン類に神経毒性や堕胎作用があるため、妊娠中、授乳中の方、てんかん患者、乳幼児は使用しない。
以上がそれぞれの精油の特徴ですが、嗅覚から得られる作用と、皮膚塗布等から得られる作用とでは効能の強さや作用の仕方に違いがあります。
皮膚塗布をする場合には、ホホバオイルなどの植物油で1~2%に希釈をして使用します。
今回このページでご紹介している認知症アロマのブレンドオイルは、100%オーガニックのエッセンシャルオイルですが、芳香療法を目的として販売されているものですので、トリートメントオイルには使用しないようにしましょう。
アロマストーンやペンダント、ディフューザーなどを使用し、芳香浴を楽しんでください。
使える方に制限のあるケトン類を含んだ精油ですが、禁忌に該当しない方にとっては使用することで、テレビでも紹介されていたような明らかな変化が期待できるかもしれません。※心身の変化には個人差があります。
ローズマリー・カンファーの代用として使える精油とは?
健康上、ローズマリー・カンファ―の精油が使えない方は、代替として集中力が高まる作用や、元気が出るような作用のある精油を使用されることが多いです。
ローズマリー・カンファーを使用したときと全く同じ効能が期待できるわけではありませんが、香りを嗅ぐという行為だけでも嗅覚神経や海馬が刺激され、また精油の特徴によっては集中力が高まる等の期待がもてます。
アロマテラピーに詳しい方であれば、ローズマリー・シネオールをレモンとブレンドして使用されている方が多いと聞きます。
アロマショップでは、一時期ローズマリー・シネオールが品薄状態になったというほどです。
ローズマリー・シネオールの香りは、カンファ―ほどの刺激はなく、スーッとするフレッシュな香りで、頭がスッキリし集中力を高めてくれます。
ローズマリー・シネオールにもケトン類は含まれていますが、割合が少ないため使用の方法や量を守れば、特に禁忌事項は定められていません。
その他、ローズマリー・カンファ―の代わりに使えそうな精油
グレープフルーツ(精神高揚作用・精神強化作用・血液流動促進作用)
ユーカリ・ラディアタ(活力増強作用・免疫刺激作用・神経バランス回復作用)
ユーカリ・グロブルス(神経強壮作用・集中力を高める作用)
バジル(精神高揚作用・交感神経調整作用・自立神経調整作用)
ティートゥリー(無力症の回復作用・神経強壮作用・免疫調整作用)
芳香浴では直接精油に触れることはないとは思いますが、トリートメントオイルにブレンドして皮膚塗布などを行った場合は、塗布した肌を4~5時間は紫外線に当てないようにしてください。
アロマオイル(精油)を安全に使うためには
アロマオイル(精油)を購入するときの注意点
化学合成で作られたものではなく、天然の植物から抽出されたものを選ぶ
※化学合成で作られた合成香料により、体調を崩すという被害(香害)が発生しています。
アロマオイル(精油)を使用するときの注意点
勢いよく嗅がない
精油のなかには種類にもよりますが、神経を刺激する作用のあるものもあり、勢いよく嗅ぐと痛み神経にまで作用が及び、鼻の奥や頭が痛くなることがあります。(昼用アロマで使用されているローズマリーカンファ―には神経を刺激する作用があります。)
香りを嗅ぐときには瓶を鼻に近づけすぎず、少しずつゆっくりと嗅いでください。
また、アロマストーンやアロマペンダント、アロマディフューザーなどを使用し、精油の用量を守って使用してください。
精油を直接手で触らない
精油にはアロマトリートメントとしての使用方法もありますが、トリートメントオイルはホホバオイルなどの植物油で精油を1%~2%に希釈して作ったものを使用します。
精油原液はとても高濃度のため、皮膚に付着すると赤みやかゆみが出たりシミになったりと、皮膚トラブルを招く危険性があります。
直接手で触れないように注意しましょう。
直接触れてしまった場合は、拭き取ったり洗い流したりして精油を除去しましょう。
※アロマテラピーは医療行為ではありません。また、全ての方に効果を補償するものではありません。自己責任のもとで安全に行ってください。
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