介護の仕事を始めたきっかけというのは人それぞれいろんな理由があると思います。
介護の仕事に希望を抱いてやっている人
ただ何となく介護の仕事を始めた人
その中でも、共通している悩みは
「もっとこうしてあげたいけどできない。」
「時間も人も力もないからしょうがない。」
「本当はもっとゆっくり接したいのに、いつも急いでいる。」
「自分のやりたい介護とは違って、どこか無理をしている。」
こんなはずじゃなかったと悩む介護職員
時間を見て自分(職員)の都合で動いたり、手早くするためにケアではなく作業的になってしまったり・・・。
自分だって好きでそんなふうにしているわけではない。
もっと時間に余裕があれば・・・もっと人員に余裕があれば・・・もっと自分の気持ちに余裕があれば・・・
そんな気持ちを抱いている人は多いのではないでしょうか?
このブログで紹介しているBPSD(周辺症状)に対する接し方(事例と解説参照)は、ご利用者との人間関係作りから始まり、本人の気持ちを考え尊重し、その気持ちに添った行動を介護者がします。
それには丁寧さが必須で、時間も労力もかかります。
ご本人が納得するまで、時間がかかってもとことん付き合います。
それは、説得して諦めさせるのではなく、納得してもらうことを目的としているからです。
「そうしてあげたいし、そうすることがいいというのもわかっているけど、実際にはできない。そんな時間も人も気持ちの余裕もない。」
それが実際の介護に携わっている人の現実なのではないかと思います。
働く場によっては、時間内に決められたことをやり遂げなければないならないということもあるでしょうし、それを仕事のスキルとして求められてしまいます。
利用者と話をする時間もないくらいにバタバタと走り回って仕事をしている人。
一日を通して話したことといったら、会話ではなく一言二言の介助の声掛けだけという人。
いつの間にか本人(利用者)をどれだけ大切にするかというよりも、介護の量やスピードを求められるようになる。
より早く、よりたくさんの介助をこなした人が仕事ができる人だと評価されてしまう。
そしてそんな状況に、自分自身も勘違いをしてしまいます。
早く終えるために、本人のペースよりも介護者のペースで動き、多少の強引さがつきまとう。
自分がされたら嫌なことを人にはしてしまう。
自分のことと人のことは別問題だと考えてしまう。
どこかでしょうがないと開き直ってしまう。
自分がやっていることが、本当にご利用者のためになっているのかどうか、疑問を感じることも多々あります。
でもそれが介護現場の現状だと、諦めてしまう。
「こんなことはもう嫌だ。」
「こんなはずじゃなかった。」と介護から離れてしまう人も少なくありません。
でも・・・介護の現場が全てそうではありません。
悩みながらも、実践している介護者はたくさんいます。
きっと誰しも、「こんな介護は嫌だ!」と一度は経験したことがあると思います。
そしてそんな思いの強い人たちが、立ち上げた介護施設は理想に向かってがんばっています。
それでも、やはり理想と現実のギャップは、どんな状況にあっても付きまといます。
自分で介護施設を立ち上げた人でさえも、理想と現実のギャップに悩まされています。
今の自分にできることを見つける
どんな人でも、今働いている職場の現状をすぐに理想郷にすることはできません。
でもちょっとだけ、今自分の置かれている状況で、自分に何ができるかを考えてみることはできます。
「忙しくてできない」と突っぱねていたら、打開策はありません。
だからほんのちょっとしたことでいいと思うのです。
今の自分にできること。
いつもよりもちょっと優しく声をかけてみる。
いつもよりもちょっと丁寧に接してみる。
相手に興味をもって話しかけてみる。
相手のことを知ろうとしてみる。
本人のペースを考えてみる。
同じ時間で接する中でも、接し方の質を変えることはできるかもしれません。
自分の気持ちをちょっとだけ変えることはできるかもしれません。
接し方の質を変えれば、ご利用者との関係性が少し良くなっていくかもしれません。
ただの利用者と職員という関係から、仲のいい友達のような、大切に思える関係性に変わっていくかもしれません。
働く環境は何一つ変わっていなくても、自分の気持ちや接し方を少しだけ変えることはできます。
周りで行われていることや、日々起こっている出来事に気持ちが振り回されることもあるかもしれませんが、まずは、自分自身の気持ちを見つめ、整えることから始めてみてはいかがでしょうか。