何日も何日も同じ服を着ている。
着替えてもらいたいのになかなか着替えてもらえない。
そんな認知症の方にどのようなアプローチをすれば着替えてくださるのでしょうか?
着替えを嫌がる人への接し方
まず、みなさんはどんな時に着替えをしますか?
朝起きたとき
お風呂に入ったとき
出かけるとき
服がぬれたり汚れたりしたとき などですよね。
一日中一人で家にいる人は着替えずに朝起きたときのまんまなんてことも、あったりなかったり。。。?
着替える理由がないから着替えない。
もしもこれが着替えない理由だとすれば、着替える理由を作ってみてはいかがでしょうか?
認知症の人の気持ちを想像してみると
服も汚れていないし、何日も同じ服を着ているなんて思ってもみない。
朝着替えたばかりなのに、洗濯するなんてもったいない。
着心地がいいし、もう一日この服を着たい。
そんな気持ちで、着替えない毎日が心地良いと思っているかもしれません。
着替える理由とはなんでしょうか?
寝巻から日常着に・・・これは私たちが毎日していることです。
でも、日常着から日常着に着替えることもありますよね?
日常着(普段着)から日常着(外出着)に着替える。
『外に出かける』
着替えるためのきっかけとして、これが一番いい理由になるのではないかなと思います。
買い物に出かける、お芝居を観に出かける、大事な人に会いに行くなんていう時には、いい服を着て髪の毛をセットして・・・とオシャレをしたくなりますよね?
人に見られる環境、人と接する環境を作ることで、人目を意識する=自分の身なりを整えるにつながっていくのではないでしょうか。
生活にハリもなく、何の変化もない中で「さぁ、着替えましょう~!」と着替えだけを強要していても解決はしにくいです。
着替えだけに着目せずに、その人の生活全体を見る必要があると思います。
やってはいけない対応
着替えてほしいからといって、無理やり着替えさせない。
これは基本です。相手の嫌がることを無理やりやらない。
「さぁ、お風呂に入りましょう~!」と強引に脱がせることは避けましょう。
追いはぎのようなことは絶対にしてはダメです。
本人が着替えたいのに着替えられない場合にお手伝いをする
これは支援になりますが、
本人が着替えたくないのに無理やり服を脱がせて着替えさせる
これは暴力に値します。
「着替えることが正しい。」
「衛生面を考えると着替えさせなければならない。」
正義感が強い人ほど、『着替えること』に一生懸命になってしまいます。
そのときの相手の気持ちは一体どこにあるのでしょう?
着替えることに一生懸命で、相手の気持ちを無視してしまっていることに気づけないことすらあります。
自分は正しいことをしていると思い違いをしていることがあります。
それはある意味では正しいことなのかもしれませんが、着替えを強要されているご本人からすると、正しくないことです。
嫌なことをされれば、興奮するのは当然だし、かみついたり引っかいたりして抵抗します。
それを介護者は困った行動だと言い、その人に接するのがだんだん嫌になってしまいます。
本当に暴力(精神的な暴力)をふるっているのは介護者の方かもしれないのに・・・。
嫌な思いをすると、ますます着替えるのが嫌になってしまいます。
いやいや着替えるのではなく、着替えたくなるような状況や関係性を作っていけるといいですね。
なぜ着替えるのが嫌なのか?
日常着に着替えてほしいのに、パジャマのままでいる。
周りの人はそんな人を困った人だというでしょう。
でも本人からすると、着替える理由がないのです。
パジャマでいる方が楽なのかもしれません。
着替えが面倒なのかもしれません。
洋服を洗濯されることが嫌なのかもしれません。
いったい誰のために、何のために着替えるのか??
認知症の人の着替えにはどのような意味があるのでしょうか?
衛生的なもの?
着替えをすることで生活にメリハリをつける?
逆です。生活にメリハリがないから、着替えないのです。
着替えだけをしていたって、生活にメリハリはできません。
生活にハリがあるから着替えるのです。
人に会う予定がある
出かける場所がある
お友達に会っておしゃべりしたり、お買い物に出かけたり・・・
人とのかかわりがあり、社会の中で生きていくということが生活のハリなのではないかと思います。
一人ぼっちで一日中家の中にいれば、髪型がどうだろうと、寝巻でいようと気にならなくなります。
また、着替えたくない別の理由を考えてみることも大切です。
介護施設などで共同生活をしている人の中には、単に着替えるのが面倒くさいというだけではなく
人前で脱ぐのが恥ずかしいと思っている人
衣類が汚れているのを人に知られるのが恥ずかしいと思っている人
脱いだ服を人に盗られるかもしれないと思っている人
洗濯をしたら他の人の服と混ざって自分の元に戻ってこないと思っている人 などがいます。
その人にとっての着替えたくない理由はなんなのかを調査し、不安を取り除く配慮が必要です。
ただ「あの人は着替えを嫌がる人」というレッテルを張るのではなく、なぜ着替えをしようとしないのかを考え、その人に歩み寄っていくことが大切だと思います。