認知症になると人との関係性が崩れていくのはなぜ?
認知症が深まってくると、人との関係性が崩れてくることが多いです。
認知症の症状により、忘れることが多くなってくると、例えば家の中で水を出したまま忘れていたり、電気を消し忘れていたり、同じ食材ばかり買い込んでしまったりすることがあり、家族から注意をされます。
初めは注意だったのが、言っても直らない状況に家族もだんだんストレスを感じて腹を立てるようになります。
怒られるようになってくると、本人もまたストレスが溜まってきます。
さらに家の外でも、知人に同じ話を何度もするようになったり、事実とは違う話(お嫁さんが自分のお金を勝手に使っているなど)を言いふらして回ったりして、信用を失ってしまうこともあります。
でもこういったことがあると、周りにいる人たちも戸惑いますよね。
「忘れていたから気を付けてね。」とか、「そんなこと言ったらだめだよ。」とか、注意をしても本人の行動や言動が改善するわけではありません。
むしろどんどんひどくなり、周りの人たちは「なんでそんなことをするのか。」と戸惑いやイライラが募っていきます。
今まで親しくしていた人たちが、認知症の症状をきっかけに疎遠になってしまうことはとても多いのです。
認知症を受け入れることが本人の味方になる第一歩
介護職員が認知症介護としてご本人に出会う時というのは、すでに認知症になられてからがほとんどです。
だから介護職員は、今のその方のことをすんなり受け入れることができるのですが、以前からよく知っているご家族や親しい地域の方々は、ご本人の性格が少し変わってしまったことや、以前はできていたことができなくなってきているということが信じられなかったり、認知症であるということを受け入れられないということがあります。
間違ったことは注意すれば直ると思い、注意をし続けてしまいます。
でも認知症の方にとって、注意をしたり怒ったりするのは逆効果なので、行動を正そうとするよりもフォローをしていくという考えに切り替えた方がいいと思います。
認知症の方にとって、頼れる人がいるというのは大きな心の支えになります。
世間の常識にあてはめて考えると、認知症の人は間違ったことをしてしまうし、周りの人が困るような行動をしてしまいます。
そしてひどく注意されたり責められたり、だんだん人から優しくしてもらえなくなってしまいます。
本人としては間違ったことをしているとは思っていないのに、どうして周りの人が不機嫌になるのかがわかりません。
どうして怒られなければならないのかがわかりません。
注意され怒られ続けていると、自分なんていないほうがいいのではないかと考えてしまいます。
そういった思いが、より一層認知症を深めることになってしまい、BPSDにもつながっていきます。
どんどん悪循環になってしまうんですね。
悲しみの表現方法がわからなくて、いろいろな行動に出てしまうのですが、それは周りの人からは突飛な行動をしていると見られてしまいます。
心細い思いをしている時、人は誰かに頼りたいし自分の存在を認めてもらいたいものです。
自分のことをわかってくれる人がいるだけで気持ちが安定します。
周りにいる人たちは人は、ご本人にとってのよき理解者になれたらいいなと思います。
介護職員の役割
仕事として介護をしている人には、ご本人を支援する役割もありますが、ご家族を支援する役割もあります。
ご本人やご本人を取り巻く人たち(ご家族や友人、地域の方々)との仲を取り持つ役割もあります。
一度関係性が崩れてしまっても、修復することは可能です。
例えばご家族との距離が近すぎてストレスを感じる場合は、少し距離を置くことで、お互いの存在の大切さに気付けることもあるかもしれませんし、介護職員が間に入ることで、お互いのストレスの緩和になるかもしれません。
地域の集まりに介護者も同伴して参加してフォローすることで、以前のように楽しく過ごすことができるかもしれません。
疎遠になってしまった人と再び会うこともできるかもしれません。
介護職員が間に入って仲介することで、今までの人間関係を大切にしたり継続していくこと、また社会への参加が可能になります。
介護職員には人と人、また人と社会とをつなぐという役割があります。
孤独感を感じないような仲間作り
孤独感を解消するためには仲間が必要です。
ご家族の存在や支えは何者にも代えがたい大きなものですが、時には他人が役に立てることもあります。
介護現場では、職員も心の支えにはなりますが、同年代の同じ悩みを抱える人同士で関係性を作っていくと、お互いに励まし合ったり、この人ががんばっているんだから自分も頑張ろうと思えたりするようです。
認知症の人たちが集まると、みんな「自分が一番しっかりしている」と思っています。
実際はみんな似たもの同士なのですが・・・。
他人の行動はとてもよく見えるようです。
他人の世話をやいたり心配したり、他人を見て自分の励みにしたりします。
そして、なぜか認知症の方同士の会話は成り立つことが多く、実際に耳をひそめて聞いてみても何のお話をされているのかはわからないのですが、当人同士はずっとおしゃべりをしていたりします。
第3者が安易に間には入れないような、当人同士の絆や安心感のようなものがあり、お互いの存在を必要としている感じがあります。
『一人じゃない』という仲間づくり。
とても大切だと思います。