その方にあった適切なケアをするためには、まずはその方のことを知ることが重要です。
その方のことを知る作業、これをアセスメントと言います。
アセスメントをしっかりと行っていないと、ご本人に合ったケアプランを立てることも難しくなります。
ケアプランを立てるときに、よく「どんなプランを立てたらいいのかがわからない・・・。」という声を聞きますが、これはアセスメントが不十分なために、ケアマネや介護者が何をどのように支援したらいいのかがわからなくなってしまう状況にあるといえます。
アセスメントと聞くと情報収集と考えがちで、情報を集めればそれでOK!と思いがちですが、アセスメントは情報収集と課題分析からなります。
情報を集めた後に課題を分析することがとても大切なんですね。
では、情報収集とはいったいどのような情報を集めればいいのでしょうか?
その方の過去・現在・未来を知る
過去=その方がこれまでどのような人生を歩んでこられたのか、どんな人たちに囲まれて、どんな仕事をして、どんな生活をしてこられたのか?
現在=今の状況(体や心、その方を取り巻く環境、人間関係、役割や仕事、やりたいことなど)
未来=明日への希望 今日よりも明日一歩前進するとしたら何を望むのか?今のどんな生活を今後も続けていきたいのか?
1ヵ月後どんなふうに生きていたいか?
特に認知症ケアの手掛かりは、人生史を知ることにあると言われています。
今現在の状況しか見ないというのは、どうしても病気に注目しがちになってしまいます。
病気になってからのその方だけでなく、もともとどのような生活をされていたのか、何を大切に想って生きてこられたのかを知ることがその人らしさを支えるカギになります。
また、未来に対しての想いや希望を共有することで、ご本人やご家族、そして支援者に連帯感が生まれます。
ちなみに情報収集の項目として、ケアマネが課題分析を行うために必要な情報は、23項目が定められています。
課題分析標準項目をご参照ください。
⇒課題分析標準項目
アセスメントの仕方
アセスメントの方法は単純で、ご本人やご家族からよく話を聞くこと。よく観察することです。
全ての項目を質問していたら、とても時間がかかってしまいますので、ご本人の様子を観てわかることであれば聞かずに(何か特別質問がある場合は別ですが)判断したり、改まった質問という形よりも、日常の会話の中で情報を得たりすることもあります。
特に重点的に聞かなければならないのは、ご本人・ご家族の想いや困っていること、望んでいることなどです。
これはあとあと、課題分析のときに、現状と要望とを照らし合わせて、課題を見つけ出すという作業で必要になってきます。
課題分析を行うための視点
課題分析というと、どこに問題があるのかを考えがちです。
ただこの問題というのは、本人にとっての問題ではなく、専門職や介護者にとっての問題であることが多々あります。
専門職が問題であると考えているだけということが多々あるのです。
もしもあなたがまだ幼い子供だったらと想像してみてください。
本が大好きで、「本をたくさん読む知的な大人になりたい!」と思っていたとしましょう(仮にです)
。でも、知識のある大人たちは、あなたの気持ちになんて全く耳を傾けず、「この子は引っ込み思案で心配だから、もっと活発になるように運動をさせよう」と勝手にやりたくもない剣道教室の申し込みをしたとしたらどうでしょうか?
剣道教室・・・
やってみて損はないかもしれません。
だけど、自分のやりたいこととは違う。私の気持ちはどこへ行ったんだろう??と違和感を感じるでしょう。
なりたい大人になるために応援してくれる人と、「こんな大人になりなさい!」と自分の価値観を押し付ける人とでは、どちらが信用できますか?心を開くことができますか?
知識のある人たち(専門家)の意見は、ある意味『正しい』です。
言うことを聞いていたら間違いないのかもしれません。
でも大切なのは、周りの人が勝手に決めるのではなく、本人がどう思っているのかを知った上で相談し合うことだと思うのです。
本人が介護者に対して「自分のことを応援してくれている」と感じられるのか、それとも「専門家の価値観を押し付けられている」と感じるのかでは、介護者に対しての信頼感も変わってきますし、自分自身(本人)の生活に対する気持ちや姿勢も変わってきます。
アセスメントで大切なのは、本人の想いを知ることです。
自分の言葉で伝えられなくなった人からは、言動や行動から想いを推測します。
『問題解決型』のプランと『目標達成型』のプラン
ケアプランを立てるときによく議論されるのが、『問題解決型』か『目標達成型』かということです。
問題解決型は問題となっていることを解決するためのプラン
目標達成型はやりたいことや希望を叶えるためのプランです。
立てたプランを実践するのに楽しいのは目標達成の方です。
でも目標を達成する過程で生じる問題は解決しなくてはなりません。
だからどちらも大切なんです。
本人は問題だと思っていなくても、周りの人が管理してあげなくてはならないことも現実にはあります。
両方の視点をもつことが重要です。
ご本人のことをどれだけ知ることができるのか、目標を明確にできるか、問題を明確にできるか、それは全てアセスメントにかかっています。