自分のことを忘れてしまう相手と人間関係は作れるのか?
認知症が深まっていくと、状況や人物の判断ができなくなっていくことがあります。
以前に会ったことのある相手でも、2回目、3回目に会った時に「初めまして。」と言われることが少なくありません。
自分のことを忘れてしまう相手と人間関係を作ることなんてできるのでしょうか??
・・・これが、できるんです!
初めの何回かは、「初めまして。」と言われるかもしれません。
でも、何度も何度も顔を合わせて接していくうちに、顔を覚えてくださいます。
『どこの誰だかはわからないけど、この人見たことある。』
『いつも親切にしてくれる人だ。』
『いつもの優しいお姉さん(お兄さん)。』
こんな風にして、なんとなくでも自分の印象を覚えてくださいます。
そしてそのうち、「あ、いつものこの人!いらっしゃ~い。」になるわけです。
認知症の人は、どんなことがあったのか(出来事)は忘れてしまいます。
でも感情はいつまでも残っています。
一緒に過ごした時間が楽しければ楽しいほど、
『この人に会うと、なぜかわからないけど楽しい気分になる』
『この人と一緒にいると、なぜか落ち着く』
そう思ってくださいます。
どうせ忘れるからと、ひどいことを相手に言ったりしたりしていては、信頼関係なんて築けません。
忘れてはいないんです!
嫌なことを言われた(された)ことを、感情として覚えています。
だから普通の人間関係づくりと同じ。
相手に優しく誠実に接すれば、早く仲良しになれます。
認知症の人との人間関係作りの難点
あなたは普段友達を作るとき、どんなことをしますか?
気が付いたらもう友達だった、自然と仲良くなっていた、ということが多いのではないでしょうか?
友達になるために、特別に何かをするということは少ないのかもしれません。
なぜなら友達とは、普通は気の合う人同士が自然になるものだから。
自然に・・・。
さてここで、残念なことをお伝えしなければなりません。
残念ながら認知症の人と、自然に信頼関係を築いていくのは少し難しい(かも)です。
その理由をご説明いたします。
認知症の主な症状は物忘れです。
そして、状況の判断ができなくなっていくという特徴があります。
大切なことを忘れてしまったり、どうすればいいのかがわからなくて戸惑う姿を目の当たりにするでしょう。
その都度何度も丁寧に説明をしたり、同じ話を聴いてあげたり・・・。
忍耐力が必要になってきます。
『間違ったこと』と思えるようなことでも「いいよ~。」と大きな心で受け止めてあげる。
相手を理解する気持ちが大切になります。
時には意見が食い違ったり、一方的に理不尽なことを言われたり、されたり・・・
お付き合いしていく上ではそんなこともあります。
もともと関係の深かった人が認知症になられた場合、その人のことを良く知っているので、どんなときでも味方になってあげられたり理解を示してあげることができます。
でも、そうでない場合は、相手のことを誤解してしまうケースが多いのです。
何度も説明しているのにすぐに忘れてしまう。
説明しても理解してもらえない。
親切にしているのに、逆に責められてしまうこともある。
残念ながら、付き合っていくと疲れてしまう。
私はこの人とは合わないなぁ・・・と思ってしまう。
病気のことを理解していなければ、普通はそういった気の合わない人とは疎遠になっていきますよね?
実は認知症の方は、周りの人との関係性が崩れてしまうことがとても多いのです。
周りにいる人は、ずっとお付き合いしていこうと思うのであれば、少なからず忍耐力が必要になってきます。
相手が何を伝えようとしているのか、言葉だけではなく表情や行動を見て推測し、相手のことをわかろうとする姿勢が必要になってきます。
悲しいことや嬉しいことを共感できる、感性が必要になってきます。
だから信頼関係作りって難しい。
本当はものすごく難しいことなんです。
介護の教科書に、『信頼関係を築く』とさらっと書いてありますが、これを実際に実践している人は案外少ないのかもしれないと思います。
相手から信じてもらえて、求めてもらえる。
そして自分も相手のありのままを受け入れている。
そんな関係が作れるといいですよね。
認知症の人との人間関係の作り方
人間関係とは築いていくものだと思います。
性格が合う合わないももちろんあるとは思いますが、それだけでくっついたり離れたりするのではなく、お互いに歩み寄りながら築いていくものだと思います。
ただ、相手が認知症の方であれば、こちらからの歩み寄りをより多くしなければなりません。
より広い心で受け止めなければなりません。
さて、気になるところはどうやって信頼関係を作るのか!ですよね?
まずは相手のことを知ることから始めましょう!
認知症のことを知ることももちろん大切ですが、認知症の症状を見るよりも『人を見る』ことが大切です。
性格や、特技や趣味、今までどんな人生を歩んでこられたのか、大切に想っている人やモノ、何をされたら嬉しくて、何をされたら嫌なのか、そんなことを知れば知るほど、相手との距離はどんどん近くなると思います。
それらを知ったうえで、よき理解者、よき友人になれると良いですね。