本人の希望と解決すべき課題が異なる場合の考え方

前回アセスメントの課題分析の方法は?という記事で、問題を解決すること(解決するべき問題)と、本人の希望とが異なっている場合はどのように考えればいいのか?ということについて少しふれましたので、今回はそのお話をしたいと思います。

目標達成と課題分析

ケアプランには目標達成型と問題解決型の二つの考え方があります。

【認知症介護】アセスメント(情報収集+課題分析)の仕方

2018年1月31日

おさらいすると、目標達成型というのは本人のやりたいことや希望を叶えるためのプランで、
問題解決型というのは本人が生活する上で問題となっていることを解決するためのプランです。
ケアプランを作る上ではどちらか一方の視点ではなく、両方の視点を持つことが大切です。

では、問題を解決すること(解決するべき問題)と、本人の希望とが異なっている場合はどのように考えればいいのでしょうか?
介護者からは問題だと思っていることでも、ご本人にとっては問題だとは思っていなくて、むしろありがた迷惑だと感じている場合です。

例えば、「食べるのが大好き、甘いものが大好き」という人がいます。
その人は実は糖尿病を患っていて、血糖値が高いことを病院の先生から指摘され、食事の管理が必要になりました。

本人の希望は「自分は甘いものが大好きで、死んでもいいから食べたいだけ食べたい!」と言っている。
解決すべき問題は、このまま食べたいだけ食べる生活を続けていくと、糖尿病が悪化して合併症を引き起こす危険性がある。

この場合、本人の希望と解決すべき問題が異なります。本人の希望を尊重した方がいいのか、本人の希望は無視してでも専門家としてやるべきこと(食事や運動で血糖管理)をした方がいいのか、悩むところだと思います。

 

私は介護職員がなんのために存在しているのかということについて、『本人の希望を最期まで全うできるようお手伝いするために存在している。』
『本人主体の生活が送れるようにサポートするのが介護職員含むサポーターの役割である』と思っています。

介護の仕事ってどんな仕事??

2017年10月1日

そのように考えると、今回のような場合は本人の気持ちを優先して、好きなものを食べたいだけ食べていただいた方がいいのでしょうか?
似たような例を以前にも記事にしたので、こちらの記事↓を先に見ていただければと思います。

【認知症介護】本人の気持ちと周りの人の気持ちの差

2017年12月5日

 

さて、こういった場合どのようにすればいいのかというと、とにかく本人と話し合いを行います。
どちらか一方の意見を押し通すのではなく、話し合ってお互いの妥協点を見つけます。
そうして話をしていると、見えてくることがあります。

本人の言葉の裏に隠された真実とは?

本人とじっくり話をして、まずは本人の言葉をそのまま書き取ります。
そして、その言葉はどのような想いから発せられたのか考え、また質問したりして深く探っていきます。

今一番の楽しみは食べること⇒裏を返せば他に生活の中に楽しみなことがない
甘いものは好き。でも実は他にも好きなことがある。孫が大好きで、孫の花嫁姿を見たいと思っている。⇒花嫁姿を見たいということは、それまで生きていたい。本当は死にたいとは思っていない。などなど。

ケアプランを立てる時に重要なのはアセスメントです。
本人の希望をとるか?問題を解決する方をとるか?
この二者択一しか思い浮かばない時、実はまだアセスメントが不十分である可能性が高いです。

本人の「死んでもいいから食べたいだけ食べさせてくれ。」という言葉。
熱のこもったこの言葉を大抵の人は信じます。
これが本人の本心だと受け取ります。

だけど、もっともっと掘り下げて、時間をかけて本人と話をしていくと、必ず見えてくるものがあります。
本心から死んでもいいと思っている人は、実は少ないのです。
その時の言葉だけをうのみにするのではなく、言葉の裏に隠された本心を突き止めましょう。
本当はどう思っているのか、気持ちを追及していくことが大切です。

また、ただの推測だけではなく、自分で考えたことは必ず本人に確認します。
自分はあなたの言葉からこのような想いを受け取ったけれど、それに間違いはないか。

こちらで協力できることやできないこと、ただの管理としてではなく、本人を大切に想っている人たちの声や自分(介護者)の気持ちなども伝え、食事に関してはお互い譲れるところまで話し合いを進めて決まりごとを作っていきます。
100か0かではなく、状況に応じてこの場合はこうしよう!など、食事の管理に例外を設けていきます。

我慢しかない生活ほどおもしろくないものはないと思いますし、大きなストレスを抱える方がよっぽど健康に悪いと思うので、例外(好きなものを食べていい日を作るなど)で、少し気持ちがらくに、前向きになります。
また、『生きよう』と自分自身が思えることが、食事療法を納得して行うことにもつながるので、そういった状況づくりも必要だと思います。

ケアプランには同意が必要

『合意』『同意』『非同意』という言葉があります。

『合意』は意見の合致。お互いに意見が合うということです。

『同意』は一方の意見に異議がない、賛成できるということです。

『非同意』は一方の意見に異議がある、賛成できないということです。

合意が一番気持ちよく物事を進めることができます。
でも、なかなかそれが難しい場合は同意を目指していきましょう。

ケアプランにはご本人、もしくは身元引受人の方の同意のサインが必要になります。

本人は非同意のまま、ご家族に同意のサインをもらって物事を進めている場合が少なくありません。
本人に同意をもらおうと思うと、話し合いをもつほか方法がないように感じます。
説得ではなく納得してもらうことが、生きる意欲にもつながってくると思います。

お互いに譲れない気持ちを持っているときは、話し合いを通して、ここまでなら譲れるという妥協点を見つけていければいいのではないでしょうか。
そうすれば、少なくともどちらか一方が我慢するという構図は避けられるのではないかなと思います。

次回は、上の例題をもとに実際にケアプランを立ててみたいと思います。
⇒【施設介護】血糖値のコントロールが必要な方のケアプラン



  
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