高齢者の肌は若い方の肌とは様々な点で違いがあります。
介護の仕事でも高齢者の肌に触れる機会は多いと思いますが、高齢者の肌の特徴を知り、触れるときの注意点などを抑えておくことが大切です。
高齢者の皮膚の特徴
・乾燥していてカサカサしている
高齢者の皮膚は乾燥しがちです。
若い人は皮脂が分泌され、皮膚の表面がコーティングされているのに比べて、高齢者は皮脂や水分量が少ないので、表面がカサカサしています。
乾燥が強い人は、皮がめくれて皮膚の表面に白い粉がふいたようになることもあります。
・表皮がうすく、傷つきやすい
若い人の皮膚は弾力があるのに比べて、高齢者の皮膚は表皮がうすく弾力がありません。
表皮を指でつまむと伸びるほど柔らかいです。
高齢になると、しわがよるので滑りも悪くなり、ひっかかりやすくなります。
表皮がうすい上にひっかかりやすいとなると、肌はとても傷つきやすくなってしまします。
少し当たっただけでも内出血したり、強くこすると、皮がズルっと剥けて出血してしまうこともあるので、注意が必要です。
・刺激に弱い(シミができやすい、菌に感染しやすい)
皮膚が乾燥していると、バリア機能が低下して、皮膚トラブルが起こりやすくなります。
バリア機能は、外部の刺激(紫外線や細菌など)から肌を守る大切な役割をもっているのですが、高齢者の肌は乾燥していてバリア機能が低下しているので、シミができやすかったり、真菌症になりやすくなったりします。
高齢者の皮膚トラブルが起こりやすい時はどんな時?かかりやすい皮膚疾患とは??
肌の乾燥によるかゆみ
肌が乾燥しているということは、皮膚の表面を覆う水分が蒸発しているという状態で、皮膚の皮がむけたり、亀裂やうろこのように見えることもあります。
肌が乾燥していると、なぜかゆくなる?かゆみのメカニズムとは?
肌が乾燥すると、肌を守るバリア機能が低下し、外部からの刺激に弱くなったり、菌に感染しやすくなります。
バリア機能が低下した状態で、外部からの刺激(ほこりや花粉、衣類の摩擦など)を受けると、ストレスとなる刺激から身を守ろうとして、ヒスタミンという物質が分泌されます。
このヒスタミンが知覚神経に伝わることによって、脳が「かゆい」と判断してしまうんですね。
肌が乾燥している状態では、少しの刺激でも反応しやすくなってしまいます。
かゆみを感じて皮膚をかくと、さらにヒスタミンが分泌されるので、どんどん「かゆみ」が増していき、悪循環となります。
そして、かくことによって、皮膚が傷つき、その傷口が汚れていたりすると、そこから細菌が感染して赤く腫れたり膿が出たりして化膿し、またそれが広がって重症化することもあります。
乾燥が原因で起こる高齢者の皮膚のかゆみは、「老人性乾皮症」や「皮脂欠乏性湿疹」などと呼ばれます。
おむつの使用によるかぶれ
尿や便が皮膚に当たったり、蒸れたりすることにより肌がかぶれます。
こまめにおむつ(パッド)を交換したり、陰部洗浄やウェットタオルでの清拭により、肌を清潔に保つことでかぶれを防ぐこともできますが、肌が弱い方は皮膚保護のクリームを合わせて使用すると効果的です。
寝たきりによる褥瘡
寝たきりや長時間同じ姿勢でいることで、皮膚が圧迫されると褥瘡ができます。
元気な方であれば自分で寝返りをうったり、体を動かして体重移動ができるのですが、体力がなくて自分で動けない方、栄養状態が悪かったり皮膚が弱っている方の場合は、褥瘡になりやすいといえます。
褥瘡を予防するためには、一か所を長時間圧迫しないように体位交換をしたり、栄養状態の改善が必要です。
細菌やカビによる感染症
カビによる真菌症で、高齢者に多いのは水虫です。
水虫は高齢になるにつれ罹患率が高く、足の指股から広がり爪にまで感染すると、非常に治りにくいと言われています。
かかとや足の裏にも感染し、部位によって症状が様々です。
カビによる感染症は足だけでなく、体のどこの部位でも罹ります。
一見治ったと思っても治りきっていなかったり、再発を繰り替えすことも多いので、時間をかけてしっかりと治療していくことが大切です。
その他シミやいぼなど
高齢になるとシミやいぼが増え、美容面で気になる方も多いと思います。
大抵は良性の場合が多いのですが、中には悪性の腫瘍である場合もあるので、不自然な形のものや、急に大きくなったりジュクジュクしたようなものは病院で診てもらいましょう。
治療や処置が必要な場合は専門家に任せましょう
最近ではインターネットなどでも症状を調べることができ、自己判断で市販薬を買って治そうという人も多くなっているかもしれませんが、見た目だけでは原因がわからない場合もあります。
予防段階であれば市販のローションやクリームを使ってもいいと思いますが、なんらかの症状が出て治療が必要な場合は皮膚科に受診をしましょう。
特にカビによる感染は検査をしてみなければ感染しているかどうかがわかりません。
患部の組織を削って顕微鏡で見て確認されます。
カビに感染している場合は、抗真菌薬を使用するのですが、感染していない場合は、抗真菌薬を使うことで返って症状が悪くなることもあります。
間違った薬を塗り続けて、悪化してしまうこともあるので、受診をして適切な薬を処方してもらいましょう。
高齢者のスキンケア
皮膚トラブルを防ぐためには、日ごろのスキンケアが大切です。
スキンケアとは、肌を清潔にし、保湿して保護することを言います。
高齢者のほとんどの方はお肌が乾燥しています。
ですが、実際にスキンケアを行っている方は少なく、かゆみなどの肌トラブルが起きてから初めて薬や保湿剤などを塗る人が多いのが現状といえます。
普段から肌を清潔にして保湿ケアを行っていると、皮膚トラブルは起きにくくなります。
体の洗い方
肌が弱い方は、敏感肌用の石鹸(ボディーソープ)を使用しましょう。
石鹸やボディーソープを直接肌につけるのではなく、しっかりと泡立てて、その泡で優しくなでるように洗います。
介助をする場合は、タオルよりもミトンなどを使うと洗いやすいです。
ゴシゴシこすらないのがポイントですが、高齢者はゴシゴシとこする洗い方をされる方が多く、介助が必要になった方でも、しっかりとこすってほしいと要望される方も少なくありません。
そういった方には、背中などは少し力を入れてこすって差し上げて、皮膚が薄くなっている腕などはなでるように優しくかるく洗いましょう。
また、特に汚れが溜まりやすいところ(足首やかかとのあたりや、指の間、足の付け根や脇の下、女性であれば胸の下)は、垢が出やすい場所でもありますが、ここもこすりすぎには注意です。
念入りに洗うのはいいのですが、丁寧に優しく洗うようにしましょう。
保湿の仕方
入浴後は、しっかりと水分を拭き取った後、すぐに保湿を行います。
入浴をした直後は水分を含んでいるので、肌が潤っているように感じますが、時間が経つにつれて水分がどんどん蒸発し、入浴前よりも乾燥肌になってしまいます。
保湿をするタイミングは、入浴後早ければ早いほどいいです。
保湿剤は、さらさらしているローションやクリームタイプ、ワセリンなどがあり、使用感によって好みのものを使えばいいと思いますが、乾燥が強い場合は、ワセリン配合のものがおすすめです。
まとめ
皮膚トラブルを事前に防ぐためには、清潔・保湿・保護のスキンケアを習慣づけましょう。
症状が出てから処置を考えるよりも、皮膚疾患にかからないように予防することが大切です。
低栄養を改善したり免疫低下を防いだりして、症状が改善しやすい(悪化しない)体づくりをしましょう。
長時間同じ姿勢にならないように体を動かしたり、場合によっては介護者が体位交換をしたりして、褥瘡にならないように予防しましょう。